第122話 恋を自覚する方法

--------------------------

コハル・カグラザカ

 好感度

  62/100

--------------------------


 昨日のデートの翌朝、早めに起きて攻略スキルをチェックしたら、コハルの好感度がとても上がっていた。


 おぉー!昨日のデートが大成功だったってことかな!


 実際すごく楽しかったし、コハルも同じように楽しんでくれたと思うと嬉しくなる。


「ライ、わたし今日も討伐依頼やすむから、よろしく」

「あ、ライさーん、私もお願いします」


 ソフィアとステラからお休みをもらいたいと要望があった。


「え?まぁいいけど、2人が休みなら今日もみんな休みにしようか。なにするの?」


「ひみつでーす♪」

「ひみつよ」


 ?なんだろう?


♢♦♢


-コハルの宿の前-


「あ、ステラ、ソフィア、わざわざごめん」


「いーえ♪それで相談ってなんですか?」


「あの…昨日、ライとデートして…その、恋愛について教えてほしいんだ…」


「まぁ!恋バナですね!私そういうの大好きです!」


「ふーん、コハルもそういうことに興味出てきたんだ」

 ソフィアはニヤニヤとコハルに近づく。


「な、なんで笑ってるのさ」


「そりゃ楽しいからよ」


「ぼ、ボクは真剣だ!」


「ますます面白いわ!」


「じゃ、まずはその辺のカフェでお話ししましょー!」


 こうして女子会がはじまったことをライは知るよしもない。


♢♦♢


-女子会の次の日-


 クルーセオ鉱山で上級Cの採掘依頼に向かっていく道すがら、コハルに話しかけられた。


「ね、ねえ!ライ!」


 両手を握りながら、力いっぱい、という様子だった。


「ん、どうした?」


「ラ!ライって!か、カッコいいよね!?」


「え?あ、ありがとう!!」


 急に褒められて、嬉しかったのでニコニコとお礼を言う。


「な、なるほど、ライは嬉しそうにしてる。だよね?ピーちゃん」

「ピ〜」


「こ、コハル?」


「ライはボクのことどう思ってるの!」


「え~っと、強くてカッコいいし、可愛いとも思ってるよ。それに、一緒に冒険の話をするのが楽しい」


「な、なるほど。ぼ、ボクと同じだ……そうだよね?ピーちゃん?」

「ピ〜」


「こ、コハル?」


 コハルの様子が変だと思い周りを見渡すと、ステラとソフィアがニヤニヤしていた。

 あ、あいつら、コハルになにか吹き込んだな。


「ライ!手を繋いでもいいかな!?」


「え?」


「い、いやかな…」

「ピー!」

 悲しそうにするコハル、怒るピーちゃん。


「そんな!嬉しいよ!お願いします!」


 右手をゴシゴシ拭いてから手を差し出す。


「う、うん…」

「ピー♪」


 そしてコハルがオレの手を握ってくれた。ピーちゃんもご満悦だ。


「コハル!コハル!どんな感じですか?」


「す、すごくドキドキする…」


「それよ!それが恋よ!」


「こ、これが…」


 いつの間にか近づいてきたステラとソフィアがコハルの周りではやしたてる。


 おいおい、お二人さん、さすがに強引じゃないですか?


 う~ん……

 ありがとうございます!!!


 ツッコミを忘却したオレはニッコニコでコハルと手を繋ぎながら歩を進めることにした。


 今日はモンスターが出てきにくいエリアでの採掘依頼だ。このまま、のんびり手を繋いで行っても危険は少ないだろう。


 そう判断して、目的地に着くまで、コハルの小さい手を離すことはしなかった。


♢♦♢


 そんなハッピーなイベントがあった日の夕方、ギルドに戻ると、ルカロさんたち受付嬢がざわついているのが気になった。


「今日も帰って来てないんですか?」

「うん。そうみたい」


「これは、捜索依頼を出した方がいいんじゃ?」

「でも、それで他の人たちもどうにかなったら…」


「どうかしたんですか?」


 なんだか物騒な話に思えたので、情報収集のために話しかける。


「あ、ライさん、コハル。えっと、もう今日中には通知されることなんですが…

 冒険者パーティが2組、クルーセオ鉱山の依頼中に行方不明になってまして…」


「行方不明?」


「はい、最初のパーティは今日で3日目、2組目は今日で2日経ちましたが帰ってきません…」


「それって、つまり…」


「はい…おそらくモンスターに…」


「残念ですね…」


「はい…ただ、気になるのが2組ともシルバべナードの討伐依頼を受けていたこと、そして、2組目のパーティは、討伐成功経験のあるパーティだということです」


「シルバべナードは倒せる力があるのに帰ってこないってことは、なにかイレギュラーなことが起こった、ってことですかね。例えば、別のモンスターにやられたとか」


「はい、その可能性があります…」


「気になりますね。シルバベナードの縄張りには他に危険なモンスターっているんでしょうか?」


「いえ、今までそのような報告はないんです。なので、妙なことだと問題視されていまして」


「なるほど、ギルドとしてはどうするんですか?」


「はい、しばらくはシルバべナードの討伐依頼は受注停止、その周辺エリアへの侵入も制限しよう、という対応になると思います」


「わかりました。教えていただきありがとうございます」


 ルカロさんにお礼を言って、ギルドを後にする。


 まぁ、オレたちはあと1週間くらいは上級Cしか受けないし、関係ないだろう。


 このときは、それくらいの認識しかしていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る