第192話 妹に教える-はじめての性教育-

 時刻は、ライたちが馬車職人のもとへ向かった数分後に戻る。



-ミリア視点-


「あの……ソフィアちゃんに…聞きたい、ことがあって…」


「なによ?」


 おにいちゃんたちが出かけて行った後、ミィはソフィアちゃんに昨日の夜のことを聞くとこにした。テントの中にはミィとソフィアちゃんの2人だけだ。


「えっと…あの…」


 昨日のことを聞こうと思った。

 でも…なんでか、わからないけど…すごく、恥ずかしくて、うまく聞くことができない…


「ぽ、ぽかへい…」


 腕の中のぽかへいに頼ってみたけど、じっと動かず、説明してくれない。


「なにか、聞きづらいことなの?」


「う…うゆ…」


「ソフィア先生ならなんでも教えてあげるわよ!」


 トンッ、とお胸を叩くソフィアちゃん。


 ソフィアちゃんなら教えてくれる。


 き、聞かないと……

 ミィはあれを見てから、ずっと変だ……ドキドキして…苦しくなって…身体が熱くなる…

 変になっちゃう…だから、勇気を出して、聞かなくちゃ…


「あ…あのね…き…昨日の夜…」


 ミィは勇気を出して目をつむって口を動かした。


「うんうん!……ん?」


「昨日の夜ね……ソフィアちゃんが…カーテンの…向こうを見て…」


「み!見てただけよ!見てただけなんだから!」


「え?……あ…あの…」


「た!たまたま!たまたま起きたら!ライのやつが!ななな!なんかやってて!!それをたまたま見てただけ!なにもしてないわ!!」


 ソフィアちゃんは、なんだか、すごく、あわてている…

 あっ、やっぱりソフィアちゃんも、ビックリしたんだ。


 ミィは仲間を見つけたような気分になって、少し安心した。


「う…うん……そうだよね…ビックリ…したよね……

 おにいちゃんたち…なに、してたのかなぁ?ソフィアちゃんなら…わかる?」


「え?……それは?えっと??」


「ミィも…おにいちゃんと、リリィちゃんのこと…見ちゃって…

 それで、ソフィアちゃんも、見てたから…相談、しようと思って…」


「な、なるほどね?つまり、わたしのことはしっかり見てなかったのね?」


「ソフィアちゃん…のこと?…ソフィアちゃんも、おにいちゃんたちのこと…見てた…よね?」


「そう!そうね!見てた!見てただけ!」


 ソフィアちゃんはなんだか安心したような表情になった。

 なにを気にしてたんだろう?


「えっと!あー!ライたちがなにをしてたか!?だったっけ?」


「う…うん…ソフィアちゃんは、わかる?」


「わかるけど……え?ミリア、わからないの?」


「ミィ…わからない…」


「ミリアって、わたしと同い年よね?」


「うん…そうだよ?」


「そ、そっか…箱入りだったのね…」


「はこいり?」


「ううん!なんでもないわ!えっと、あれは…えーと…なんていうか。あれよ!愛を!確かめあってた的な!?」


 ソフィアちゃんは指を立てながら説明してくれる。


「あい?……」


「そうね!お互いのことを好きだよー!って、確認し合う!みたいな!?」


「そ、そうなんだ…」


 ソフィアちゃんがせっかく説明してくれてるのに、ミィにはよくわからなかった。


「あ〜〜……あとは、赤ちゃんを、作るため、でもあるけど、わたしたちは避妊してるから、今は妊娠はしないわ」


「赤ちゃん……を、作る?」


「えっとね、ミリアはお母さんから生まれたってのは知ってるわよね?」


「う、うん…」


「つ、つまりね、ミリアのお父さんとお母さんが、昨日のライたちみたいなことを何度もすると、赤ちゃんができるの。

 (小声)わたしなに説明してんだろ…」


「あ、赤ちゃん……あれをすると…赤ちゃんが……

 お、おとうさんと…おかあさんが…あ…あれを??

 ……う…うー……」


 あたまが…クラクラしてきた…


「だ!大丈夫!?」


「う…うゆ……そ、それで…なんで…今は、赤ちゃん、できないの?」


 がんばって聞かないと……ミィ…変になっちゃう…


「それは主従契約の効果ね、旅の途中で赤ちゃんができると困るから。あ、でも、ライは落ち着いたら、ちゃんと作ってくれるって言ってるわよ」


「にゃ…にゃるほど??」


 ミィが、知らないことを、たくさん、言われる…む、むずかしい…


「え、えっと…じゃあ…昨日…の夜は、おにいちゃんと、リリィちゃんが…お互いを好きだよ…って、確認するために…してた…の?」


「ま……まぁ??そんなところかしら??」


 なんだか、ソフィアちゃんは恥ずかしそうだ。


「そ…そっか…」


 なんで、恥ずかしそうにしてるんだろう?

 ……もしかして…


「あ…あにょ……も、もしかして…」


「う…うん…」


「そ、ソフィアちゃん…も?……したこと…ある…にょ?…」


「……ある…わよ…」


「はわっ……」


「何回も…してる…」


「はわわ……」


 コクリ。

 喉がなる。


 ソフィアちゃんも、なんだ…どんな感じなのか、す、すごく気になる…


「ど!どんな!!……かんじ、なの?」


 つい聞いてしまう。


「ど、どんな!?えーっと…」


「お!教えてほしい!な!……はぁはぁ」


 ぽかへいをぎゅっと抱きしめて、ソフィアちゃんの答えをまだかまだかと待った。


「どんなって…その……す、すごく…」


「す、すごく?…」


「き、気持ちぃ…のよ?」


「はわわ……気持ちぃ…んだ……ど、どう…気持ちぃ…の?」


「ど、どう?……そ、それは…してみないと、わからないわよ」


「し、してみないと……あ、あにょ!…ミィにも…できるかな?

 おに、おにいちゃんと!!はぁ、はぁ、はぁ……」


 そう質問した途端、胸がドキドキして熱くなった。


 なんか、ぽかへいが暴れ出したけど気にならない。

 ぎゅっと抱きしめる。


「で、できるわよ…もちろん…」


 ミィにもできる。

 おにいちゃんと。


 昨日のおにいちゃんとリリィちゃんを思い出す。


 あ、あれを……ミィと、おにいちゃんが…


 身体がどんどん熱くなっていった、知りたい、もっと知りたい。


「どうやって!お、教えてほしい!です!ソフィア先生!」


「え?えーっと、教えるって…えっと…」


「だ…だめ?…」


 困り顔のソフィアちゃん、教えてくれないのかな。

 ミィにはまだ早かったのかな。


 そう思うと悲しくなって、下を向く。


「だだだ!だめじゃないわ!ちょっと恥ずかしくて……うん、わかった、ちゃんと教えてあげるわね」


「う!うん!ありがと!ソフィアちゃん!!」


 ぱっと顔を上げて、ソフィアちゃんが言うことを全部聞き逃さないようにと必死になって聞いた。


 たくさん、たくさん知らないことを聞いた。


 その日、ミィは、ミィが知らない、たくさんのことを、ソフィアちゃんから教わった。

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