第164話 ロリ魔女先生のお墨付き
ミリアのお家に帰ってきたので、5日目の魔法勉強会の準備をする。
ソフィア先生が魔導書をアイテムボックスから取り出し、食卓の上に並べていた。ステラとリリィは台所でお茶や飲み物を用意してくれているようだった。
オレの服を掴んだままのミリアと一緒に食卓に向かい、並んで椅子に座る。
「それじゃあ、はじめましょうか」
「う、うん…」
ちらり、オレの方を見て、少し名残惜しそうに手を離すミリア。
「いつでも握ってくれていいからね」
「う、うん!」
ニコっと微笑んでくれる。
オレから服掴み許可チケットが配布されてご満悦のようだ。そんなチケットなら何枚でも配るよ、無料配布だよ、うんうん。
「……おぬしも集中して聞くのじゃぞ」
ティナ先生がジト目で注意してくる。
え?そんなアホ面してましたかね?
「まったく、アホでなければのう…」
してたらしい。
「じゃあ、今日は魔力を練る練習をしましょうか」
「うん!おねがいしましゅ!」
むん!
ミリアはやる気に満ちた目で両手を握りしめて気合を入れていた。
「今日やるのは、杖に魔力をこめたときの応用よ」
ソフィアが魔法陣が描かれたスクロールをテーブルの上に広げた。
「この魔法陣に向かって両手をかざして、杖に魔力をこめたときと同じ要領で魔力を注ぐの、そうすると」
ソフィアが説明通り両手をかざすと、テーブルの上の魔法陣が赤く光り出した。
「今は火属性の魔力をこめてるから赤く光ってるけど、水属性なら青、風属性なら緑に光るの」
「わぁ…きれい…」
「じゃあ、ミリアは得意属性の光属性でやってみましょうか。光属性だと白く光るわ。あ、杖のときみたいに手で魔法陣に触れたらダメよ。これは魔力を放出する練習も兼ねてるからね」
「わ、わかりました…」
ミリアが両手を魔法陣にかざす。
「ちなみに直接触れてないと難易度は各段に上がるわ。難しいわよ」
「むー……むむむー……」
ミリアが目を閉じて、力をこめているような声を出す。
魔法陣は光らない。
「さ、さすがにこれは難しいわよね、うんうん」
ソフィアがその様子を見て、逆に安心したかのような顔をする。そんなホイホイ成功されては困るらしい。
「ミリアゆっくりでいいからね、がんばれー」
オレは小声で応援する。
「むん!……むー……むー!」
目をつむりながらオレに相槌をしたあとミリアが大きな声を出す。
すると、
チカッ…チカッ…
魔法陣の端っこの方が、少しではあるが点滅した。
「光った!光ったよ!ミリア!」
「え?……ほんとう?…」
ミリアが目を開けるが今は光っていない、だから光った瞬間を本人は見ていないのだ。
「……うそでしょ…」
ソフィアが狼狽していた。
「ソフィアよ、やはりミリアは天才じゃな」
「そ、そそ、そうね……うん、ミリア、あんたを天才として認めてあげてもいいわよ!」
やっぱり、自分よりも才能がありそうなミリアにちょっと嫉妬してるみたいだった。
「ほ…ほんと?」
「ええ!あんたはすごいわ!天才ね!」
でも、自信なさげにもじもじしているミリアを見て、その嫉妬もどうでもよくなったようだ。改めて、ちゃんと褒めてくれるソフィア先生。
「て、てんさい……わたしが……」
「ミリアはすごい!すごいし頑張ってる!」
いつも通り撫でる。
「でも!まだちょっと光っただけだから!ちゃんと光属性の魔力をイメージして!そしたらちゃんと光るから!ほらやってみなさい!」
「は!はい!」
もう一度、ミリアが魔法陣に両手をかざした。
「今度は目を開けてやるのよ!」
「うん!わかった!ソフィアちゃん!」
そして、今度は目を開けたまま、「むんむん、むーむー」言って魔力を注ぎ始めるミリア。
数時間後、ミリアの魔法陣修行は成功することになる。
もちろん、みんなで成功を祝い、みんなで賞賛する。
ミリアはちょっと恥ずかしそうにしていたが、素直にオレたちの言葉を受け止めて、微笑んでいた。
明日は魔法勉強会6日目、村に滞在をはじめて一週間が過ぎようとしていた。
今まで、村や村長のことは放置してきたが、そろそろミリアを連れ出す算段を立てなければいけないな、とひそかに考えるのだった。
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