第6話 おっさん後輩ができる
ある日のこと、親子連れが体験にやってきた。父親と小学校高学年くらいの男の子。
お父さんが館長と話しているので、挨拶だけして準備を始めようとしたら、こちらに声がかかる。
「お父さん、こちら夏井さんです。今日は親子で体験されるそうなので、宜しくお願いしますね。ちなみにお父さんも入門を考えてるそうです。」
大人が増えるのはこちらも大歓迎だ。
改めて挨拶をする。
「宜しくお願いします。佐々木と申します。私も入って一か月なんです。宜しくお願いしますね。」
「宜しくお願いします。色々教えてください。」
というわけで基本練習。夏井さん親子は私の横で見様見真似で基本練習をこなしていく。
組手の時間になり、夏井さん達は見学に。
最初の相手はサトシ君。小柄だがスピードがある。
間合いの出入りが上手く、中々攻撃が当たらない。完全にヒット&アウェイの状況にされてしまう。
まともにやっても攻撃は当たらないので、覚悟を決める。身長で20㎝体重で30㎏近い体格差があるので、被弾覚悟で打ち合いに持ち込む。
ハイキックだけは警戒して、ガードを挙げて前にでる。サトシ君は下がりながらも打ち合いに応じる。
多少の攻撃はあたるものの、うまく芯を外されているのか、効いた感触はあまりない。
そうこうしているうちに時間終了。結構打ち合ったのでお互いにボディが真っ赤になっている。
「お父さん、さすがにパワーありますね。疲れました。」
「サトシ先輩、打ち合いに付き合ってくれたので何とか組手らしく
なりました。早すぎてあのスピードにはおっさんはついていけません。」
「疲れてますが大丈夫ですか?次はラスボスですよw」
次の相手はヒロキ君。言わずと知れた道場のエースだ。
ヒロキ君はバランス型だが、サトシ君よりも体格が良いので攻撃の重さが違う。
勿論手加減はしてくれているが、一発が重いので被弾覚悟で突っ込むのはさすがに怖い・・・。
結局インローで崩された所につきをガンガン喰らう羽目に。何とか最後に良い感じでローを当てるのが精いっぱいだった。
練習が終わり、夏井さんが話しかけてくる。ちょっと不安げな表情だ。
「お疲れ様です。入って一か月で黒帯の人とガンガンやるんですか?」
あ、館長は言ってないな・・・。
「私白帯ですが、一応経験者なんですよ。初心者で入った人はちゃんと順を追って教えると思いますよ。」
「良かった・・・。流石にそうですよね・・・。」
「大人が増えるとこちらも嬉しいです。入門お待ちしてますよ。」
そんなこんなで私にも無事に後輩ができることになった。
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