第366話 黒髪パッツン猫耳少女とのデート

「ただいまー!」


 オレは玄関を開けて、2階に向けて声をかけた。

 ノアールはもう挨拶周りから帰ってきているだろうか?


「はぁーい!あ!パパはそこで待っててー!すぐ行くからー!」


「わかったー!」


 すぐに出発するらしいので、オレは靴を履いたまま玄関に腰かけ、ノアールのことをワクワクと待つ。


 少ししたら、ノアールのバタバタした足音が聞こえてきたので、階段の上を見上げた。

 するとそこには、真っ白なワンピースと麦わら帽子を被った愛娘、いや愛妻が駆けてきているところだった。


 低い位置から見上げたもんだから、ワンピースの下のセクシーなレースの下着が見えてしまう。ふわふわと浮く白いワンピースと同じ色で、とても美しく見えた、そしてえっち。


「ああー!まだ見ちゃダメだよー!」


「え!?あっ!ごめん!」


 オレはパンツのことを言われてると思い、焦って目を逸らす。まだ?まだってどういう意味?後で見てもいいんですか!?


「もう!ビックリさせようと思ったのに!」


 ノアールが隣までやってきて、腰に手を当てて前のめりになり、ぷんぷんしていた。


 その仕草がまた可愛い。それとノアールさん、パパはもうビックリしましたよ?

 

 でも、そんなことより、


「……かわいいなぁ」


 白いワンピースの黒髪パッツン猫耳少女が可愛すぎて、ついつい呟いてします。


「え?ホントに?ノアかわいい?」


「うん、すっごく可愛い」


「えへへ///ママに貸してもらって正解だったかな…」


「ママに?あ、そっか、そのワンピースと麦わら帽子って…」


 ノアールが着ている服と帽子は、ウミウシに滞在してたとき、オレがリリィにプレゼントしたものだと思い出す。

 あのときは清楚なリリィにピッタリだと思ったが、こうしてみると黒髪ロングのノアールにもめちゃくちゃ似合っていた。


 いつもの元気いっぱいなノアールと比べると大人っぽく見える。そのギャップがまた良い。


「じゃあデートいこ!パパ!」


「う、うん!さっそく行こうか!」


 元気いっぱいのノアールに促され、オレたちのデートが始まった。あんまり時間はないが、楽しもうと思う。


「パパ!どこいこうね!」


 ぎゅ!

 玄関をでるとさっそくノアールが腕に抱きついてきた。いつもと違う服装のノアールに接触されドキドキする。


「え、えーっと…どうしようかな…まずは町を回る?」


「んー、ノア、ウミウシのこと全部知ってるよ?」


「そっか、じゃあ、ピクニックにしようか?」


「うん!ノアもそれがいいと思ってた!ノアのお友達に乗ってこ!」


「お友達?あ、スケッチブックから出てくる子たちのことだよね?チー君かな?」


「今日はチー君じゃないよー!ちょっと待ってね!」


 言いながらノアールがスケッチブックを召喚し、絵を描き始めた。


「ター君!来てー!」


 そして、間も無くして描き上がった絵が動き出し、スケッチブックから飛び出てくる。


 現れたのは、真っ白な虎、ホワイトタイガーだった。


「で、でかい…」


 オレよりもデカいそいつは、百獣の王らしい威厳に満ちた風貌をしていた。


 チーターのチー君のときも少しビビったが、近くで肉食獣を見ると怖いという気持ちがどうしてもでてしまう。


「ター君!ノアとパパを乗せてほしいの!」


「グルル…」


 コクリ、とター君が首を縦に振る、そして、地面に寝そべってくれた。どうやら乗せてくれるらしい。


「じゃあノアが前ね!」


 言いながらノアールが目の前の獣によじ登った。


「パパもはやく!」


「お、おう…」


 オレも恐る恐るター君の背中に乗る。毛並みがサラサラでもっふもふであった、結構気持ちいい。

 もふもふと背中を撫でているとター君が立ち上がる。


「しゅっぱーつ!」


 ノアールの掛け声で、ゆっくりとター君が動き出した。


 ウミウシの正門付近まではゆっくりと歩き、町を出たら走り出した。どんどん加速する。


「結構早いね!」


「でしょー!」


「あ、帽子、気をつけて」


 ノアールの麦わら帽子が風で飛ばされないように押さえる。


「ありがと!」


 振り返ってニコニコしてるノアールの頭をそのまま撫でて、帽子を押さえたまま、ター君の背中の上に乗って移動した。


 15分くらい経っただろうか、目的地に着いたらしい。

 ノアールがター君に「あそこだよ!」と言うと、ター君は走る速度を遅くしていき、ゆっくり止まってくれる。

 ノアールがぴょんっと背中から飛び降りたので、オレも続いて背中から降りた。


「ありがとね!ター君!」


 そして、ター君は、スケッチブックに帰っていく。


「ここで良かったの?」


「うん!」


 ノアールが連れてきてくれたのは、小高い丘の麓で、周りには木が立っていないので、頂上がここからもよく見える。テッペンまで草花が敷き詰められ、一番高いところには、巨木が一本たっていた。


