第121話 ボクっ娘ポニーテールと初?デート

-翌日-


 コハルとはお昼前にデルシアの正門の前で待ち合わせしようということになっていた。

 少し早めに宿を出て、門に向かうと、コハルはすでに到着していた。


 横髪を指でくるくると触っていて、落ち着かない様子だ。


 オレは小走りで駆け寄る。


「お待たせ!待った?」


「ううん。ボクも今きたところだよ」


「ごめん。こういうのは男が先にくるものなのに」


「そうなの?」


「うん。たぶんそう。デートだからね」


「で、デート…」


 デートという単語を聞いて、もじもじするコハル。


「もしかして緊張してる?」


「…ちょ、ちょっとだけ」


「いつも通りで大丈夫だよ。

 そういえばさ!コハルに勧めてもらった英雄グリムの冒険読み終わったんだ!その話がしたくて!」


「ホント!どうだった?」


「めっちゃ面白かったよ!あ!歩きながら話そうか!」


「うん!」


 こうして、オレたちは町に繰り出した。


「やっぱりまずはさ!最初に伝説の剣を手に入れるところがワクワクするよな!自分もいつかそういう剣を手に入れれるんじゃないかって妄想がはかどる!」


「そうだよね!ボクも小さいころにこの本を見たときは、庭で木の棒を振りまして伝説の剣だー!とかやってたもん!」


「わかるわー!子どものころって最強の剣に憧れるもんな!まぁぶっちゃけ今も憧れてるけど!」


「だよねだよね!正直ボクも今も憧れてる!」


「でもコハルの剣もすごいよ!メラメラ燃えててカッコいい!」


「ありがと!実はさ!燃えてる剣振り回してるときは英雄気分になってテンションあがるんだー!そういうライの剣もすごそうだよね?」


「お!よくぞ聞いてくれました!オレの愛剣は雷帝剣キルク!雷龍キルクギオス様から授かった剣だ!」


「ははは!なんだよそれ!物語みたいなこと言って!」


「じゃあ聞くかい?英雄ライの物語を!」


「ははは!教えてよ!気になるな!」


 そんな感じで、オレたちは、デート開始からテンションあげあげで盛り上がってる。なかなかいい雰囲気なんじゃないだろうか。


 オレたちはそのまま、町をぶらぶらと歩きながら、とりあえず武器屋に入ることにした。


「最初の武器って何にするか迷わなかった?」


 コハルが弓を片手に話しかけてきた。


「あーわかる。近接用か、遠距離用か。近接だとしても剣か槍か。色々あるよなー」


 オレも槍を構えて回答した。


「でもさ!やっぱ物語の主人公が使って武器といえば!」


「剣!」

「剣!」


 息ぴったりである。


「だよな!やっぱり憧れの主人公になりたいって思いで剣を選んじゃう!」


「わかるわかる!ボクも英雄になれるかもー!って思いながらはじめての剣を買ったなー!あっ!この剣とかカッコよくない?」


「おお!たしかに!」


 こうしてオレたちは武器屋を巡り、カッコいい武器選手権を始めることにした。英雄たちが使ってそうなカッコいい武器を探すのだ。


 武器屋に入って、カッコいい武器を見つけては手に取って構える。

「どう?英雄っぽい?」

 みたいな感じで見せあった。


 そんな楽しい時間を過ごしていると、あっという間にお昼どきを過ぎ、おやつの時間になる。


「おぉ、結構時間経っちゃったな、遅めのお昼ご飯にしようか?」


「ピー!」

 ピーちゃんも賛成のようだ。


 近くのカフェに入る。


 軽食をとっていると、

「ライの話は面白いな〜」

 と、ニコニコとピーちゃんにご飯をあげながらコハルがそう言ってくれる。


「ありがと!オレもコハルと話してると楽しいよ!」


「…ね、ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」


 コハルが少し赤くなって、もじもじと気まずそうにこっちを見た。


「ん?なぁに?」


「ライはさ、ボクのこと…女の人として見てるの?」


「そりゃもちろん」


「へ、変だよ。今日だって、英雄の話や武器の話ばっかで…その…男の子、みたいだっただろ?」


「え?そんな風には思ってないよ?コハルのことは最初から可愛い女の子だと思ってる」


「や、やっぱり変だよ……こんなガサツなやつ…昔から女らしくしろって言われてきたし…」


「オレは今のままのコハルがいいと思う。英雄のことを楽しそうに話すコハルといるのが楽しいし、楽しそうに話してるコハルが可愛いって思うんだ」


「…ライはさ、ボクのことを物語の中のお姫様にしたいの?

 でも、ボクはお姫様じゃなくて、英雄になりたいんだ」


「じゃあ、2人で英雄になろう。コハルがなりたくないものには、ならなくていい」


「……」

 コハルは下を向いて赤くなってしまった。


「ピー?」

 ピーちゃんがコハルの顔を覗き込む。


「か、考えてみる」


「え?」


「ライに言われたこと、考えてみる。ボクなりに…」


 考えてみる、そう言ったコハルの顔は、なぜか少し大人っぽくなったように感じて、ふいにドキっとした。


「う、うん、わかった。よろしくね?」


「うん」


 それから、またグリムの冒険の話を少しして、オレたちは宿に戻った。


 帰り道は、さっきの会話もあってかあまり口数は多くならなかった。でも、別に気まずいとか、そういうわけではない。

 なんだか、コハルがオレのことを意識してくれてるような気がして、とても嬉しかった。


 ピーちゃんだけがよくわかっていないようで、不思議そうな顔をしながら、オレとコハルの頭を上を行き来していた。


 おまえらさっきまで楽しそうにしてたやん?どうしたん?ねぇねぇ?

 という気持ちなのだろうか。


 とりあえず落ち着かないようだったので、「大丈夫だよ」、と声をかけて撫ででおいたら、「ピ~」と気持ちよさそうにしてオレの頭の上で落ち着いた。


 宿に着いたら、今日も魔法の勉強会だ。ソフィア先生のはからいで、とてもいい息抜きになった。


 さぁ勉強がんばるぞー!

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