第133話 残された者の気持ち

-翌朝-


「コハル、オレと主従契約を結んでくれるか?」


「う、うん、わかった。ソフィアに聞いてたし、いいよ。それに赤ちゃんのこと、ボクにはまだよくわからないし…」


 少し不安そうにするコハル。もしかすると、あまり赤ちゃんは望んでないのかもしれない、そう思い当たった。


「オレたちの子どもについては、これから考えてくれればいいよ。それに、もしコハルが子どもを望まなくても、オレはコハルを愛し続ける」


「わ、わかった!」


 コハルが笑顔になったので契約を開始する。


「汝、コハル・カグラザカは、我、ライ・ミカヅチを主人と認めるか?」


「認める、認めます」


 コハルの薬指に指輪を通すと、指輪が光り輝き、ライ・ミカヅチと刻まれた。


 オレは人差し指に3本目の指輪をはめる。こちらには、コハル・カグラザカの文字が刻まれた。


「これからよろしくな、コハル」


「うん、ボクの方こそ」


 そっと肩をもって、キスをした。


♢♦♢


「と、いうことで、コハルがオレの妻になりました」


 パチパチパチ


 宿の自室でみんなが帰ってくるのを待ち、コハルと上手くいったことを報告した。みんなが祝福してくれる。


「よかったわね!コハル!」

「おめでとうございます!」


「うん!ありがと!ソフィア!ステラも!」


 3人がキャッキャッと手を取って飛び跳ねていた。微笑ましい光景だ。


 しかし、しばらくするとステラが神妙な面持ちになり、オレの方に近づいてくる。


「えっと〜。コハルのことがあったので、空気読んで我慢してたんですが~。ライさんとリリィに少し話があります」


 ステラが真剣な顔で、オレとリリィを名指しする。


「オレたちに?」

「なんでしょう?」


 リリィと顔を見合わせる、リリィも不思議そうだ。


「今日は、3人にしてもらってもいいですか?」


 なんだか断れない雰囲気を作るステラに、コハル、ソフィア、ティナがうなづいて、部屋を退室した。


「ステラ?話ってなんでしょうか?」


 オレもだが、リリィもまだ不思議そうだった。

 オレたちなにかしたっけ??


「……ライさん、ライさんがコハルを追って穴に落ちた後、ライさんは私に指揮を任せましたよね?」


「うん」


「なんでですか?」


「え?それは、ステラが1番強くて冷静だと思ったから…」


「そんなことありません!私だって!すごく心配で!動揺してたんです!

 冷静だと思った!?ちがいます!!ひどいです!!」


 突如、感情をあらわにするステラ。片手を胸に当てて苦しそうにしている。


「ご、ごめん」


 立ち上がってステラに近づく、抱きしめようとするが、首を振って拒まれる。


 ガーン!!


 今までずっとオレを受け入れてくれていたステラに拒絶され、特大のダメージをくらい、倒れそうになる。

 しかし、今はそういう雰囲気じゃない。しっかり話を聞かないと。


「待ってください。リリィにも話があります。リリィも私がライさんのことを誰よりも大切だって、わかってますよね?」


「…はい、もちろんです」


 姿勢を正し、座り直すリリィ。


「そ、それなのに…〈なんでライ様を助けに行かないんだ!〉って、あのとき、私に怒りましたよね?」


「はい……たしかに言いました…」


「私だって!助けに行きたかった!でも!逃げろって!大好きなライさんに言われたから従ったんです!」


 ステラがポロリと涙を流し、真っ直ぐ、リリィの方を見る。


「はい…動転していたとは言え…ステラの気持ちも考えずに…ごめんなさい」


 リリィが立ち上がって、丁寧に頭を下げる。


「…許します、リリィのことも大好きだから」


「ステラ…ありがとう」


 2人は抱き合った。


 よかった…美しい光景だ。えっと、解決かな?


