第191話 嫁のアイデアはなるべく取り入れたい
馬車のデザインについての打合せが終わったので、3人でテントに戻ることにした。
「しゅーん…」
隣のステラは、見るからに凹んでいて、下を向いてとぼとぼと歩いている。心配なので手は握っているが、なかなか元気になってくれない。
「えっと…なんか、ごめん…」
「いいんです…そうですか…サーカス……私って…センスなかったんですね…」
「いや!ステラのご飯は世界一美味しいからセンスはあるよ!盛り付けもキレイで食欲が膨らむし!センスの塊だよ!ね!リリィ!」
リリィもうんうんと頷いてくれる。
「そうですよ、ステラの料理は最高です。人には向き不向きがありますから」
「むき、ふむき……しゅーん…」
「あ…えっと…そういう意味じゃ…」
あぁ…リリィさん、やってしまった…トドメだ。
「しくしく……」
わかりやすい嘘泣きをするステラ、涙は出ていない。でも、悲しそうではあった。
テントに着いたので、リリィが淹れてくれたお茶を飲んでまったりすることになった。
凹んでるステラを横に座らせて身体を寄せる。
「ライさん……」
「なぁに?」
「センスが終わってる私でも…愛してくれますか?」
「終わってるなんて思わないし、ステラの全部を愛してるよ」
「はい…」
ぎゅっと、左腕に抱き着かれた。
ステラのそれはもう豊満な胸が押しつけられる。
ゴクリ…
いや、今は違うよね、うん、絶対違う。
強い理性を持って、頭を撫でてやることにした。
「しくしく…」
しかし、なかなか機嫌を直してはくれない、どうしたものか…
「おーい!ちょっといいかー!」
困っていると、テントの入口の方から、クールスさんが呼ぶ声がした。
「はーい!なんでしょー!あ、中にどうぞー!」
「わるいな!このテントだって聞いたからよ!」
クールスさんが靴を脱いでこっちにやってきた。
「さっき、おまえさんが言ってたペガサスの羽のデザインってこんな感じでいいか?」
「……え?」
クールスの言葉に、ステラが驚いた顔をしているが、一旦ほっておく。
「あ、いい感じですね、これでお願いします」
クールスさんのラフ画をみて答える。
「わかった!なら、このデザインで木彫りして白く塗ってから馬車のこの辺りにつける。それでいいよな?」
馬車の後輪の上、その少し後ろに、手のひらくらいの翼が描かれる。
「いいですね、その辺りでお願いします」
「あとは、車軸は金ピカにしといてやるからよ!」
「ありがとうございます」
車軸くらいなら、パッと見目立たないし、豪華すぎるようには見えないだろう。
「あぁ、あと、座席に使うステッチはピンクがいいんだったよな。サンプルを持ってきたから、このあたりから選んでくれ」
ピンクっぽい色の糸を、何種類か渡してくれる。
「ステラ、どの色が好き?」
オレは受け取ったサンプルを隣のステラの前に差し出しながら質問する。
「え?えっと……これ…」
ステラは、1番明るいピンクを指差した。
「では、これでお願いします」
「わかった!じゃあこれで進めておくぜ!おまえさんはいいセンスだな!くっくっ!」
クールスさんが余計な一言を言い残して笑いながらテントを後にした。
「ら…ライさん、いまのって……」
ステラがうるうるしながら、オレの方を見る。
「うん、なるべくステラのアイデアを取り入れたくてさ。はは、ホントは完成したときに見せて、驚かせようとしたんだけど、すぐバレちゃったね」
あはは、と照れくさくなって、頭をかいた。
「ライさん……ライさん!ライさん!」
「ん!?」
抱きつかれて、そのままの勢いでキスをされる。
「ライさん!大好き!大好きです!」
首に抱きつかれて、激しく、なんどもなんども繰り返すようなキスがはじまった。
「…わたしは外に出てますね」
リリィが優しい顔でテントを後にしてくれた。
そのついでにサイレントのベルを鳴らしていってくれる。
「好き!すきすき!愛してください!愛してほしいです!」
ステラの目はすっかり♡マークだった。
なんども好きと連呼され、愛されていることを実感する。
「うん、オレもステラが大好きだよ」
目がハートになってるステラは、興奮した様子で、ぶるんっと上着を脱いで、オレの上着も脱がし始めた。
「はぁはぁはぁ、ライしゃん!ライしゃん!」
今度はオレの身体を舐め回すステラ。
その様子を見ながら、頭を撫でてやる。
「だいしゅき!だいしゅきなんでしゅ!」
「うん、うん、ありがとな、オレも大好きだよ」
「す、すごい、おっきくなってましゅ」
はぁはぁと荒い息でステラがオレを握る。
「た、食べていいですか?」
「もちろん、してほしいな?」
「はい!」
すぐに下も脱がされて食べられてしまった。
「あっちゅあちゅでしゅ」
そろそろ反撃しよっかな。そう思い、ステラの身体をまさぐりだした。
すると、すぐにステラは準備万端になった。
「はぁはぁ、もう我慢できません…」
「オレもだよ」
「い!いきますね!」
「うん」
最初は、興奮しているステラに任せることにした。
オレはそのまま床に寝転がる。
間もなくして、ステラがオレの上に乗ってきた。
こうして、ステラの愛を満喫する。
ちょっとキザなことをしたご褒美がこんなに愛情あふれるお返しだなんて、すごく得をした気分だった。
そのまましばらく楽しんでいると、ステラが落ち着いたころには、すっかり空は赤くなり、気づけば夕食時であった。
ご飯の前にたっぷりデザート食べちゃったな、うん、贅沢だ。
オレはそんなことを考えながらタオルで身体を拭いて、ステラと一緒に夕食の準備に取り掛かることにした。
♢
「うふふ♪ライさん♪ライさん♪ラ~イさんっ♪うふふ♪」
料理中もステラはずっとご機嫌だった。
オレたちは料理をしながら、また好き好き合戦をはじめて、その様子を遠目から見ている何人かはちょっと恥ずかしそうにしていた。
そして、ステラとイチャイチャしながら作った夕食は、いつにもまして豪華なものができあがったのだった。
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