第165話 美少女にお兄ちゃんって呼んでもらうのが夢なのはおかしいですか?いいえ?おかしくありません、むしろ常識です
-魔法の勉強会をはじめて6日目-
今日もサクっと畑仕事を終わらせて、昼過ぎにはみんなで家に帰ってきていた。
昨日の魔法勉強会の続きをはじめる。いつも通り、生徒2人、先生2人の体制で食卓に座る。
「今日はついにライトの魔法を発動するところまでやってみましょう」
「は!はい!」
「て言っても、昨日の魔法陣が上手くいったから、ライトはすんなりできると思うわ」
「そういうものなんだ?」
「ええ、ライトは光属性の魔力を空中に留めておくだけで発動するから。昨日の魔法陣への魔力供給を何もない空中でやればライトになるわ」
それって初心者にとっては簡単なのか?と疑問に思うが、神様にスキルとして魔法を授かったオレにはわかり得ない感覚だ。
なんだか申し訳なく感じる。
ズルしてごめんなさい…
「うん…うん…なるほど…」
隣のミリアはソフィア先生の言葉を頑張って聞いていた。
「じゃ、さっそくやってみましょ。触媒として杖使うといいわよ、はい」
「うん、ありがと…ソフィアちゃん…」
ミリアが練習用の小さな杖を受け取る。この前も使ったハリポタに出てきそうな小さい杖だ、先端に白い宝石がついている。
「じゃあ、やってみて。光属性の魔力を練って、空中に放出しながらライトって唱えるの」
「うん……ラ…ライト!」
ブンッ!
力いっぱい杖を振るミリア。力をこめるときの癖なのか、また目をつむっている。
特に何も起きない。
「力みすぎじゃな。どれ、また肩を揉んでやろうかの」
ティナが立ち上がり、ミリアの後ろに回り込む、座っているミリアの肩を持ってもみもみしはじめた。
「力を抜いて、目を開けてやればよいのじゃ。おぬしには才能がある。大丈夫、大丈夫じゃ」
「う…うん…ティナちゃん、ありがと…がんばりゅ…」
そして、深呼吸してから、再度ミリアが杖を構え、
「ラ…ライト…」
と詠唱すると、杖の少し上あたりの空間にまばゆい光があらわれた。
その光の球体は、杖の先端付近で安定して光を放っている。
「わ!わぁ!光った!光ったよ!ソフィアちゃん!ティナちゃん!光った!」
それを見て、ミリアは大はしゃぎだ。
「すごいわ!!はじめて1週間もせずにできるなんて!ミリア!あんたやっぱり天才よ!」
「ほ!ほんとに!?わぁーい!!」
ミリアは無邪気に嬉しそうにしている。
満面の笑顔だ。今までで一番はしゃいでいるように見えた。
その笑顔がすごく嬉しくって、自然とミリアの頭を撫でていた。
「ミリアは天才だな!それに勉強もがんばったし!えらい!ミリアはすごい!」
「えへへ……ありがと!!おにいちゃん!!」
お……
おにいちゃん!?
おにいちゃんだと!?
「お、おぉぉ……」
突然のお兄ちゃん呼びに、オレは感動して変な声を出していた。
「あっ!?ご…ごめんなさい……つい……」
お兄ちゃん呼びが恥ずかしかったのか、赤くなって下を向いてしまうミリア。
「えっ!?いいよいいよ!むしろ嬉しいよ!もっと呼んでほしいな!!」
もっと呼んで!お願い!
プリーズコールミー!
お兄ちゃん!
Say!
「ううん……ごめんなさい……ライ…さん…」
しゅーん…
お兄ちゃんだもん…
オレはライじゃない…お兄ちゃん…
オレはしょんぼりと凹む、何も返答できない。
「……なぜ、ライのことを兄と呼んだのじゃ?」
アホのオレのことを不憫に思ったのか、ティナがそのことに切り込んでくれる。
「……えっと…お母さんが…よく、言ってたから……
ミリアにお兄ちゃんがいたら、守ってくれたのに…って…」
「ふーん、それで、こいつが兄貴っぽかった?ってことかしら?
う~ん?守ってくれそうかしら?むしろ、襲ってきそうだけど?」
ソフィアさん?なに言ってるんですか?
ふむ、今晩襲ってくださいってことでしょうか?
オレは顔をあげ、クソガキのことをジックリと眺める。
「そんなことないよ!ライさんは!すごく優しくしてくれて!たくさん褒めてくれて!その!……だから…お兄ちゃんがいたら…こんな感じなのかなって…」
「そ!そっかそっか!じゃあ!本当の兄貴みたいに思ってくれていいからね!」
「う…うん…わかった…」
プリーズお兄ちゃん!!
セーイ!!
期待の眼差しを送る。
「……」
黙っているミリア。
言ってくれないらしい……
くっ、もっと欲しかったのに……
「いいから、あんたは自分の勉強してなさい」
「はい…」
ソフィア先生に怒られたので、オレは自分の勉強を再開する。
ソフィア先生がミリアに授業をしている間、すきま時間でティナ先生に重力魔法上級の指導をしてもらっていたのだが、今のところ全くできる気配はなかった。
でも、今回の勉強会はミリアと一緒に基礎について聞いている時間の方が長いので、そこまで辛いという気持ちはない。
だがしかし、重力魔法の魔導書をみると、それだけで頭が痛くなってくるようにはなってきた。
勉強キライ……
はぁ…もう一回…おにいちゃんって言ってくれないかなぁ…
オレの頭の中はそのことでいっぱいだった。
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