「ピクニックだから頂上まで登ろ!それとね、暗くなるまで一緒にいたいんだけどいい?ママはイイって言ってたよ?」


「もちろん!ウミウシを出るのは夕食後の予定だしね。ピクニックを楽しもう!」


「うん!いこっ!」


 またノアールがニコニコと腕に抱きついてきたので、オレも笑顔を浮かべて歩き出した。


 そんなに高い丘ではないので1時間くらいで登れると思う。


 丘をのんびりと登りながら、緑豊かな風景を楽しみつつ、ノアールと会話する。


「ねぇねぇ!パパはノアールにどんな服着て欲しい?」


 なんだかニッコリしていた。

 たぶんだけど、〈どんな服を着て欲しいのか〉、よりも、〈今の着てる服装について感想が欲しい〉、と言ってるように聞こえる。

 よし、そっち方向で攻めてみるか。


「んー?いつもの黒のワンピースも可愛いけど、今日の白のワンピースもすごく似合ってて可愛いよ。ノアールのサラサラの黒髪とのコントラストが素敵だし、麦わら帽子もあるから、すごく良いところのお嬢様みたいに見える。

 なにより、ノアールは何を着てもすごく可愛い美少女だから、なんでも似合っちゃうね」


「えへへー!パパいっぱい褒めてくれるから大好き!」


 正解だったようだ。スキップでもしそうなほど軽い足取りで、ニコニコとオレの横を歩いているノアール。


「オレもノアールのことが大好きだぞ!良かったら肩車してあげよっか?」


「いいの!?うん!して欲しい!」


 ということで、オレはしゃがんでノアールが乗っかってくるのを待つ。


 すると…


「ふがっ」


 目の前が暗くなった思ったら、ノアールが目の前にいて、スカートを被せられていた。

 つまり、オレはノアールのスカートの中にいる。


「な!?なにしてるの!?」


 オレはビックリして尻もちをつく。スカートの中から脱出した。


「あれー?ママがこうしたら、パパ、はぁはぁ言ってたのに…何が違うんだろ…」


 ウミウシでの、リリィとのデートのことを言ってるのか…

 まさか、そんなところからずっと覗かれていたとは思わなかった…


「ノアール…」


「なぁに?」


「そういうことを大人のレディがしてはいけません」


 オレは最大限、理性を発揮して、愛娘を教育することにした。デートがはじまってまだ一時間も経ってない。さすがに早すぎる気がしたのだ。


「えー?ママもやってたのに?」


「んー…」


 そう言われると困る。


「あれは、大人同士のことなので…」


「ノアも大人だよ?」


「まぁ…たしかに…」


「ま!いいや!とりあえず肩車!」


「あ、うん、わかった」


 ノアールのペースに振り回されながら今度は背中側から肩に跨ってくる。本当に無邪気で元気な子である、そこが可愛いんだけど。


「ゴーゴー!」


「ほーい、いくぞー」


 頭の上から元気な声が聞こえたので、言いながら立ち上がる。


「たかーい!」


 ご満悦のようだ。


「たかいよ!パパ!」


「怖くないかー?」


「楽しい!」


「そりゃ良かった、じゃあしゅっぱーつ」


「パパ!ゴーゴー!」


 ということで、このまましばらく、緩やかな丘を登っていくことにした。



 10分ちょっと肩車で移動したら、ノアールは飽きたらしく、「おろして」、と言う。


 おろしてからは、「競争ー!」と言われて走り出した。


 追いかけていくと、意外にも体力があるらしく、全然ばてない。


「ノアールって結構体力あるんだねー!」


 走りながら声をかける。


「だってノアも冒険者だもん!」


「そっかそっか!」


「パパについて行きたくて鍛えたんだよ!」


「ノアール…」


 ジーン…

 そう言われるとすごく嬉しくなる。

 オレのために長い時間、努力してくれたんだな…


「だからパパにも負けないんだからー!」


 オレが感動していると、たたたーっと走っていってしまった。


「まてまてー」


 すぐに追いつく。


「きゃー!捕まるー!」


「えい!」


「にゃ!?」


 オレはすばやくノアールの身体を抱えてお姫様抱っこした。


「にゃー!ノアまだ走れるよー!」


「じゃあ、ノアールの代わりにオレが走っちゃうぞ、お姫様」


 オレはそのままお姫様抱っこを維持して走っていく。


「お姫様?……ノア…パパのお姫様かなぁ?」


「そうだよー!ノアールはパパの大切なお姫様だ!」


「……えへへ///……パパゴーゴー!!」


 腕の中のノアールが少し照れてから片手を上げて前進の合図をする。


 それからまた、しばらくはオレがノアールを運んであげることにした。羽のように軽いので全然へっちゃらだ。むしろ、いい匂いもするし、柔らかいノアールを抱きしめていられるのは、すごく幸せで楽しかった。

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