第134話 ピーちゃんのご飯事情

 翌朝、みんなで朝食を食べているときに、ソフィアから昨日のことを質問された。


「結局、ステラはなんだったのよ?なんか怒ってたわよね?」


「ん〜、2人には私に責任をなすりつけたお仕置きをしたんですが、冷静になって考えたら適切な行動だとわかったので、今は納得してます♪」


「そう?ならいいけど」


 オレとリリィは、ドキドキとステラ女王様のお言葉を聞いていた。


 一応、昨日の時点でお許しは出たのだが、なんだか、逆らうと怖い、という印象を一晩で植え付けられたのかもしれない。

 でも、本人も言っていたが、ステラは納得してくれたようだ。


 実は、ステラの機嫌が直った後、改めてオレたちは3人で話し合った。


 無いようにはしたいが、もしまたパーティがはぐれてしまったときは、やはりステラに指揮をお願いしたい、と頼んだのだ。


 案の定、最初はステラもイヤそうにしていたが、全員が生き残るためだ、と真剣にお願いしたら、最後には折れてくれた。


 でも、もちろん代価は求められる。そのときの会話はこんな感じだった。


「じゃあ、ご褒美として、また2人を好き放題する権利を主張します♪」


「な、なるほど…」


「イヤなんですか?」


「オレはイヤじゃないけど…リリィは?」


「もちろんリリィはいいですよね♪」

 ニッコリと圧をかけてくる女王。


「あの…えっと…ステラには大変な役割をお願いすることになるので…わたしは大丈夫です…」


 絞り出すような妥協であった。

 リリィ…苦労をかけるね…すまぬ…

 そんな思いである。


 昨日のことを思い出していると、ソフィアから話しかけられた。


「ねぇ、ライ、わたしからもいいかしら?」


「え…お、オレ、な、なんか悪いことしたっけ?」


 昨日のステラのことがあって、怖くなって少し怯えながら質問する。


「いいえ、わたしは別に怒ってないわよ。前言ってた、ご褒美の件、ライが重力魔法を覚えたらってやつ」


「もちろん覚えてるよ!あ!遅くなってごめんね?」


「ううん、それはいいんだけど、バタバタしてたしね。

 それで、内容がなかなか思いつかなくて、今1番して欲しいことって考えたんだけど…」


「うん!なんでも言って!なんでもするよ!」


「デート、してほしいかな…なんて…」

 もじもじと上目遣いでこちらを見る魔女っ娘。


「もちろん!喜んで!」


 そんなそんな!もっと強く言ってくれてもいいのに!

 だって!オレにとってもご褒美なんですが!!


「じゃあ、明日とか?いいかな?」


「うん!わかった!」


「みんなには、準備手伝ってもらってもいい?」


 ソフィアが女性陣に目配せする。


 みんなは「もちろんです!」という感じで笑顔で了承した。そして、かしましくワイワイと話しながら、オレを置いて出て行ってしまった。


 まぁ、デートの準備にオレがついていくのも変か、とは分かっていても、少し寂しかった。


 ポツン


 ひまだ…今日なにしよう…


「ピー?」


 オレが孤独に打ちひしがれていると、ピーちゃんがドアをすり抜けて帰ってきて、オレの顔を覗き込んできた。


「おぉ!ピーちゃんはオレにかまってくれるのか!」


 両手を出して迎え入れると、手のひらにとまってくれる。


「ピー!」


 オレはその日、ピーちゃんと遊ぶことに決めた。かわいいやつめ。よしよしと指で毛玉様を撫でる。


「ピー♪」


 気持ちよさそうに目を細めてくれた。キュートだ。


「そういえば、ピーちゃんってその姿でもお腹空くの?」


「ピー!」

 すくぞ!ということかな。


 ピーちゃんは今はメラメラと燃えている。以前のように、ご飯を必要とするのか気になって聞いてみたのだ。

 なんというか、精霊とか召喚獣的な立ち位置なら、ご飯とか食べなそう、と思ったからだ。

 しかし、本人曰く、それは違うらしい。では、ピーちゃんはなにを食べるのか。


「じゃあ、これ」


 とりあえず、前は気に入って食べていた数種類の豆セットをアイテムボックスから取り出して、差し出してみる。


「ピ〜?」


 ピーちゃんはその豆をジッとみて、


「ピー!」

 若干キレ気味に炎を吹き付けられた。


「あっつ!くない?」


 手のひらの上の豆だけが燃え尽きていた。


「これじゃないってこと?」


「ピー」


 んー?なにが食べたいんだろう?

 ピーちゃんの今までの行動を思い出す。


 これまで食べていたのは、もともとコハルがあげていた、1種類の豆。そのあと、オレが大根の葉っぱとオリジナルブレンドの豆を与えていた。

 それからそれから、洞窟で見つけたスノーローズ鉱石をバリバリ食べていたな。


 そこまで思い出して、スノーローズ鉱石をアイテムボックスから取り出してみる。


「ピー!」


 それを見た途端、すぐにピーちゃんが飛びついてきて、バリボリと食べ出した。結構豪快な音がする。


「おー!うまいかー?」


「ピー!」


 美味しいようだ。かわいいので、よしよしと羽のあたりを撫でる。


 しかし、どうだろう。ピーちゃんのご飯の主食とするには、スノーローズ鉱石は足りるのだろうか?

 スノーローズ鉱石は貴重なものだ。今のうちに、例の採掘場に行き、全部採取し尽くしたとしても、何日分になるのだろう?

 せいぜい数か月で枯渇するような気がする。


 ピーちゃんのご飯問題は、みんなにも相談しないとだな。いや、まずは自分で調べてみるか。


 オレは、指の背中でピーちゃんを撫でながら、そう考えて、ピーちゃんを頭に乗せて本屋に行くことにした。

 フェニックスに関する本が他にもないか探したかったからだ。


 部屋を出ようとしたら、メラメラ燃えるのをやめるピーちゃん。これでぱっと見は普通の鳥さんだ。

 賢い子である、燃えていると目立つことを理解しているようだ。


「じゃあ、いこー!」

「ピー!」


 オレはその日、ピーちゃんとデートすることにした。

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