第293話 雷龍は国賓扱いで

 コーヒーブレイク~雷龍の血を添えて~

 をした後、食堂を出て教皇様に話を通しに行く。


 雷龍様は、オレの身体のことを心配して訪問してくれただけで、レウキクロスには用はないということをまずはお伝えした。


「そうですか……それは良かった……ほんとに……」


「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」


「いえ……まさか龍が来るなんて、夢にも思いませんでしたから……少々動揺してしまいました。

 それで、用が済んだということは、雷龍様はお住まいにお帰りになるのでしょうか?」


「あ、えっと……しばらく滞在するそうです」


 そうオレが伝えたとき、教皇様と取り巻きの人たちが顔色を変えたのは言うまでもない。


 マジかよ……早く帰ってくれよ……

 顔がそう言っていた。


「大丈夫です!眷属のオレが!責任を持って接待しますので!」


「そ、そうですか?それなら……いやしかし……国民にどう説明すべきか……」


 たしかに多くの国民に雷龍様の姿は目撃されたし、眷属のライ・ミカヅチは出てこいや、というセリフも聞かれた。


 なんの説明もなしってわけにはいかないだろう。


「もう、バカンスに来た、とかにすれば良くないでしょうか?」


 部屋の中にいたクリスが適当なことを言い出す。


「いや、おまえ、そんなんで説明になるのか?」


「だって、龍が考えることなんて誰にも分からないだろ?国民にももちろんわからない。だから、説明するならなんだっていいんじゃないか?それか、今は幼女の姿なんだし、説明しないとか?」


「いやいや、あの角と尻尾見られたらどうすんだ?」


「あぁそっか、なら角と尻尾も消してくださいって頼んでよ」


「やだよ、なにがトリガーで機嫌損ねるかわかんないんだし」


「眷属のくせに」


「名ばかりのな」


「貴様ら!陛下の御前であるぞ!」


 枢機卿のジジイがオレたちの会話を聞いて我慢できなくなり怒鳴りだす。タメ口でペラペラやってたのが気に入らなかったらしい。


「あ、失礼しました」

 ペコリと頭を下げておく。


「いえ、大丈夫です。シンラ、あまり目くじらを立てるものではありませんよ」


「はっ!」


「では……そうですね…国民には休暇に赴いた雷龍様を国賓としておもてなしする、と伝えましょう」


「よろしいのですか?」


「はい、大丈夫です。この町に危害さえ加えないのでしたら」


「もちろんです!そんなことはさせません!もし暴れ出してもステラの料理で釣れば大人しくなりますので!………たぶん!」


「……心配だ…」


「すみません…」


逆に不安にさせてしまったようだ


「いえ……では、国民にはこちらから伝えておきますので、今日のところはお屋敷にてご滞在ください。混乱を招くので裏口から出ていただけるでしょうか。ライ殿たちを案内してください」


「はっ!」


 そばに控えていた魔導師が頷く。


「それと、町の中を雷龍様が出歩く場合は、ライ殿か、ステラ殿、眷属の方が同行していただくようお願い致します」


「承知しました!寛大なご対応ありがとうございます!」


 しっかりと腰を折って頭を下げた。


「いえ、なんというか……これしかない、という対応ですし……ははは……」


 そう言って笑う教皇様は疲れ切った顔をしていた。


 ホンマ、申し訳ないで。



 そのあと、食堂に戻ったオレは、雷龍様とみんなを引き連れて、クロノス神殿の裏口から外に出た。


 魔導師の方が道案内をしてくれて、立派なお屋敷にたどり着く。


「鍵はこちらになります」


「ありがとうございます」


 鍵を受け取って、建物の中に入った。


「貴族のお屋敷じゃん……」


「ひろーい!」

「ピー!」


「なかなか良い住処ではないか、我の部屋はどこだ?」


「おねえちゃん、大人しくしてなさい。私たちだって初めて入ったんだから」


「そうなのか?では何か甘い物でも作れ、ステラ」


「だからなんでそんなに偉そうなの?」


「我は雷龍ぞ?それにおまえの旦那の命を救ってやったではないか。早く作れ。感謝しながら、愛を込めて作れ」


「はぁ……キッチンはどこですかね。行くわよ、おねえちゃん」


「わたしも食べたいわ」


「ミィも…ついてく…」


 ステラの後ろにロリたちが付き従って姿を消した。


「ボク自分の部屋決めてくる!」

「ピー!」


 コハルはタタタッと駆け出した。


「みんな自由だねー」


「ですねぇ」

「そうじゃのう」


「オレたちも自分の部屋決めに行こうか?」


「ではお供しますね」

「わしもそうするかのう、暇じゃしの」


「じゃあ、まずは一階をぐるっと回ってそれから2階かな。たぶん個室は2階だと思うけど」


 言いながら、オレはリリィとティナと一緒にお屋敷の探検を開始した。

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