第211話 真面目なシスターの本音

 ガチャ


 お昼を過ぎ、夕方になろうとした頃、リリィが部屋から出てきた。


「リリィ!……あ…どうぞ…」


 部屋の前でずっと待っていたオレは自分の気持ちをもう一度伝えたいという衝動に駆られる。


 やっぱりオレもついて行くよ!

 そう言いたかったけど、我慢して、まず、リリィの話を聞くことにした。


「……ライ様……先度はああは言いましたが、わたしも本音ではみんなと離れたくありません…

 でも、修行に行く、これはわたしのワガママです…そんなワガママに、みんなを巻き込む訳には、いけないと思ったんです…」


 オレはぶんぶんと頭を振る。

 巻き込むとかそんなこと思わなくていいよ、と言いたかった。

 でも、黙って話を聞く。


「それと…ライ様がいると…甘えてしまいます…」


「き、きびしくする!!がんばる!!」


「……ありがとう、ございます…ステラとソフィアに言われたことも考えました…

 ………一緒に…」


「うん!うん!」


 もうちょっと!もうちょっとで1番聞きたい言葉が聞ける!そう思って焦る。

 でも、黙って、リリィの言葉を待った。


「一緒に……来て、くれますか?」


「もちろん!絶対いく!大好きだから!どこにでもついて行くから!」


「……ありがとう、ございます…

 でも…しばらく、厳しくしてくださいね?」


 厳しくすると言ったすぐ後に大好きなんて言い出したからだろうか。

 リリィは困った顔をして少しだけ微笑んでくれた。


「うん!がんばる!がんばって厳しくするから!えっと……ご飯!ご飯食べよ!」


 お昼ご飯の時間はだいぶ過ぎてしまったが、リリィはなにも食べてないはずだ。


 リリィの手を引いてみんながいる部屋に戻る。


 今話したことを報告すると、みんなホッとした様子を見せてくれた。


 よかった、ほんとによかった、リリィと離ればなれになるなんて考えられない。


 リリィの椅子を引いてあげて座ってもらって、オレは隣に座る。


「リリィ!食べさせてあげよっか!」


「ライさん、そういうの、今はやめましょーね」


 リリィが、〈またそうやって甘やかす〉と言いたそうに困り顔をしているからか、ステラに止められてしまった。


 リリィの希望通り、厳しくしないといけない。

 それはわかっているのに、リリィが離れていってしまわないように必死になってしまう。


「わ、わかった……がんばる……」


 その日、オレはずっとソワソワしてリリィを見ていた。


 気づいたらいなくなっていた、そんなことが起きそうで不安だったからだ。


 もちろん夜はリリィの隣で寝た。

 そういう雰囲気でもなかったのでしなかったけど、おやすみのチューだけはさせてくれた。


 触れるだけのちゅーは、リリィ的にはセーフのようだ。


 でも、抱き合って寝るのは違うようで、普通に並んで眠りについた。


 厳しくするのって難しい。

 オレは頭を悩ませる。


 でも、隣にリリィがいる、それだけでよかった。

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