 オレはオロオロと成り行きを見守る。


「でも…2人には罰を与えます」


 ステラが涙を拭きながら、そんなことを言い出した。


「ば、ばつ?」


「そうです…今日は2人に尽くしてもらおうと思います」


「尽くす?それは一体?」

「えっと、オレにできることならなんでもするけど…」


 なんだか雲行きが怪しくなってきた。


「2人は私に悪いことをしましたね?」


「そ、そうだよね…」

「は、はい…」


「なら、1日くらい言うことを聞いてくれますよね?」


「わ、わかった…」

「わかりました…」


 申し訳ない、という気持ちが強く、安請け合いしてしまうオレとリリィ。


 その了承の言葉を聞いて、ステラがニヤリと笑うところをオレは見てしまった。

 あれ?こいつまさか?


「そこに座ってください。いえ、座りなさい、正座で」


 2人して正座させられる。


「うふふ♪」


 ステラが笑いながら近づいてきて、スカートをまくりあげた。


「ライさん、ペロペロしてください」


 いいんですか!?

 ニヤつきそうになるが耐える。これは罰なんだ、従わないとダメなんだ。


「早くしてください。これは命令です」


「は、はい」


 オレは気が進まないなー、と演技をしてペロリ出した。


「うふふ♪いい感じですよ、ライさん♡リリィはそこでライさんのことを見ててください」


「は、はい。あぁ…ライ様…」


 そう言われると、無性にリリィに見られていることが気になりだす。


 ステラの命令に従いながら隣を見ると、真っ赤なリリィと目があった。なんだか、すごく恥ずかしい気持ちになる。


「ライさん!私に集中してください!」


 両手で頭を掴まれる。

 おぉ…絶好調ですね…女王様…


 ステラが満足するまでその時間は続いた。



「ふぅ…じゃあ、こっちに来てください」


 ベッドに誘導される。


「ライさんは私が脱がしますね、うふふ♪リリィは自分で脱ぎなさい」


「は、はい」


 オレが万歳をして服を脱がされている間、隣でリリィが服を脱ぐ。


「私の服は2人で脱がしてくださいね」


「はい」

「はい」


 ワクワクしながら服を脱がす。ニヤつかないようにするのが大変だ。


 これは罰、これは罰なんです。


 みんな何もまとわぬ姿になった。


「では、こっちへ」


 ベッドの上にステラが寝転ぶ。


「ライさんは正面で、リリィは私の右手に」


 言われるがまま、言う通りにする。


「なんですか?ライさん?ペロペロしただけでこんなにして?これはお仕置きなんですよ?」


「ごめんなさい」


「勝手に満足したら、許しませんからね?」


 え?どういうこと?

 唐突な鬼畜指令に不安な気持ちになる。


「してください」


「は、はい…」


 イヤな予感がしながら、女王様の求めるがまま言いなりになる。


「んん…ライさん、さっきも言いましたけど、勝手に満足したらお仕置きですから」


「わかりました…」


 マジかよ、そんな耐えれるかな。


「うふふ♪リリィ?」


「は、はい」


「リリィは私のこと好きですか?」


「もちろん、好きですよ?」


「ならキスしてください」


「ええ!?」


「イヤなんですか?」


「イヤってことはないですが…」


 チラリとオレの方を見る、許可を求めているのだろうか


「リリィがイヤじゃないならしてあげて?」


「は、はい。じゃあ…ステラ」


 ちゅっ、と美少女同士がキスをした。


 こ、これは!これが噂に聞くレズキス!


「うふふ♪もっとしてください」


 2人はちゅっちゅっと絡み合い、やがて深いキスをし始める。

 こ、これはすごい光景だ…


「ライさん、勝手に満足したらダメですよ」


 くっ、つ、つらい…


「リリィ、次は奉仕ですよ」


「わかりました…」


「ライさんはそのままです♪」


「はい…」


「す、すごい…2人が私の言うことを聞いて…うふふ、素敵です♪」


 そしてステラが満足するまで、ステラの思い通りの空間をその日は過ごすことになった。



「満足したので!明日からは普通にしていいですよ!」


 自室で夕食を食べて、また少し命令通り動いたらステラがそう言う。毒が抜けたようなツヤツヤした笑顔だった。

 その言葉を聞いて、リリィはホッとした表情を浮かべていた。


 オレとしては、たまにはこういうのもいいな、うへへ、としか思っていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る