第199話 我らがマスコットたち

「それじゃ、わたしたちはミリアの服を買いに行ってくるから」


「わかった、いってらっしゃ〜い」


「おにいちゃん…1人だと、寂しいと思うから…ぽかへい、おいてってあげる…はい…」


 抱っこされたぽかへいを受け取って、「ありがとうな」といいつつ頭を撫でた。


 ぽかへいはオレの腕の中で大人しくしている。


「ピー」


 そうしていると、コハルの肩からオレの頭にピーちゃんが飛び乗ってきた。


「お、ピーちゃんも相手してくれるのかー」


「ピー!」


「ありがとな、かわいいやつめ」


 みんなを見送った後、3人?、1人と1羽と1匹?になった。


「オレたちも町をぶらぶらするかー」


「ピー」


よじよじ


 ぽかへいは、抱っこされるのがイヤだったのか、オレの左肩によじのぼり、前を向いて、だるんと抱きついた。


「ピー?」

 その様子を頭の上から不思議そうに眺めるピーちゃん。


「あ、そっかそっか。いつの間に仲良くなったのか不思議だよな。実は、ぽかへいはオレの女になったんだ、みんなには内緒だぞ?」

 とピーちゃんに語り掛ける。


「ピー?ピ〜〜」


 ピーちゃんが頭から右肩に乗り移り、頬にすりすりしてきた。なんだか、すごく愛情を感じる。


 だから、「おぉ?ピーちゃんもオレの女になるかー?」なんて、冗談交じりに聞いてみた。


「ピー!」


「そうかそうか!ならなってくれると嬉しいな!」


「ピー!」


 嬉しそうに見えるピーちゃん。でも、今回ばかりは本当に意思疎通できているのか、怪しいもんだ。


 しかし、2人に好かれたような気がして、

「あはは!ハーレム♪ハーレムぅ♪」と上機嫌で町に繰り出す単純男なのであった。


♢♦♢


 町に繰り出してから、2人を肩に乗せたまま、ぷらぷらする。


 でも、リフレットの町は小さくて、昨日ある程度見たので、すぐに飽きてしまった。


「お昼ご飯、どうしようかなー」


「ピー」


「ピーちゃんはさー、スノーローズ鉱石以外に食べたいものないの?」


「ピー?」


 わからないらしい。


「ぽかへいはご飯いらないの?」


 …こくこく。

 いらないらしい、まぁぬいぐるみだしな。


「そっかー」


 なんだか、1人で食べるのも少し寂しく感じる。


「んー……あっ、そういえばミリアの村で倒した熊肉があったな。町の外で焼いて食べてみるかー」


「ピ〜」


♢♦♢


 メラメラ、ジュー…


 迷惑にならないように町の外に出て、七輪の上でイビルグリズリーの熊肉を焼く。


 火はピーちゃんにつけてもらった。


 ジュー…ポタ、ポタ、


 七輪からは、すごい濃厚な匂いが漂ってきて肉汁がたっぷりと垂れており、とても美味そうだ。


「う、うまそうじゃねーか…」


「ピー…」


 オレとピーちゃんは肉が焼けるのをじっくりと眺める。


 右肩のピーちゃんはよだれを垂らしていた。


 ぽかへいは片手で鼻を押さえて、遠目に見ている、どうやら臭いらしい。


「そろそろ、いいかな?」


 良い焼き加減に見えたので塩を少し振ってから箸でつまみ上げ、肉汁たっぷりの熊肉を口の中に放り込んだ。


「はむっ……おぉ!美味い!くどいけど!美味いぞ!野生的で!」


「ピー!」


 ピーちゃんが早く食わせろ、と言わんばかりにつついてくる。


「ピーちゃんも食べるの?」


「ピー!」


 精霊になってから、はじめてスノーローズ鉱石以外の食べ物に興味を持ったな。モンスターの肉与えても大丈夫だよな?と、一瞬躊躇する。

 でも、オレも食べたし、これでピーちゃんのご飯問題が解決するならラッキー♪と楽天的に考えて与えてみることにした。


「はい、どうぞ」


 ピーちゃん用に小さく切って、お皿を肩のあたりに持っていくと…


 むしゃ!むしゃむしゃ!


「ピー!」

 と美味そうに食べてくれた。


「おぉぉ!美味いか!?」


「ピー!」


 やった!ピーちゃんのご飯問題解決かもしれない!

 でも、なんでだろう?

 今までも何度も肉は焼いてたんだけど、と不思議に思う。


 そこで、「ピーちゃん、この肉は食べたい?」

 アイテムボックスから豚肉を取り出して見せてみる。


「ピー」

 首を左右に振った。


「ふむ?」

 ティナは精霊になったピーちゃんは魔力たっぷりのものを食べたがっている、と言っていた。

 つまり、モンスターの肉には魔力がこもっているのだろうか?


「あとで、ティナに確認するかー」


 焼き肉をおえて、七輪を片づけ、木陰に移動してくつろぐことにした。


 あぐらをかくと、ピーちゃんがそこに乗っかって、すやすやと寝始める。


「かわいいやつだなー」


 よしよしと撫でてやる。


 ………よじっ。


 それをみて、ぽかへいもオレの膝に乗ってきた。

 ピーちゃんの横で寝転ぶ。


「お?なんだ?急に可愛くなったな。よし、ぽかへいも撫でてあげよう」


 ぽかへいが寝てるのか、起きてるのかはよくわからないが、まったりしている2人を両手でよしよしと撫でて、のどかな時間をしばらく楽しんだ。

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