第180話 悪人の末路
-主人公視点-
ミリアの家に帰ってくると、すでにみんな眠っていた。
起こさないように気を付けて、寝巻きに着替えてからミリアの部屋に向かい、布団に入る。
ミリアとステラも寝ているようだ。オレは、ミリアは見ながら、さっきの村長と息子の会話を思い出す。
こんないい子をひどい目に合わせたあいつらは絶対許せない。
それに、あんなクズのせいでミリアがたくさん辛い思いをしたかと思うと、すごく苦しかった。
オレは、そんな気持ちでいっぱいで、その日はなかなか寝付くことができなかった。
♢
「ライさん!ライさん!」
「ん?んん…ステラ?どうかしたの?」
「ミリアがいません!どこにも!」
「え?…ミリアが!?なんで!?」
オレは飛び起きて周りを見る。隣の布団には当然ミリアはいなかった。
「今の時間は!?」
「まだ朝です!家の周りはみんなで探しましたが、どこにもいません!」
「わ、わかった!オレも探す!」
すぐに着替えて外に出た。
外は曇り空だ。朝のはずなのに、薄暗かった。
「ティナ!昨日のこと!ミリアに伝えてないよね?」
「もちろんじゃ!あんなむごいこと、あの子には言えぬ!」
「なんの話ですか?」
みんなが集まってきたので、昨日のあいつらの会話を説明する。
「許せない……ボク、許せないよ!!」
「あのクソジジイ!!燃やした方がいいんじゃない!!」
みんながみんな、ミリアのために怒ってくれた。
「オレも同じ気持ちだ!でも今はそれよりもミリアだ!このタイミングでいなくなったってことは、たぶん昨日の会話をミリアも聞いた、と思って行動しよう!みんなならどうする!?」
「わたしなら復讐にいくわ!」
ミリアのような大人しい子が復讐をしようとするのか、想像はつかない。
でも、唯一の肉親を手にかけられたら、そういう行動に出てもおかしくはない。
「わたしなら……辛い現実を受け入れれなくて、とにかく遠くに行くかもしれません…」
そっちの方がイメージはつく。
遠くに、というのが不穏なことを想像させるが、絶対そんなことはさせない。
ミリアはオレと一緒に来るんだ。
「3組に分かれよう!オレとソフィアは村長の家に!リリィとステラで村の出入り口を!コハルとティナは墓地を見てきてくれ!」
みんなが頷くのを見て、すぐに走り出した。
もし、村長の家に向かったのなら、急がないとまずい。
ミリアだけで大人の男2人をどうにかできるとは思えないからだ。
もし、包丁でもつきつけようものなら、返り討ちに合うイメージしか浮かばなかった。
ダンダンダン!
村長の家にはすぐに着いたので、そのままの勢いで扉を叩く。
ダンダンダン!
あと10秒して開かなかったら、蹴り破る!
そう思っていたら、ガチャリと扉が開いた。
若い女性であった。
「あ、あの…なにか?」
「ここにミリアは来ませんでしたか!?」
「ミリアちゃんですか?来ていないと思いますが…」
「今、家には誰がいますか!?」
「村長と、息子さんと、村長の妻が3人…です」
オレの剣幕に素直に答えてくれたようだ。
「失礼します!」
その女性を押し退けて家の中に入る。
「あ!あの!困ります!」
後ろからそんな声が聞こえてくるが、お構いなしだ。
リビングらしきところに入ると、ジジイと息子、それに若い女性が2人いた。
「ほ?なにか御用ですかな?旅の人、物騒なことだ」
村長が息子に目配せすると、そいつは立ち上がり壁にかけてあった剣をとった。
「こちらにミリアは来ていないでしょうか?」
「ほっほっ、来ておりませんよ?」
笑っている、本当のことを言っているのかわからない。
「真面目に答えてください」
「いたって真面目ですが?」
「そうですか。しかし、ミリアの両親を死に追いやった人の言うことは信用できませんね」
「……なんのことでしょう?」
村長から薄ら笑いが消える。
「昨日の夜、あなたたちが井戸の前で話していたことです」
「ほ……めんどうなことになりましたなぁ…」
「そうですね、このクソヤロー」
「おいおい、この村では村長が絶対なんだぜ?あまりデカい口聞くなよ?」
「うるせーよ、殺されたくなかったら黙ってろ」
「……」
オレが剣を抜いたことで息子は黙る。
「ミリアは本当にここには来てないんですね?」
「そうだと言ってるでしょう?」
「ソフィア、家の中の人数ってわかる?」
「うん、この家にはさっき聞いた人数しかいないわ」
「わかった、ありがとな。本当のようなので失礼します」
オレは踵を返して去ろうとする。
今は、今だけは見逃してやる。
「無礼な小僧だ……」
そんな捨て台詞、放っておけばいい。
でも、無理だった。
オレは、もう一度振り返り、ズカズカと近づいて、クソジジイの顔面を思いっきり殴る。
「ゴガッ!?」
殴られたジジイの顎は砕け、その身体は窓を突き破って外に放り出された。
「親父!て、てめぇ!!」
息子が斬りかかってきたので、剣を握っている右腕を根本から斬り飛ばした。
「へあ?」
そいつは何が起こったのか、最初理解できなかったようだ。
そのあと、断末魔が聞こえてくる。
うるせーな、としか思わない。
そこに残っている女性3人は怯えていたが、気の毒に感じて話しかける。
もしかしたら、ミリアと同じような境遇なのかも、と思ったからだ。
「あなたたちが望まぬ結婚を強いられているなら逃げても大丈夫です。こいつらはもう終わりだ」
そう言い残して、ジジイの家を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます