第172話 重力魔法とお人形
畑仕事が終わってミリアの家に帰ってきたら、いつも通り魔法勉強会を行っていた。
「ほれ、がんばるのじゃ」
「うーん…うーん…」
ティナ先生が応援してくれるが、オレは頭を抱えて魔導書とにらめっこ中だ。
難しい…ツラい…
そんな勉強ギライのオレの隣では、ミリアが重力魔法初級の練習中である。
小さい杖を持ち、くるりと杖を振るミリア。杖の先には、テーブルに座らされたぽかへいがいた。
「むー!…むー!…浮いてー!…浮いてー!…」
ミリアが重力魔法を何度か唱えると、ぽかへいが宙にぷかぷかと浮きはじめた。
「あっ!浮いた!ぽかへいが浮いたよ!ソフィアちゃん!」
「やるじゃない!すごいわ!もう重力魔法をマスターするなんて!」
「おー!もう出来たのか!ミリアは天才だなー!」
頭を撫でる。
「ホントに!?ミィはすごい子!?」
「うん!すごいよ!だよね!ソフィア!」
「そうね!わたしからもお墨付きをあげるわ!ミリアがわたしの一番弟子ね!」
「い…1番?……ミィが、1番なの?」
「そうね!今までわたしが教えてきた中で、ミリアが1番覚えるのが早いわ!」
「たいしたものじゃな!」
「ミィが…1番……うれしい!」
ぷかぷかと浮く、ぽかへいを眺めながら、ソフィアの一番弟子に就任したミリアは満面の笑みを浮かべていた。
そんな様子をみて、1番弟子の座を奪われたことを少し嫉妬した自分が恥ずかしくなる。
まぁ、そもそもソフィアに〈あんたがNo.1よ!〉とか言われた覚えないけど。
「よかったな!ミリア!」
「うん!ぽかへいもありがとね!」
「うんうん、ミリアは頑張り屋さんだね」
ミリアがぽかへいと会話しはじめた。ちなみに、ぽかへいの声担当もミリアだ。腹話術にはなっておらず、声色を変えているだけだった。
だから、おぉ幼児退行か?
と少し心配になってしまうが、まぁ大丈夫だと思いたい。
楽しそうにぽかへいと会話するミリアのことを眺める。そこで、妙な違和感を覚えた。
重力魔法で動いてるはずなのに、なんだか、ぽかへいが自分の意志で動いてるように見えたのだ。
「うんうん!でもぽかへいが一緒にいてくれたからだよ!」
「そんなことないよ、ミリアが頑張ったからだよ。ソフィア先生、ミリアに魔法を教えてくれて、ありがとう」
ぺこり、ぽかへいがソフィアにお辞儀する。
「へぇ、こんなに細かく動かせるなんて、才能あるわね」
ソフィア先生も興味深そうにぽかへいのことを覗き込む。
「なんだか、不思議な感じじゃのう」
ティナ先生も気になるようだ。ぽかへいの周りをウロウロして、観察していた。
やっぱ、なんか違和感あるよね?そうだよね?
と相談しようと思ったが、ミリアの喜びに水を差すような気がして、一旦我慢する。
だから、黙ってジッとぽかへいを見ていると、なぜかその黒い瞳と目があったような気がした。
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