第328話 王様になる条件(真面目編)
-ウチナシーレ 王城 会議室-
翌日、改めて、オレたちはジャンたちの元に来ていた。王様になるか否かの回答をするためだ。
「して!話し合いの結果はどうなりましたかな!?」
ジャンは目をキラキラさせながらオレのことを見てくる。マッチョのオッサンにそんな顔されても嬉しくない。
「なってもいいですよ、一応ね」
オレはぶっきらぼうに答えた。
「我らが王よ!ついに!!俺は嬉しいぞ!」
ジャンは両手をあげ満面の笑顔を浮かべていて、サンディアは控えめなガッツポーズをとっていた。マガティヌスは片手をおでこに当て、なんてことだ、みたいな顔をしている。
「だけど、条件がある」
「王になるのに条件付きとは……つくづく身の程知らずなやつだ……」
「マガティヌス!黙ってろ!して!我らが王の条件とは!?」
「とりあえず、有事ということで、国を建て直すまでは王様の役割は担うつもりだ。でも、基本は今の屋敷に住むし、たまにウチナシーレ周辺の森にモンスター狩りに出かけるのを許可してほしい」
「しかし!一国の主人がそのような危険なことをするのは!」
「言いたいことはわかる。でも、オレは冒険者だ、たまには本気を出さないと身体が鈍るだろう?心配というなら、騎士団の同行は認めよう」
「まぁ……それならば……」
「それと、オレが王に就任してからは、1年に一度、必ず選挙を行うこととしたい」
「選挙ですか?」
「ああ、詳しいことは決めてないが、複数名の他薦がある人物を候補にして、国民全員に選挙権を与えて選挙を行うとか、そういう制度を整えたいと考えてる」
「国民全員ですか、大変そうですね……その選挙の狙いを聞いてもいいですか?」
「おまえ、オレが暴君になったらどうやって止める気なんだ?」
「んー……」
「そんなバカなこと起こり得るはずがない!我らが王は強く優しき王だ!」
考える素振りを見せるサンディアと怒り出すジャン。
「ジャンさん、そう言ってくれるのは嬉しいけど、オレが変わらないなんて保証はないよ。権力を持つと人は変わる。少なくとも、そんなやつが王で居続けるような仕組みは排除すべきだ。だから、そのための選挙の制度を整えたい」
「……ほう、野蛮人にしては面白い提案だな」
「なので、来年はマガティーが王様になってくれてもいいよ?」
「……」
せっかくあだ名で呼んでみたのに無視された。冷たいジジイだ。
「と、いうことでこれらの条件を飲むなら、しばらくは頑張って王様やってみますが、どうでしょうか?」
「ふーむ……サンディア、どう思う?なにか不都合はないか?」
ひそひそと、オッサンがサンディアに話しかけている。
「そうですね、特に不都合はないかと、年1の選挙というので不正が行われないか心配ではありますが、そのあたりはみんなで仕組みを考えればいいかと思います。それに選挙をやったとしても、ライより人気が出る人なんてそうそう出てきませんよ」
「なるほど!たしかにそうだな!がはは!それでは我らが王よ!王の提案を受け入れるとしよう!よろしくお頼み申す!」
「あー、はい、こちらこそ。で、基本的には王様といっても、今までとやること変わらないですよね?復興の手伝いをしたり、復興の方針を決めたりとかする感じですよね?」
「ん?まーそうだな?」
「一日中、城にいる必要ってあります?」
「いや、そんなことはないが毎日顔は出してもらいたい」
「それと、何処にいるかは把握したいので、1週間単位でスケジュール表を提出してください」
「あいあい、りょーかい」
「あとは、みなの前で王になったことを宣言してもらおう!きっとすごく盛り上がるぞ!祭りの予感がするな!」
「うぇぇ……やりたくない……」
「それも王様の務めですよ、頑張ってください」
「セリフとかって、畏まったものじゃないとダメか?」
「いえ、ライが好きなように話せばいいですよ」
「品のない話し方はやめてもらいたいものだがな」
「マガティーは黙っておれ!」
「……」
ジャンにまでマガティー呼びされて心底嫌そうにしてるのを見て笑いそうになる。
「と、とりあえず、セリフは考えておくとして、その王様宣言?ってのはいつやる?」
「ライの王就任挨拶は、みんな聞きたいでしょうし、そうですね、、2週間後くらいにやりましょうか」
「りょーかい。じゃあ、その手配は任せていいか?」
「お任せください、陛下」
「……陛下はやめろ、今まで通り呼ばないなら、おまえクビにするぞ」
「おぉ怖い、それではそのように致します」
「はぁ……」
頭を下げながらニヤつくサンディアを見て、ほんとにこれでよかったのだろうかと自分の判断を疑いたくなる。
結局、ジャンやサンディアにのせられてるだけじゃないのか?、と思いながら、オレはその場を後にした。
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