第5話 おっさん蹴りを練習する

入門して2週間が経った。


経験者ということで、初日から普通に組手に入っているのだが、フルコン自体は初心者なので、少し戸惑っている。


伝統派とフルコンタクト空手、競技としては結構別物だったりする。勝敗の基準が違うのだ。


相手の顔面やボディに攻撃を打ち込み、ポイントを取りあうのが伝統派。オーソドックスなルールは顔面パンチありローキック無しで、攻撃は寸止めつまり当たる寸前でとめる(多少は当たることもあるが)。


フルコン空手は顔面パンチなしローキックありで、直接当てて相手を倒すことが目的だ。判定の際に効いた・効いていないという点も材料になる。


当てる当てないの前者と当たること前提で打ち合う後者では間合いの取り方がまるで違うのだ。


私はリーチが長いので、伝統派の時は相手を近づけないように戦っていた。


フルコンでは離れて蹴りを打ちつつ近づいたらローキックとパンチを打ち合うという感じでやっているのだが、ここで1つ問題が…。


ミドルキックが効かないのだ。中学生とやる時はこちらも手加減しているのでわからなかったが、大学生とやっていてそこに気づいた。


そこで練習後にヒロキ君に相談してみる。

「多分、蹴り方が違うと思います。お父さん、伝統派だったからか、膝を挙げてから斜めに蹴り上げる形になってます。ポイントを取るために最短距離で足を出す癖があるんじゃないかと・・・。フルコンのミドルは腰を回しながら水平気味に蹴ったほうが良いですよ。ちょっと蹴ってみてください」


ということでミットを持ってもらい、蹴りを打ってみる。


まずは今まで通り。


「やっぱり、蹴り方が下からになってますね。その蹴り方だとブロックしやすいし、あまり効かないんですよ。最初から膝を抱え込むような感じでそこから腰を回してみてください。」


言われた通りにやってみる。

パーン!


確かに手ごたえが違う。


「良い感じですね。後は体の回転をしっかり足に伝えるようにしたら、その体だし、かなり強いミドルが蹴れますよ。」


後日の組手でも言われたことを意識してみると、中々良い感じだ。

こうやって上達すると、やはりうれしい。


ただ、喜んだのも束の間、蹴りの威力が増したことで新たな問題が生じてくるのだがそれはまた別の機会に・・・。










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