第185話 ツインテ妹にプロポーズ

 オレたちはミリアを村から連れ出すのに成功し、遊牧民の滞在地に向かっていた。


 そう、遊牧民のところへ行って、馬車と馬を手に入れるのだ。

 それが当初の目的だった。


 うん、ミリアのことで頭がいっぱいで、ほとんど忘れかけていた目的だけど。


 村を出たからには、本来の目的に向かって動くのが当然だろう。


 今は、ぽかぽか陽気の中、草原をミリアと手を繋いで歩いている。


「おにいちゃん……」


「なんだい?ミリア」


「すき…」


 かわ…

「オレも大好きだよ!」


「ミィの方が…すき…」


「こればっかりは負けないぞ!」


 オレは愛おしさが我慢できなくなって、ミリアの脇を抱えて持ち上げる。


 そして、そのままクルクルと回った。


「ミィも…だいすきなの…負けない…よ?」


 オレの腕の中に、笑顔のミリアがいた。

 可愛い。

 天使だ。


「えへへ…」

「あはは!」

 とやっていると、


 ゲシゲシッ!

 と、ぽかへいに足を蹴られた。


 ゆっくりと回転を止め、下を見る。


「……なにかね?ぽかへい君」


 一旦、ミリアを地面に下ろす。


 ぽかへいは、まだゲシゲシとオレの足を蹴っていた。


「ぽかへい、おにいちゃんのこと…蹴ったら、だめ…」


 ミリアがぽかへいを抱き上げると、大人しくなってミリアの胸に張り付いた。顔はオレの方を見ている。

 〈ミリアは渡さない〉そう言われてる気がした。


 ……このクソウサギが!!


 ふぅ……

 一旦落ち着け、be cool、ビークール……ビーチク?


 キレかけて頭がおかしくなっているのだろうか?

 いや、オレは正常だ。


 とにかく、このクソウサギをどうにかしないとミリアとイチャつけない。

 誰かどうにかしてくれないだろうか。


「そういえば、ライさんのこと、おにいちゃんって呼ぶことにしたんですね」


 誰かに助けを求めようと思ったら、ステラが別の話題を話し始める。


「うん…おにいちゃんに…なってくれるって、言ってくれたから…だから、おにいちゃん」


「そうですか♪よかったですね♪」


「うん…うれしい」


「そういえば、ミリアの村では苗字はないと言っておったが、兄妹ならば、ライの苗字をやってはどうじゃ?」


「苗字を?なるほどね。ミリア・ミカヅチか。ふむふむ、ミリアはどう思う?」


「ミリア・ミカヅチ?……いいの?…おにいちゃんの苗字…もらっても…」


「ミリアが喜んでくれるなら、ぜひ貰ってほしいな!」


「うれしい……じゃ…きょうから……ミィは、ミリア・ミカヅチ…えへへ…」


 すごく嬉しそうに笑ってくれる。


「そっかそっか!オレも嬉しいよ!貰ってくれてありがとな!」


 ミリアの頭をよしよしと撫でる。そして、手を繋ぎ直して、歩き出す。


「ふーん……そう…ミリア・ミカヅチ、ね…」


 なんだか、ソフィアが面白くなさそうな顔をしていた。


「ソフィアたんも、ソフィア・ミカヅチにするかい?」


「は、はぁ!?なに恥ずかしいこと言ってんのよ!!」


 腕を組んで、ふん!とそっぽを向いてしまう。


 恥ずかしいことなのだろうか?


「素直じゃないですね〜。私は、正式に結婚式をあげたら、ステラ・ファビノ・ミカヅチにしてもらいますね♪」


「もちろんだよ、今すぐでもいいよ?」


「楽しみは後に取っておく、って考えもあるんですよ♪」


「な、なるほど?」


「わたしは、苗字がどうであれ、全てをライ様に捧げています」


「ん〜、なんか、えっちですね。さすがリリィです♪」


 同感だ、でも黙っておこう、ご愁傷様です、ステラさん。


「……ステラ、少し話をしましょうか」


「あっ……えーと!リリィ!悪気はなかったの!」


「いいから、こっちに来なさい」


 ニコニコしてるリリィにステラが連行されていった。


「ボクの場合は、コハル・カグラザカ・ミカヅチ、かな?」


 えへへ、とコハルが話しかけてくる。


「いいね、そうなってくれるとオレも嬉しいな。

 ところで、みんなの国では、自分の苗字を結婚相手の苗字に直すっていう文化はないの?今聞いた感じだと、自分の氏名の一番後ろに結婚相手の苗字を繋げるのかな?

