第294話 数か月ぶりのデザート
屋敷を手に入れた翌朝、オレは無駄に広い屋敷で、自分に割り当てられた個室のベッドの上で目が覚めた。
個室、個室だ。
部屋の中にはオレ以外誰もいない。
しゅーん……寂しい……
コンコン。
「はぁーい!」
寂しかったところに誰か来てくれたので、急いで扉の方に駆けていき、こちらから扉を開ける。
「あ、ライ様、おはようございます」
「うん、おはよう、リリィ、今日も可愛いね」
「あ、ありがとうございます……えっと……朝食の準備ができましたので、お呼びに来ました」
出会い頭に可愛いと言われて、少し恥ずかしそうにしながらも要件を伝えてくれた。
「そうなんだ、ありがとね。キスしてもいい?」
「は、はい……大丈夫です」
リリィの細い二の腕を両手で掴んで控えめなキスをした。
ちゅ…むちゅ……むらっ!!
そういえば、久しぶりのキスだった。
中央教会にいたときは全員同じ部屋の大部屋で、しかもユーシェスタさんもいたから、嫁たちとイチャイチャなんてできなかった。
あれ?
オレ…オレ、いつからしてない?
え?
むちゅちゅ…ちゅ…
「ぷはっ……あの、ライ様……朝食が……」
夢中になってキスを続けていたら、リリィが顔を背け、やんわりと抵抗を見せた。
「リリィ」
しかし、そんなリリィを逃がさないとばかりにオレは真剣な顔をする。
「はい……」
「リリィの修行は一応終わったんだよね?」
「はい……」
「じゃあ、もう、してもいいんだよな?」
「それは……どういう、意味でしょうか…」
「わかってるだろ?」
「………だ、だめです…」
「な、なんで?」
「雷龍様が戦うのは禁止だと、昨日言ってました!だから、運動は控えるべきです!」
赤い顔をしながら、キッと強い意志を見せるリリィ。
運動なんて言い方するの、なんかえっちだね。
そんなどうしようもないことを考えていたオレだったが、さっきのリリィのセリフにひっかかることがあると気づいた。
雷龍様が戦うは禁止だと言った。
↓
だから運動しちゃダメ。
↓
戦闘禁止期間は半年間である。
ん?
え?
無理無理無理!!
その理屈だと、半年間できないってことになるじゃん!!絶対無理!死んじゃう!!
パニックになりそうだったが、深呼吸してから、どうにかしてリリィを説得しようと考える。
「……なら、雷龍様が許可してくれたら、リリィを抱く。それならいいよね?」
説得というか、めちゃくちゃ安易な考えであった。
「あの……そ、それならば……」
「来て!」
同意と思える回答を聞いて、すぐにリリィの手を引いて歩き出す。
「あ!ライ様!」
リリィを連れたまま、ズンズンとリビングに入ると、もうみんな集まっていて、テーブルの上には朝食が並んでいた。
雷龍様は我慢できなかったようで、すでにガツガツ食べているところだった。
「雷龍様!」
「んぐっ?なんだ?」
「オレって戦うのは半年禁止なんですよね!?」
「そうだな」
「運動もダメなんでしょうか!」
「運動?うーむ。殴られたり、ダメージを受けなければ別に良いぞ?あと魔法は使うな」
「つまり!妻と愛し合ってもよろしいでしょうか!?」
「愛し合う?……なんだそれは……好きにするが良い…人間は不潔なのだ…ステラもスケベに育ってしまったし、なげかわしい」
「いつまでもあのときのこと言わないでよ!おねえちゃん!」
ステラがなんか怒っているが、オレの耳には入ってこなかった。
雷龍様が許可してくれた。このことだけで理性がどんどんと離れていく。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
「ライ様?あの?」
「みんな!今日は一日!オレはリリィと過ごすから!」
大声で宣言してリリィを抱っこする。
「きゃ!?」
お姫様抱っこされたリリィは赤くなってオレを見上げていた。
そのままリビングを出る。急足で2階の階段を上がりながら、
「リリィ」
「はい……」
「めちゃくちゃにしてやる、おまえのこと」
「それは……」
「ずっと我慢させた罰だ」
「あの……」
ガチャ。
リーン。
自室に入って、リリィをベッドに寝かせてからすぐにサイレントのベルを使った。
そしてリリィに覆いかぶさる。
「覚悟はできたか?」
「あの……ライ様…怖いです…」
「リリィ、オレに最後に抱かれたのはいつだ?言ってみろ」
「わ、わたしが、ライ様に抱かれたのは……リフレット、ですので……2、3ヶ月前かと……」
「3ヶ月だ」
「ライ様……」
「3ヶ月分、リリィを抱くまで離さない」
「そんな…そんなの無理です…」
「無理でもするんだ」
ガバッ!
「ああ!?ライ様!そんな!?落ち着いて!!」
オレは理性を失った獣と化した。
リリィのことしか、目の前の美しい女を抱くことしか考えない。
その日、オレは一日中リリィを貪った。
♢
空が暗くなってもしばらくはリリィと愛し合い、リリィのお腹がくぅ〜と鳴ったところで、オレは一旦理性を取り戻す。
「ちょっと待っててね」
と汗だくのリリィに話しかける。
リリィは、「はぁはぁ」言ってるだけで返答がない。
ガチャ。
食堂に食事を取りに行こうかと考えて扉を開ける。すると扉の横に2人分の料理が蓋をされて置いてあることに気づいた。
さすがステラ、気が効くね。
オレはその料理が乗ったお盆を持って部屋に戻る。
「リリィ、ご飯もってきたよ」
「え?あ、はい……」
ふわふわとした様子のリリィが月明かりに照らされていた。金色の髪がキラキラと光っていて、シーツで身体を隠している姿がとても美しかった。
オレは、ベッドサイドの棚にお盆を置いて、リリィにご飯を食べさせてあげることにした。
「あの、ライ様、自分で食べられますよ?」
「ううん、大丈夫、はい、あーん」
「あーん、ふふ、ありがとうございます」
リリィに栄養を補充させる。最後にお水だ。
オレがまず飲んで、
「リリィ、のませてあげるね」
「え?」
また口に含んでからリリィに口づけした。
リリィは、最初、驚いた顔をしていたが、受け入れてこくこくと飲んでくれる。
「ぷはっ……」
「お腹いっぱいになった?」
「はい…なりました…」
「じゃあ、朝までしような」
「え?きゃ!?」
オレは自分の食事なんて忘れて、また目の前のデザートを食べ始めた。
お腹なんて空いてない。
他に満たされてなかったものを取り戻すようにリリィのことを貪るのを再開した。
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