第309話 結婚式の二次会と夜の三次会

 結婚式が終わり、オレたちは二次会の会場に移動してきた。会場は、中央教会の食堂だ。そこをパーティ仕様に飾りつけて使わせてもらっている。


 家族みんなで大きな円形の食卓を囲みながら、さっき、オレとリリィがわんわん泣いていたことについて会話がはじまってしまった。


「本当に2人ともよく泣いておったのう、泣き虫夫婦なのじゃ」


「そういうところもかわいいじゃない!ふふ!」


「うふふ♪私も同意見です♪」


「おにいちゃん…リリィちゃん…もう、泣かないかなー?大丈夫かなー?ねー?ぽかへい?」


 ?

 うーん、どうだろう?と首を傾げるぽかへい。


「もう……みんな…あんまりからかわないでください…」


「そうだよ!もぐもぐ!今日くらいたくさん泣いちゃっていいと思う!もぐもぐ!」

「ピ~」


 コハルは、テーブルの上に所狭しと並べられた豪華な料理を夢中になって頬張っていた。

 大きな円卓の上には色とりどりの料理が並んでいて、どれもとても美味しそうだ。


 この料理、誰が作ったのか。

 料理といえば、もちろんステラ、ステラといえば、神料理人。


 ここにある二次会の全ての料理をステラが監修し、メインシェフとして調理してくれたのだ。だから、どれも絶品であった。


 しかし、すべての料理をまとめてテーブルに出すことはできないので、料理の入れ替えのタイミングで、ステラは席を立って、調理場と自分の席を行ったり来たりしている。


 ステラには申し訳ないが、オレたち自慢のステラの料理を結婚式に来てくれた人にも食べてもらいたい、ということに話し合って決めたので、頑張ってもらうしかない。

 ステラには、今度、しっかりとお礼しようと思う。


 みんなも食事を楽しめているかな、と気になって、周りの様子を見た。


 食堂の中には、円形のテーブルがいくつも並べられていて、結婚式に出てくれた全員が二次会に参加してくれていた。

 どのテーブルの人たちも笑顔で美味しそうに料理を口に運んでくれている。その光景は、とても誇らしいものだった。


 もう一度、自分たちの家族の食卓に目線を戻す。あ、家族といえばこの人もそうだ。


「全く、あなたたちは式が終わった途端、泣き出して。最後までしっかりして下さい、まったく」


「ユーシェスタさんも泣いてたくせに……」


「なにか言いましたか?」


「いいえ?」


「……たしかに泣いたかもしれませんが、あなたたちのように動けなくはなっていません」


「おっしゃる通りですー、すみませんー」


「リリィ、この夫、反省してるのですか?」


「ふふ、たぶんしてませんね」


「リリィさん?そこは適当に誤魔化してもらって」


「ふふ、すみません、あなた」


「おぉ……あなた…イイよね、その呼び方」


「ちょっと恥ずかしいですけど、新鮮な感じでわたしもイイと思います」


「それが普通なんです。いつもの様付けがおかしいんです。なんのプレイなんですか、まったく……」


「もぐ?ユーシェスタさん、プレイってなに?」

「ピー?」


「誰かコハルに説明しておきなさい」


「もぐ?」

「ピー?」


「あはは!ホント面白い家族だね!」


 こうして、しばらく家族水いらずで食事を楽しんで、少ししたら各テーブルにリリィと一緒に挨拶に向かった。


 結婚式に来てくれたお礼を言おうと思って立ち上がったのだが、先ほどの結婚式で茶々を入れてきた2人のことを思い出す。


 あいつら……ふふふ……


 オレは、リューキュリアの人たちのテーブルに到着したら、まず、サンディアのやつの肩をボキボキと揉んでやり、悲鳴を聞いて溜飲を下げる。


 次にニンマリとジャンさんの背後に回り、サンディアと同じことをしてやった。しかし、ムッキムキのガッチガチで、なんのダメージも与えられなかったので、諦めてもう一度サンディアの肩を揉んであげた。


 そのテーブルにはリョクたちもいて、それはもう一生懸命祝ってくれた。生意気なところもあるが、基本的に可愛い弟子なので頭を撫でておく。


「お〜、師匠が頭を撫でてくれたのって初めてな気がします。こうしていると、兄さんよりも頼れるし、師匠の方が兄っぽいですね?」


「ぶふっ!?なんだって!?」


「おい、ユウ、ステラの料理だぞ、行儀よく食え」


「は、はい……失礼しました」


「ライお兄さん!リリィお姉さん!結婚おめでとうございます!」


「あら、ありがとう、ショウくん」

「ありがとな、ショウ」


 そして、手を振って次のテーブルに向かう。


 どこにいっても、みんながみんな、沢山祝ってくれた。


 こうして、オレとリリィの結婚式は幕を下ろした。


 本当にすごく幸せな時間だった。


 これらも、リリィが隣にいれば、こんな幸せが続くんだろうな、そう自然に考えていた。



 結婚式が終わり、片付けなどは結婚式のスタッフの方々に任せて、オレたちは屋敷に帰ってきた。


 みんなで夕食を食べたあと、みんなが気を使ってくれて、オレとリリィを2人っきりにさせてくれる。


 お言葉に甘えて、オレはリリィを自室に連れ込んだ。


 結婚初夜だ。

 つまり、そういうことだ。


 オレはゆっくりとリリィに近づく。リリィもなにをされるかわかっているようで、大人しく目を閉じた。


 しかし、そこでオレは良からぬことを思いついてしまう。


「あの……リリィ、ちょっとお願いがあって……」


「なんでしょうか?」


 オレは、自分の欲望を素直にリリィに話すことにした。



「ライ様、もう、振り向いてもいいですよ?」


「う、うん……わぁぁぁ……やっぱ綺麗だ……」


 振り向くと、そこにはウェディングドレスに包まれた天使がいた。


 オレの自慢の奥さん、リリィだ。


「でも……ホントにいいのかな?」


「ライ様が……したいって……言ったんじゃないですか……」


「うん……言った、言ったけど……なんか悪いことしてるみたいな気がして……」


 ウェディングドレスは神聖なもののはずだ。

 だから、それを着せて、こんなこと……


「大丈夫です、わたしは、リリアーナ・クローバーは、ライ・ミカヅチのお願いならなんでも叶えて差し上げます」


 なんだか、結婚式での宣誓みたいな言い方をするリリィ。

 そして、自分で言ったのに、くすりとおかしそうに笑う。


「ふふ、いいから、いらしてください。あ、な、た♡」


 笑顔で手を広げるリリィにオレは我慢できずに近づいていった。


 この日の夜は、一生忘れないだろうな。


 そう思いながら、丁寧に、壊れないように、優しくリリィのことを抱きしめた。

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