 だとすると、オレの苗字って、みんなの苗字全部と繋げると、めっちゃ長くなるけど…

 ライ・ミカヅチ・クローバー・アメジスト・ファビノ・ノア・カグラザカ?」


「それは、国によって好きずきだと思うわよ」


「そうなんだ?」


「わしの場合、一応王族じゃから、苗字は変えれないのじゃ

 ……わるいのう…」


「ううん、悪いなんて思わなくていいよ。苗字がなんであれ、ティナはティナだ。そのままのティナを愛してるよ」


「…恥ずかしいやつじゃ…しかし、そう言ってもらえると嬉しいものじゃのう。ありがとなのじゃ」


 笑顔のティナにキュンとくる。


「手、繋ごうよ」


 あいてる右手を差し出すと、ティナは握ってくれた。


 左右に花だ、楽しいオサンポである。


 オレとオサンポしよ🐕🐕🏃

 (要Google翻訳)



「……おにいちゃんは……みんな…と、結婚…してる、の?」


「うん!そうだよ!みんな大好きなお嫁さんだ!」


「……そうなんだ…」


 下を向いて、なんだか悲しそうにしてしまうミリア。


 あ、あれ?ミリアに説明してなかったっけ?


 キョロキョロとみんなを見渡すが、みんなも、〈あれ?そうだったっけ?〉って顔をしている。


「あの…ミリアはオレたちのこと…」


「……おともだち…だと…おもって…た…」


「そ、そうか、そっか……えっと、ミリアのことも大好きだよ?」


「うん……ミィは……いもうと…だもんね…」


 暗い顔になっていくミリア。


「ティ、ティナ、ちょっとごめん」


 ティナに断って右手を離す。


 ミリアに向き合って、左手はそのままミリアの手を握り、右手で肩を持って、ミリアの前にしゃがんだ。


「ミリア」


「……なぁに?」


「ミリアのことが、1人の女性として、大好きだ。

 がんばってるミリアも、ちょっと悪い子なミリアも愛してる」


「うん……」


「一生一緒にいる。絶対離さない。

 だから、オレと結婚してくれないか?」


「……え?

 ……でも、ミィは…いもうと…で…」


「ミリアは、大事な妹だ。

 でも、お嫁さんにもなって欲しい。欲張りなおにいちゃんでごめんな」


「……いいの?……ミィも、お嫁さんになって…」


「もちろんだ!なってくれると、オレは最高に幸せだ!」


「…な、なる!ミィも!おにいちゃんのお嫁さんになりたい!」


「そっか!そっかそっか!ありがとう!一生幸せにするからな!」


 ミリアを抱っこして、またクルクルと回った。


「おにいちゃん!大好き!」


「オレも大好きだ!!ミリア!!愛して!へぶっ!」


 ぽかへいが、ミリアの腕から飛んできて、オレの顔面にドロップキックをかました。


 幸せの絶好調だっただけに、怒りがふつふつと湧いてくる。


 こ、このクソウサギ、煮て食ってやろうか…


 ミリアを地面におろしたら、ぽかへいへの説教がはじまった、ざまぁ。


「ぽかへい!やめなさい!ごめんなさい…は?」


 腕を組んでツーンとしてるぽかへい。


 反省しろ、反省、ばーか。


「ごめんね…おにいちゃん…よしよし…」


 ぽかへいに蹴られたところを撫でてくれるミリア。


「いたいのいたいの、飛んでけ〜。

 ……ちゅっ」


 蹴られたホッペにチューしてくれた。


 突然のチューに呆然とする。


「ミリア?」


「……だいしゅき」


 上目遣いで片手で口を隠して、そんなことを言う。


 か、かわいすぎかよ…


「あ、ありがとう、もう全然痛くないよ。

 …んふふ。オレも大好きだよ」


 やばい、変な笑い声が出てしまった。

 自制しなくては…


 気を引き締めてから、よしよしと、ニコニコと、ミリアを撫でた。

 あー、今すぐキッスしたい。


 オレたちがイチャつくのをみて、ぽかへいはつまらなそうにズンズンと歩いていって、ソフィアの足につかまった。


「ん?あんた、どうしたのよ?」


 ソフィアに抱え上げられると、そいつはソフィアたんの胸に張り付いた。


「あら〜、なんかされたんでちゅか、よちよち」


 ……あのクソウサギが…まぁ、しばらくほっといてやろう…


 あんなクソウサギのことは一旦忘れ、目の前のツインテ美少女を抱っこする。


「わわ……お姫様だっこ…うれしい…」


「ミリアはかわいいなぁ、こんなかわいいお嫁さんができて幸せだぁ」


「ミィも…かっこいいおにいちゃんの…お嫁さんになれて…幸せ…」


 最高かよ…


 オレは、こんなに可愛くって、ふわふわで、優しい妹を、新しい幼妻として迎えた喜びを噛み締めることにした。

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