第163話 みんなでやる畑仕事は楽しいね

 ミリアが苦手だという女性から、畑仕事の作業内容と、他にも色々と情報を仕入れてから、みんなのもとに合流した。


「今日の仕事はトマトの収穫だって!」


 イヤなことを聞いたと悟られないためにも明るく振舞って作業内容をみんなに伝える。


「じゃあ、今日も私とコハルが手伝いますね♪」


「ありがとな!」


「ん~、今日も見ているだけじゃと暇じゃなぁ。わしも手伝おうかの」


「そう?こういうのは前衛職に任せてもらってもいいよ?なんなら!オレ一人でやってももちろんいいよ!」


「いやだから、暇だって言ってるのよ。わたしも見てるだけだと飽きそうだし、やってみようかしら」


 ソフィアもトマト収穫への参戦を表明する。まぁ、そんなにしんどい作業じゃないと思うし、手伝ってもらうのもいいか。


「それでは、みんなでやってみましょうか。ミリア、わたしたちに収穫の仕方を教えてもらえますか?」


 ステラの服の裾を握って、元気がなさそうな顔をしているミリアにリリィが話しかけた。


「え?……わたし、が?…みんなに?」


「はい。わたしたちは畑仕事は初心者なので、ミリアが教えてくれると助かります」


「わ、わかった……がんばりゅ」


 ミリアが同意してくれたので、今日は全員でトマトを収穫することになった。


 ハサミとカゴを貸してもらって、まずはミリア先生に収穫の仕方を教えてもらう。


「トマトは崩れやすいから…優しく持ってあげて……このあたりをハサミで切るといい…よ…」


 チョキン、ミリアがトマト収穫の手本を見せてくれる。


「なるほど、こんな感じでいいでしょうか?」


「わたしもやってみる、これでいい?」


 隣でリリィとソフィアがそれを真似していた。


「う、うん…2人とも上手…」


「なら、この調子でやりましょ」


「ボクもボクも!ハサミ貸して!」


「どれ、わしもやってみようかのう」


 ミリア先生の指示を聞き終えて、みんながそれぞれ収穫をはじめた。


「ちゃんと教えれて偉い!」


 オレはここぞとばかりにミリアを褒める。

 頭を撫でながら、


「そ、そうかな?」


「うん!ミリアは偉い!頑張ってる!それに可愛い!」


 さっき、畑の持ち主に聞いた話が頭をよぎったこともあり、たくさん褒めたいという気持ちが大きくなっていた。

 だから、少しマシマシになりながら褒めてしまう。


「……えへへ…」


 でも、ミリアは笑ってくれた。

 よかった。この畑にきてからはじめて笑ってくれた。このまま、元気を取り戻せるよう、たくさん褒めよう。



 そして、全員でのトマト収穫大会は、お昼ご飯を済ませたあたりで完了した。


 午前中にだいぶいつもの調子を取り戻してきたミリアは、美味しいお昼ご飯を食べてさらに充電が増えたようで、収穫が終わるころには、


「お仕事……こんなに楽しかったの…はじめて…みんなと一緒だと、楽しいん…だね…」

 と笑顔を見せてくれるまで元気が戻っていた。


 それを聞いて、みんな笑顔になる。


「ミリア、お顔が汚れてますよ」


 ふきふき、リリィがミリアのほっぺについた汚れを拭いてくれる。


「はわ…あ、ありがと…リリィちゃん…」


 その様子を見て、みんなとも上手くやれそうだな、と嬉しくなる。


「帰ったら、魔法の練習ね」


 ソフィアが魔法で手を洗いながら言う。


「昨日の最後には、精霊から魔力も借りれておったからのう。今日は魔法を練る練習じゃ」


「が、がんばりましゅ!」


「そんなに張り切らなくても、あんたならすぐできる気がするわ」


 ここ数日、すべての課題を一日もかからずこなしてきたミリアに、ソフィア先生がちょっと呆れたような表情を浮かべた。


「ミリアは才能豊かじゃからな」

 ティナも笑っていた。


「ミリアはすごい子だから大丈夫!」

 オレはいつも通りだ。


 それから、ソフィアに水を出してもらってみんなが手を洗い、全員でミリアの家に帰る。

 帰り道でもミリアはオレの服の裾を掴んでいた。でも、行きとは違って、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

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