第8話 おっさん硬式空手に挑む②
硬式ルールでのサトシ君との組手。
サトシ君は小柄な分スピードは速い。フルコンなら体格差を活かして強引に前に出る戦法で戦うが、ポイント制の硬式空手ではダメージがなくても技ありになってしまうので意味がない。
先程のシュウタ君の時と同様、ガードを挙げて構え、距離を測る。
ある程度距離が詰まったところで、サトシ君が飛び込んでくる。
初弾の左を首を捻って躱したと思った瞬間、中段に突きが入る。
・・・速い。
開始線に戻って仕切り直す。今度は私から攻めてみる。少し遠めから左の突きを出しながら一気に飛び込む。続いて右の突きを出そうとした瞬間にサトシ君の姿が消える。
気づいたら私の右側に左のミドルが入っていた。おまけに右の上段突き。
バトル漫画でよくあるシーン。視界から速すぎて相手が消えるというやつだ。
(こりゃあ、無理だ・・・。)とは言ってもなにかしら対策をしないといけない。
開始線に戻って再び構える。前にある左手を中段に下ろし、開始と同時にバックステップでサトシ君と距離をとる。
小学生の時に私がとっていた戦法だ。その状態で左手を少し前に出しゆらゆらと揺らしながら様子を伺う。リーチ差があるので多少はやりにくだろう。
そこから大きく飛び込んで左の刻み突き。避けられるが後追いはせず、再度距離をとる。
今度は左手で一旦フェイクを入れて右のミドル。躱されて前蹴りが飛んでくる。多少は向こうもやりづらそうだが、どちらにしてもこちらの攻撃は当たらなさそうだ。
出来たらポイント1つくらいは取りたい。そこで奥の手を使うことに。
再度距離をとり、大きく飛び込んで左の突きを放つ。サトシ君は簡単に見切って、
バックステップ。
それを待っていた。
左の突きを出した瞬間そこから身体を回転させ右のバックハンドブロー。ちなみこれは伝統空手では反則だ。
昔K-1を見て、遊びで練習していた技をここで使うことになるとは。しかし、距離もタイミングもばっちり。右の拳に手ごたえ・・・・。
があるはずだった。しかし、私の拳は空を切り、気づけば上段に突きが入っていた。
そこで時間切れ。
「手も足も出ないとはこのことですね(笑)」
完全敗北に笑いしか出てこない。
「いやあ、やりにくかったですよ。フルコンの時と動きがまるで違いますよ。お父さんも何回かやってたら体が思い出しますよ。」
「そうだと良いですけね。でも最後のバックハンドまで躱されるとは思いませんでした。」
「雰囲気が変わったから何かあるなって思いました。まさかバックハンドとは思いませんでしたけど
。」
サトシ君は勿論、来年にはシュウタ君にも手も足も出ないかもな・・・。精進してうまくならければ・・・。なにせ数年後には息子も中学生。やはり親として息子には負けられない・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます