第171話 妹は手を繋ぎたいし人形で遊びたい

 ミリアが毎日墓地に通いはじめて4日が経った。


 ミリアからは、一緒に村を出てもいい、という回答はまだ得られていない。


 それでも、みんなで話し合った通り、早く村を出よう、なんて焦らせるようなことは言わず、いつも通り、ミリアと一緒に過ごしてきた。


 そんなミリアの好感度を攻略スキルを開いて確認する。

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ミリア

 好感度

  92/100

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 好感度は順調に上がっていて、高い数字を維持している。


 でも、カンストには至らない。


 やはり、ミリアが気にしている何かを解決しないと村からは出たくないようだ、と考える。


 う~む、ミリアはこの村に残って何をしたいのだろう。

 なんどか、やんわり質問してみたが、本人から明確な回答は教えてもらっていない。


 まぁでも、きっとそのうち教えてくれるよね。

 なんせオレはミリアのお兄ちゃんだから!

 と、謎のポジティブを発揮して頭を切り替えることにした。


 今日も朝ごはんを食べたら、畑仕事に出発だ。



「ね…手…繋ぎたい…」


 家を出て農具を持ったところで、ミリアがかわいいおねだりをしてくれた。


「もちろん!オレも繋ぎたいな!」


「うん…はい…」


 ミリアが右手を差し出してくれる。


 オレは左手でギュッと握り、農具を右手に持って歩き出した。


 はじめて墓地に行った日から、たびたびミリアから手を繋ぎたいと言ってくれるようになった。

 これはいい変化だ。関係が一歩前進したような気がする。

 それに、すごく幸せだ。


 ミリアのちっちゃくてかわいい手をにぎにぎしながら歩いていく。

 

 ミリアの方を見ると、左腕にぽかへいが抱えられていた。そういえば、ミリアがぽかへいを抱いている時間も増えたような気がする。

 以前は家の中だけだったのに、最近はよく外にも連れ出している。


 これはどういう変化なのだろうか?

 なぞだ。

 幼児退行しているわけじゃないよな?



「今日は…収穫だって…」


 畑につくと、ミリアが畑の持ち主から指示をもらってオレたちに教えてくれる。


「そっかそっか!またコハルと競争かな!」


「またボクが勝っちゃうぞー!」


 なんて、いつものやり取りをはじめるオレたち。


「今日は負けないからな!」


「そう言って、いっつもボクが勝ってるじゃんか!そろそろなにか景品もらってもいいんじゃないかな!」


「おぉ、たしかに景品あった方が燃えるかもな!もちろんいいぞ!」


「よーし!なに買ってもらおうかなー!」


 ふむふむ?

 なぜキミが勝つことが前提なんだい?

 負けたキミにはどんなエッ…なことをしてもらおうかなぁ?


 ニンマリ

 脳内でコハルをどうこうすることを考えているうちに、「よーいドン!!」と、コハルが一足先に収穫をはじめてしまう。


「あ!ズルいぞ!」


「ずるくない!集中してないライが悪い!」


「この!待て待て!」

 オレは必死にコハルの後を追った。



 そして、無事敗北した。

 コハル強し、さすがの運動能力だ。

 く、くやしいです…


「なに買ってもらおっかな~♪」

「ピ~♪」


「ピーちゃんはなにがいい?」

「ピーピー」


「なるほどなるほど、なんか豪華ですっごいもの、ふむふむ。だってさ!ライ!」


「あい……仰せのままに…」


「ピーピー」


「うんうん、それか面白い芸を披露してくれてもいいよ!だって!ライ!」


「鬼畜やん…」


 敗北者のオレは、無様な姿でコハルとピーちゃんの要望に答えることになった。


 その晩、ミリアの家の前でファイアーリンボーダンスを披露することになったのは、ちょっとした小話だ。

 …まぁ、詳しく話したくないだけだけど…

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