第3話 おっさん型を学ぶ

初日を無事に終え、2回目の練習日。


道場に入ると、

「お父さんちょっと良いですか?」

館長に呼ばれる。


(経験者なの黙ってたから、怒ってるかな?

流石に怒鳴ったりはしないだろうけど、イヤミの1つ位は言われるかも…)


警戒しながら館長のもとへ。


「お父さん、空手はどのくらいされてたんですか?」

「小学校のときに4年位です。」

「帯は?」

「一応茶帯です」


さらに質問は続く。今後の指導のためにどのくらいできるか知りたいのかな?


「流派は糸東流?」

「はい」

この前の動きだけで流派までわかるのか…。館長すげえな…。


「形はどこまでやりました?」

「ナイファンチしかしてません…。」


私がいた道場は、茶帯になるまで基礎練習と組手しかやらせてもらえなかったのだ。ちなみに目茶苦茶厳しかった。


「わかりました。実はですね、あれからお父さんのことを会長に報告したら、飛び級させたら?と言われまして…」

「はあ…」

ちなみに私の通う道場は3つの支部があり、それのトップが会長。館長のお父さんでもある。


「まあ、今うちに来てる大人の有段者(黒帯)でちゃんと来れてるのは4人なんですが、そのうち2人は大学生です。」

「ヒロキ先輩とサトシ先輩ですね」

「彼ら2人も就職したらこちらに残るとは限りませんし、仕事次第では空手を続けられないかもしれません」

「そうですよね、就職して2、3年は大変ですからね…」


「そこでお父さんにも段を取って頂きたいのです。2年で」

「はい?」


流派にもよるが、2年で段を取るというのはかなり無茶だ。部活などでほぼ毎日練習する高校生や大学生ならまだしも、物覚えの悪いがおっさんが週2の練習で黒帯になるのは中々の難題だ。


「まあやるからには、段を取れれば良いなとは思ってましたが、2年ですか?」

「茶帯持ってたなら大丈夫ですよ。うちは松濤館なんですが、初段の試験は組手の他に平安と慈恩、観空大までやってもらいます。頑張って覚えてくださいね!」


いきなりハードル上がってないか?

運動不足解消のつもりで始めた空手だが、ちょっと真剣に取り組まなければならなくなってしまった。



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