第135話 童貞を殺すロリ魔女っ娘に殺されるデート

 トカゲドラゴン討伐から3日目、デルシアのギルドでは、まだ調査が終わっていないということで、報奨金はお預けされていた。


 ただ、ギルド前の広場で倒したやつの亡骸は綺麗に解体されて、ギルドに回収済みだ。解体後の材料は、防具や武器にできるかもしれないので、ある程度はください、と頼んである。

 あと、もちろんだが、戦った全員に報酬を出すようにお願いしておいた。もしかすると、そのせいで事務手続きが遅れているのかもしれない。


 なにはともあれ、特に急いではいないので、のんびり待とうと思う。


 そんなことよりも!

 今日はソフィアたんとのデートの日だ!


 昨日はみんなでソフィアのデートの準備をしてくれたようで、ソフィアの準備は万端のようだ。どんな服装で登場するのかワクワクしかない。


 オレの方はというと、さすがにいつもの冒険服はやめて、新調したジャケットを羽織ってデートっぽい服装にキメてきた。


 …キマっているだろうか?

 服を選んだときはピーちゃんしかいなかったので、ちょっと不安になる。


 オレはそわそわとしながら、待ち合わせ場所にてソフィアが来るのを待ち構えていた。


 待ち合わせはデルシアの門の前に10時集合ということだったので、30分以上早くついて待機している。


 しばらく門の前に立ってソフィアのことを待っていると、宿の方の路地から、ひときわ目立つ女の子が歩いてくるのがわかった。

 なぜなら、その子は衆目の的になっていて、男はみんな振り返って、その子のことを見ている。


 そんな目立つアイドルのような女の子がゆっくりとオレに近づいてきた。


「待った?」


「ううん!ぜんぜん!今日もめちゃくちゃ可愛いよ!ソフィア!

 いつも可愛いけど!でもね!今日もすごく可愛い!」


 オレは興奮冷めやらぬテンションでまくし立てる。


「……そ、そう?ふふん、準備した甲斐があったわね」


 髪の毛を横に流す仕草をして、照れながらも得意げにするソフィアがとても愛おしかった。


 今日のソフィアたんの服装は、ガルガントナでゴスロリ服のお店でオーダーメイドした服だった。


 グレーのチェック柄のスカートは、腰のところまでコルセットみたいに繋がっていて、お腹の部分には6つの金色のボタンがついている。

 スカートにはサスペンダーが付いていて、肩に掛けられていた。


 上には、白色のレースのブラウスみたいなシャツを着ていて、襟はセーラー服のような形でスカートの色に合わせてグレーだった。

 ところどころがフリフリのフリルになっていて、胸には大きめの黒いリボン、手首のあたりにも小さいリボンがついている。


「くるって、回ってもらってもいい?ソフィアのこと、じっくりみたいんだ」


「いいわよ!ほら!これでどう?」


 くるりと回ってくれる。


 ふわっと浮いたスカートの後ろには、チェックスカートと同じ柄の大きいリボンがフリフリと付いていた。


 いつもの魔女帽子は今日はしておらず、サイドテールのリボンの柄がグレーのチェックに変わっている。


「うわぁぁ……かわいすぎて…感動で死にそう…」


「ふふ!なによそれ!」


「そのリボンってどうしたの?オレがオーダーしたのは服だけだったよね?」


 一緒にあつらえたかのように、ぴったりと今日のファッションにマッチしていたので気になって聞いてみる。


「これ?これはね!みんなで昨日見つけたのよ!この服に合ってるでしょ!」


 頭のリボンをさしていう。やっぱりだ、オレがオーダーしたものじゃなくて、たまたま服に合うリボンを見つけたようだ。


「うん!すごく合ってる!ガルガントナで着てくれたときも感動したけど!

 やっぱり、この服はソフィアのための服だね!めちゃくちゃ似合ってる!!天使みたいにカワイイ!!」


「ありがと!嬉しいわ!」


「じゃ!じゃあ!さっそくデートしてもらえるでしょうか!あ!手を繋いでもいいかな?お嬢さん?」


 少し緊張しながら、手を差し出す。


「もちろんいいわよ!」


 オレの手をソフィアがぎゅっと握ってくれた。


 こうして、オレたちは恋人繋ぎでデルシアの町へと繰り出したのだった。



「こうしてデートするの久しぶりねー!」


「そうだね!」


 町中をぷらぷらと歩きながら会話する。


 ソフィアはとてもご機嫌で、繋いだ手を大きく振りながら歩いている。


「まずはどこいこうか?この前、本屋は見つけて、魔導書とかもあったけど」


 オレのデルシアでの数少ないボキャブラリーを掘り起こし、提案してみる。


「ならまずはそこにいきましょー!」


「わかった!案内するね!」


 と、いうことで、コハルに教えてもらった本屋に向かう。


 門の近くの路地を曲がったところなので、すぐに到着した。


「へー!こんなところに本屋があったのね!」


「うん!この辺に魔導書もあるよ」


「ホントね!ふむふむ」


 ソフィアは顎に片手を当てて、じっくりと本のタイトルを確認しはじめた。


「う~ん、だいたいわたしは使えるやつばっかね。あっ!でも、これとかライたちの勉強のために使えそうね!」


 一冊の本を持って、オレに見せてくれる。


「お?おぉ?」

 本の表紙には、〈重力魔法上級〉とかかれていた。


「中級がいけたんだから!きっと上級もいけるわよ!」


「ほ、ほんとに?自信ないなー…」


「ふふ!もう!自信もって!」

 ソフィアが近づいてきて、オレの肩に手を当てて耳を近づける。


「がんばって習得したら……なんでも、してあげるわよ?」


「マジで!?」


「ふふ!どうかしらね!」


 小悪魔の魅力的な提案に、俄然やる気が出てきた。とりあえず、この本は買っておこう。


「ねぇ、あの、上の方の本を見てみたいわ」


 ソフィアが、無駄に高い本棚の上の方を指さして言った。


「おっけー、ちょっと待ってね」

 オレがハシゴを持ってきて登ろうとすると、

「わたしが登る!」

 と、ハイテンションのソフィアにハシゴを奪われ、そのまま登っていった。


 オレは咄嗟にハシゴを押さえるが、ソフィアはスカートなわけで…


 周りにお客がいないのを確認してから、上を見上げる。


「ほ、ほほう…」


 いつもの縞々じゃなくて、ピンクのフリルでフリフリな下着が見えてしまっていた。

 これはいけない、いけないですよ。

 そんな無防備にオレに見せつけちゃあ、いけませんよ。


「ごくり…」


「うーん、思ったよりいまいちだったわ」


 ソフィアが降りてきて報告してくれる。


「そ、そうなんだ…」


 真面目なソフィアに対して、のぞき見していたのが後ろめたくって、少し気まずくなる。


「ねぇ?」


「な、なに?」


 そんなオレに、ソフィアが近づいてくる。


「見たんでしょ?」


「えっ?な、なにをかな?」


 だらだらと汗が出てくる。


「ライのエッチ♪」

 ニヒヒと笑っていた。


 なっ!?もしかしてわざと!?


「次!いくわよー!」


 小悪魔が本屋を出て行くので、急いで後を追った。


 こんな誘惑何回もされたら、もたないぞ、と少し不安になるが、でも、すごくドキドキしていて楽しかった、


 オレは小悪魔のペースに惑わされないように強い気持ちで挑むしかない!

 なんて思いながらソフィアの隣に並ぶ。

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