第370話 ツインテ巨乳妹のわがままデート

「レウキクロスに出発する前に!ミリアとデートしてきます!」


「はい、いいと思います」


「うふふ♪もう準備は整ってますよ♪」


「あんたが喜ぶ顔が目に浮かぶわね」


「はうぅ……」


 朝食のときに高らかに宣言すると、みんなから許しが出た。

 レウキクロスへの出発2日前のことだ。


 明日は休みにしてもらったから、ここぞとばかりに提案したのだが、もうすでにデートの準備はできていたらしい。


「あれ?でもさ、デート服用意できたってこと?ウチナシーレの商店街ってまだ品揃えが……あ、ディグルムの店か」


 ディグルムの店は現在建築中ではあるが、すぐそばの空き店舗を使って、仮オープンされていると聞いていた。嫁たちがそこで買い物したんだと思い当たる。


「そうね、あいつの店って品揃えがいいから、ほとんどそこで揃えたわ」


「へー、それは楽しみだ。どんな服なんだろ?」


 チラリ。

 ミリアの方を見る。


「はぅ…ぽかへい…」


 くいくい。


 ミリアを見ると、なぜか恥ずかしそうにしてぽかへいでガードされてしまった。

 クソうさぎがかかってこいと挑発してくる。


 あいつ……まじでそろそろもう一回わからせてやろうかな……


 いや、とにかくだ、デートの準備が整っているということなら、万事OKだ。


 明日が楽しみすぎる。今日は英気を養うために、大人しく1人で寝ようとするかな。



-翌朝-


「おはようございます!!」


「ピッ!?」

ガバっ!?


「あ、ごめんごめん」


 オレは枕元で寝ていたマスコットたちに頭を下げる。


 今日はミリアとのデートということでテンションが上がってしまったのだ。


「今日はぽかへいも来るんだよな?」


 こくこく。


「まぁいいんだけど、ミリアとイチャイチャしても邪魔するなよ?」


 ……


「返事は?」


 ……こくり。


「よし、」


「ピー……」


「ん?ピーちゃんもデートしたいの?」


「ピーピー!」


「そっかぁ、うーん、じゃあ今度一緒に町を回ろっか?2人っきりで」


「ピー♪」


 それで許してくれるらしい、かわいい毛玉様である。


「じゃあさっそくデートの準備だ!」

 オレはウキウキで身支度を始めるのだった。



 用意していた軽食を食べ、歯を磨いてからリビングに向かうと、そこにはすでにオレの天使が待っていた。


 ソフィアとステラもいて、得意げな顔をしている。


「わぁぁ……」


 オレはミリアのことを見つけて、感嘆の声をあげていた。


「ど、どうかな?…おにいちゃん…」


 ぽかへいを抱っこしながら、もじもじするミリアは、気合を入れてデートに備えてくれたことがわかる。なぜなら、めちゃくちゃ可愛い服だからだ。


「ちょっと待ってね…しっかり見てから感想言うから…」


「うゆ…」


 ミリアの服は、腰までがコルセットのようになっているスカートと首元がすけすけになっているトップスとの組み合わせだった。


 トップスは首元から胸の上くらいまでが黒の透け感のあるレース素材になっていて、首にはチョーカーみたいなものがついているので、少しパンクな雰囲気もあった。

 スケスケの下側はピンクのブラウスになっていて、ところどころに小さい黒のハートが付いている。長袖で、袖口や胸元には同じ素材でフリルがあしらってあった。


 スカートはコルセットが合体したようなもので色は黒ベースだ。コルセット特有の靴紐みたいなリボンが2本、左右についていた。デザインとしてついているので可愛らしい。それにハート型の金のボタンも6個並んでついていて、上品さを演出している。

 靴は黒のパンプスで、ピンクの短い靴下。

 頭のツインテのリボンは黒のレース生地でまとめられていた。


 ミリアらしいピンクが目立つ服だが、いつもと違って黒色の面積が多いので、だいぶ印象が変わる。小悪魔系というか地雷系のファッションで、新鮮さがあった。


 一言で言うと最高だ。でもちゃんと褒めないと!


「すごく……可愛いです……ごくり……なんていうか、いつもの可愛いミリアに黒って少し意外な感じがするけど、でもでも、それがちょっと活発な雰囲気も出してて、ミリアのピンクの髪をしゅっと引き締めてる。

 ちゃんと褒めてれるかな?つまりね、めっちゃ可愛くて……オレはメロメロってことなんだけど……」


「そ、そっか……あ…ありがと……」


「ライさんは褒めるのが上手ですよね♪」


「そこだけはこいつの特技かもね。まぁ!わたしプロデュースなんだから当然よ!見なさい!この可愛い生き物を!」


 ソフィアがミリアの背中をグイグイと押す。


「はわわ……おさないで〜…ソフィアちゃん…」


「かわいい…たしかに可愛すぎる…可愛い妖精さんが近づいてきた…浄化されそう…」


「おにいちゃん……はずかちい……」


 目の前までやってきたミリアがぽかへいで顔を隠してもじもじする。


 にやにやしながら顔を近づけると、


「へぶっ!?」


 ぽかへいにパンチされた。


「どういうつもりだね?ぽかへいくん?またわからせてやろうか?」


 ……ガクッ。


 オレが笑顔で睨みつけると、ぽかへいは壊れたマリオネットのように動かなくなった。


「あれ?ぽかへい?ぽかへい?」


 ミリアがぽかへいを揺すって首を傾げているが、


「まぁまぁ、とりあえず出かけようよ!」


 オレはクソうさぎを無視してデートへの出発を促すこととした。


「あ…うん…わかった…」


「それじゃあ、ノアールさん!お願いします!」


「はぁーい!」


 そして、ここでノアールが登場。今日のデート地まで連れて行ってくれるのだ。


 この数日、ノアールの転移魔法の実験を繰り返し、誰でも安全に移動できることを確認してきた。なので、今日はノアールにお願いして、目的地まで移動させてもらうことになっていた。


