8章 聖剣
第207話 強化魔法の効果について
「みんな……がんばってー!!」
ミリアが両手で小さな杖を握りしめて叫ぶ。
すると、両手を天に掲げるぽかへいに光が集まって、オレたちに向かって解き放たれた。
「いくぞ!ステラ!」
「はい!」
光を受けたオレとステラは駆け出してモンスターに斬りかかる。
相手は中級Cの植物型モンスターが5体、虫を食べる多肉植物に触手が生えて歩いているような見た目をしている。
触手の動きがなかなか速いが全て見極めて、ギリギリで避けてから倒していく。
ほどなくして、モンスターを全て倒し終えた。
キンッと剣を鞘に納めて、ステラと目合わせる。
「どうだった?」
「はい、身体が軽くなるだけじゃなくて…視界も良くなった、というか相手の動きがゆっくりになる感覚です」
「だよね、やっぱり凄いな、ミリアの魔法は」
「ですね!」
ステラと話しながら後衛のみんなのところに戻る。
「おつかれー!」
「ありがと!コハルもみんなの護衛おつかれ!」
「ううん!ボクはなんにもやってないから疲れてないよ!」
「じゃあ、ありがと!」
「うん!」
「……あの…おにいちゃん…」
ミリアがもじもじと不安そうに話しかけてくる。
「ミリア!ミリアの魔法すごかったぞ!!」
「ホントに?」
「うん!敵の動きがゆっくり見えるし!それに身体も軽くなるんだ!」
「そ、そうなんだ…役に立てて…嬉しい、な…」
「ああ!ミリアはみんなの役に立ってるぞ!」
よしよしと頭を撫でてやるともっと可愛く笑ってくれた。
今日は、ミリアを含めたパーティでの何度目かのモンスター討伐であった。
オレたちは、リフレットの町に滞在したまま、ギルドで依頼を受け、モンスター討伐の日々を送っている。
ミリアのランクは初級CからBに上がっていた。
「もう怖くないか?」
「…ううん…まだ、こわい……でも…がんばりゅ…」
「そっか!ゆっくりでいいからな!みんなのためにありがとうな!ミリア!」
抱き寄せて、引き続きたくさん撫でてやる。
ミリアは最初、モンスターと対峙すると、震えて何も出来なくなってしまった。
以前、村にイビルグリズリーが出たときは、オレたちを助けようと必死になって強化魔法を使ってくれたのだが、いざモンスターと戦うぞ、と考えると怖くなるらしい。
つまり、あのときは咄嗟のことだったから、火事場の馬鹿力が出たけど、普段はそうもいかない、ということだ。
でも、ミリアは「がんばる」と言ってくれた。だから、弱いモンスターを選んで依頼を受け、今は戦いに慣れている段階なのだ。
「ぽかへいもいつもありがとなー!」
ミリアに抱きしめられているぽかへいの頭も撫でる。
ティナ曰く、ぽかへいがミリアの強化魔法をサポートしている、とのことだ。
ティナも精霊たちの力を借りているし、ミリアもぽかへいの中に入った光と闇の精霊の力を借りているのだろう、という見解だ。
ぽかへいは特に抵抗することも、嬉しそうにすることもなく、大人しく撫でられていた。
「ピー!」
「おぉ?ピーちゃんもありがとなー」
肩に乗ってきたピーちゃんを撫でてやると嬉しそうにする。こっちの毛玉様は素直でかわいい。
「……」
「ん?どうかした?リリィ?」
「え?いいえ、なんでもありませんよ、今日はもう少し戦いますか?」
リリィが難しそうな顔をしていたので気になって声をかけるが、はぐらかされてしまった。
「うーん、今日はもういいかな、10体以上倒したし」
「じゃ、帰って魔法の勉強ね」
「……はーい」
「なによ、イヤそうね、教えてあげないわよ?」
「ううん、ソフィア先生に教えてもらえるのは幸せだけど、なかなか上手くいかないから…」
オレはまた重力魔法上級の勉強を再開していた。相変わらず習得できそうな気配はない。
オレと一緒に、ミリアとコハルも勉強会に参加中だ。ミリアは、ソフィア先生とティナ先生のおかけで、光属性のライトと闇属性の重力魔法初級は習得済みだ。
今はアイテムボックスを習っている。やっぱりこれが使えると便利だし、全員習得しておきたいということで習い始めた。
コハルは火属性魔法の中級を習っているのだが苦戦中だ。
オレと同じで勉強が嫌いらしく、「すぐに集中力が切れちゃうのが課題ね」とソフィア先生に言われていた。
回想はここまでにして頭を現実に戻す。
リフレットへの帰り道を歩きながら、ソフィア先生を会話する。
「幸せなら頑張りなさい、ご褒美あげるわよ」
「ご褒美だけ欲しい」
「ダメ」
「じゃあ別の魔法にするとか」
「うーん、まぁそれはそれでもいいけど。なにか覚えたい魔法あるの?」
「雷魔法の特級とか?」
「…今の3倍難しいけど?」
「……あー…」
「はいはい、なにか気晴らしになる魔法でも考えておくわよ」
「ほんとに!ありがとう!なんだかんだソフィア先生は優しいなー!」
「その分、わしが厳しくしてやろうかのぅ」
ティナがなんか言い出した、ベッドの上でわからせてやりたい、いや、今晩わからせてやる。
「なんじゃ?」
ティナが何かを感じたのか自分の身体を抱きしめてオレから一歩引く。
「なんでもー」
その様子をニヤニヤと眺めた。
そしてみんなしてリフレットの町に戻って歩いていく。もうちょっとで入口までつきそうだ。
「明日は、わたしとティナにミリアの強化魔法かけてくれない?」
「ソフィアちゃんと…ティナちゃんに?…いいよ…でも…なんで?」
今のところ、ミリアの強化魔法は、前衛職には目に見えて効果があるが、後衛職にはあまり効果がないという認識だった。
「魔法使いにもなにかしら効果があるかもしれないのよ、まぁ実験ね」
「うん…わかった…やってみる…」
「ありがと」
妻たちが仲良くしているのはいいことだ、今日も平和だな、と考えながらリフレットの門をくぐった。
「……」
そこでやっぱり難しい顔をしているリリィに気づく。
「リリィ?」
「はい、なんでしょう」
にっこり。
「あ、いや…」
あの顔はなんだったのだろう、笑顔で誤魔化されたような気がして不安になる。
「手つなご?」
「はい、もちろんです」
不安に感じたので、手を繋ぐのをお願いしたが嬉しそうに受け入れてくれる。
手を握る、あったかい。
いつものリリィだ。
う~ん?気のせいだろうか。
結局、疑問は解消しないまま宿に着き、その日は魔法勉強会でしごかれて、みんなでご飯を食べて寝る準備を始めた。
そこで、昼にいじわるな発言をして、ついさっきの勉強会で厳しくしてくれたエルフちゃんにお礼参りを決行することにした。
「ティナ、来なさい」
「……いやじゃ」
「今日は2人っきりだよ?」
そういうと、黙って近寄ってきた。
「……」
「よっ!」
エルフちゃんをお姫様抱っこする。
「じゃ!おやすみー!」
みんなに声をかけて3部屋目のダブルベッドの部屋に向かった。
モンスター討伐をはじめて資金に余裕が出たので、今は3部屋借りっぱなしだ。
それでも全然赤字にはならない。リフレットの町の宿は安かった。
ガチャ
扉を開けて中に入り、鍵を閉め、ベッドにティナちゃんを寝かせる。
リーン
すぐにサイレントのベルを鳴らして、ティナの上に覆いかぶさった。
「今日はティナ先生をわからせちゃうぞ」
「なにを言っておるのじゃ?」
「厳しくするとか言って、ホントにしごいてきたから。今度はオレがティナをわからせる番かなって」
「意味がわからんが、ソフィアが甘いときはわしが厳しくする。それがバランスというものじゃ」
「でも、オレは甘やかして欲しいのじゃ」
「はぁ…ダメな男じゃな。ほれ、夜はお主のいいなりじゃ…これでよいじゃろ?」
ティナがブラウスのボタンを開けてブラを見せてくれた。上目遣いで恥ずかしそうにしている。
「ティナ…」
たまらずにキスをする。すぐに応えてくれるティナ。
その日はティナとたっぷりと愛し合った。
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