「じゃあいくよー!月見島でいいんだよね?」


「うん!頼む!」


「はぁーい!」


 そして、スケッチブックに絵を書き出すノアール。すぐに扉が描き上がり、それを召喚した。


「はい!どーぞ!」


「ありがと!じゃあいこっか!ミリア!」


「う…うん……」


 ミリアの手を握って、反対の手でドアノブを回す。


 そして、現れた時空の歪みに顔を突っ込んだ。

 その先は月見島の砂浜だった。そのまま、身体も通過させる。ミリアのことも引っ張って、こちらに連れてきた。


「きゃっ」


 砂浜に足を取られ転びそうになるミリア。


「よっと」


 それを受け止める。


「気をつけて?」


「う…うん…」


「抱っこしてあげるな」


「うゆ…」


 頷いてくれたので、お姫様抱っこして、砂浜から抜け出した。土の地面のところまでやってくる。そこまできたらノアールの扉は消えていた。夜になったら意識共有で連絡して迎えにきてもらうことになっている。


「ノアールちゃんの…魔法…すごいね…」


「ほんとだよねー、あっという間にこんなところまできちゃうんだもん、すごすぎだよ」


 ミリアを地面に下ろしながらそう答えた。


「ちょっと羨ましい…おにいちゃんと…クリスちゃんの力になれて…」


「ええ?ミリアの強化魔法だってすごいよ?だって、そのおかげでオレは強くなれるんだし、リリィも助けることができた。ミリアだってすごすぎだ」


「……えへへ」


 ミリアはニコニコになった。いや、オレが褒め始めてからすでにニコニコしてたような気がする。


「あれ?」


 なんだか、その様子に違和感を覚える。


「もしかして、褒められたくて拗ねたふりした?」


「あ…バレちゃった…」


 おお?なになに?その小悪魔的なセリフ誘導。お利口さんなミリアらしくない行動に新鮮な気持ちになった。


「ミィ…悪い子だから…こういうことも…するよ?」


 首を傾げながら言われてしまった。

 なんというか、今日の小悪魔ファッションもあいまってすごくキュンとくる。手のひらで転がされているような感覚だ。


「そ、そういえば……ミリアは悪い子だったもんな……忘れてた…」


「ふふ…そうだよ?…ミィは悪い子…だから…今日はいっぱい…わがまま…言いたいな?」


 また、首を傾げながら言われてしまった。可愛すぎて、ムラムラしてくる。今すぐこの小悪魔をわからせたい。


「……めっ…おにいちゃん…」


「え?」


 オレが両手をわきわきしながら、肩を掴もうとしたら、人差し指をさして怒られてしまった。


「すぐに…そういうことしちゃ…めっ…だよ?」


「あ、ああ……はい…」


 オレは、しゅんとなりつつ手を下げる。そうか、今日はそういうことはダメな日らしい。


「……ふつうのちゅー…なら…いいよ?」


 そんなオレの心を見透かすように、目をつむって背伸びをしてくれた。


「ミ、ミリア……」


 そういうセリフは逆にムラムラします。でもいただきます。そう思いながらキスをした。プルプルだ。美味しい。


「ねぇ…おにいちゃん?」


「ん?なぁに?」


「今日は…ミィのわがまま…聞いてくれる?」


 唇を離すと、至近距離でうるうるとおねだりをしてくる妹。そんなことされたら従うほかない。


「わがまま?うん!もちろん聞くよ!なんでも言って!」


「わかった……じゃあ…んー…おんぶして…」


 両手を広げておねだりされる。


「お安い御用だ!」


 オレはすぐに後ろを向いて背中を差し出した。


「んしょ…んしょ…」


 そんな掛け声と共に妹おっぱいが……ちがう、ミリアが背中に乗ってきた。すごいボリュームが背中に押しつけられる。

 すんごい……


「おにいちゃん…立って…」


「はい!」


 なんだか、見透かされたようなタイミングで言われ、シャキッとして立ち上がる。


「……えっちなのは…めっ…」


 耳元で囁かれてゾクゾクしてしまった。やっぱりオッパイのことを考えていたのを見透かされていたらしい。


「ぽかへい…おにいちゃんが…えっちなこと考えてたら…めっ、ってして…」


 こくこく。


 ぽかへいが頷いているのは見てないのに察知できた。オレの頭にあのうさぎのぬいぐるみがかぶさるように乗っかってくる。


「それじゃあ…んー…あっちの砂浜まで…連れてって…」


「あいあいさー!」


 ミリアが言うあっちの砂浜とは、この前みんなで遊んだプライベートビーチのことだろう。今いる砂浜がウチナシーレ側なので反対側になる。


 オレは森の中をつっきらずに、のんびり島の外周を歩いて目的地に向かうことにした。


 楽しいデートの始まりだ。今日は妹ミリア様がわがままをたくさん言ってくれるらしい。楽しみである。

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