第110話 仲間は助け合うもの

-クルーセオ鉱山-


「今日は、コハルに後衛の守りをお願いしてもいいかな?」


「え?なんで?ボクは剣士だよ?」


「ん?昨日のオレのポジションと入れ替えるだけだよ?オレも剣士だし」


「……あ、そうか。そうだよね…」


 なんだろう?前衛にこだわりでもあるのかな?


「もしかして、前衛しかやりたくないとかある?」


「ううん、そんなことない。前のパーティではいつも前衛だったから」


「そっか、じゃあ出来ることが増えるのはいいことだし、ポジション変えてみようか」


「うん、わかった」


 こうしてポジション変更をしてから洞窟の深部へ潜っていく。


 今日の討伐対象は、ハリネズミみたいなモグラだ。サイズは大型犬くらいで、やはり外皮は石のように硬い。

 それに身体中の針はリーチが短い武器だと攻撃がしにくそうだった。ナイフとかで攻撃したら手に針が刺さりそうで怖い。


「よし!オレとステラは足止めに徹して、ソフィアとティナの遠距離攻撃で仕留める!コハルは後衛の護衛を!」


 相手の特徴から魔法での攻撃が有効だと判断し、まずはこの作戦でいってみることにした。オレの考えをみんなに伝える。


「わかった!」

「いいわよ!任せなさい!」

「腕が鳴るのう!」


「よし!いくぞ!」


 そうして戦いがはじまる。初戦の相手の数は6匹だ。


 ハリモグラはなかなかに素早い動きで翻弄されたが、無理に倒そうとはせず、足止めに徹すれば相手をするのは容易だ。

 そこを1匹ずつ確実に魔法で仕留めていく。


 なんどかオレとステラの間を抜けられ、後衛の方に向かわせてしまったが、コハルがしっかりとカバーしてくれて、誰も被弾することはなかった。


 無事、ハリネズミモグラの討伐が完了する。


「おつかれ!この調子でどんどん倒していこう!」


 みんなが頷くのを確認し、次の群れを探しにいく。


 ハリネズミモグラは、まとめて5匹くらいで襲ってくることがおおく、今日のところは合計30匹ほど倒したら帰宅することにした。


 そして、今日も帰り道の途中で休憩していく。


 イスをだして、焚き火をするための木を組んでいると、


「ピー!」

 とピーちゃんがやってきて、口から火を吹いた。


「おお??」


 すると焚き火に火が灯る。


 そのあと、ピーちゃんはオレの頭に着陸した。


「おぉー!!ピーちゃん魔法使えるのか!すごいな!」


「ピー!」

 自慢げに鳴き声をあげる赤い毛玉様。


 まさか、こんなちっちゃな鳥さんが火を吹けるなんて驚きだった。

 あぁでも、昨日コハルがピーちゃんはファイアーバードの子どもだって言ってたっけ?

 なら、火くらい吹けるもんなのかな?


 そんなことを考えながら、オレはアイテムボックスに手をつっこみ、

「それじゃ、これはお礼だ」

 と言いながら、だいこんの葉っぱを持って、頭の上に乗っているピーちゃんに献上させてもらった。


「ピー!」

 嬉しそうにひと鳴きした後、頭の上からハムハムついばむ音が聞こえてくる。


「ピーちゃんと仲良くなったね…」

 正面のコハルが複雑そうな顔で話かけてくる。


「そうなのかな?」


「ピーちゃんは自分から魔法を使うことはあんまりないから」


「そうなんだ?仲良くなれたなら嬉しいな。コハルはピーちゃんとは長いの?」


「半年前から……」


 なんだか複雑そうな、嫌なことを思い出すような顔をするコハル。半年前といえば、コハルの前のクランが壊滅した時期だ。それに関係するのかもしれない。


「そうなんだ、いい相棒を持ったね!」


 オレはそのことには触れず明るく振る舞うことを選択した。


「……」


「ねぇ!コハル!わたしたちも昨日みたいにピーちゃんにご飯あげてもいい?」


「いいよ」


 ソフィアのお願いに対して、コハルの了解がとれたので、みんなにも昨日と同じようにピーちゃんの餌を渡してあげる。


 今日もイイ感じにコミュニケーションが取れたように思う。


 コハルたちとオレたちの関係性は徐々に良くなってきているのではないだろうか。


♢♦♢


 そんな調子で、1週間ほどコハルと上級Aの討伐依頼をこなす日々が続いた。


 オレたちは、戦う前に陣形や作戦について話し合うことで、上手く連携することができていた。

 基本的には、前衛2人、中衛1人、後衛3人の形をとっている。


 そして、前衛2人と中衛1人のポジションをコハルとステラとオレでローテーションしていた。このローテーションの理由は、前衛が1番疲れるポジションだから、そこは交代でやろうね、と話した結果だった。


 そんな感じでオレたちのパーティなら上級Aは余裕だな、とコハルも実感したとき、ついに特級を受けよう、という話になる。


「このパーティなら特級Cも無理なく倒せると思う」


 クルーセオ鉱山の帰り道の途中でコハルがつぶやいた。


「おっ!ホントか!なら、明日は特級Cの依頼を受けてみようか!」


 みんなにも確認すると、頷いてくれた。


「もし危なくなったらボクがなんとかするから」


「コハル、そう言ってくれるのは嬉しいけど、オレたちはパーティだ。パーティってのは助け合うもんだろ?違うか?」


「それは…物語ではそうだけど…現実は違う…」


 さっきまで普通にしていたのに、暗い顔になってしまうコハル。


「違わないよ。少なくともオレたちは仲間同士で助け合う。だから、仲間のコハルのことも助けるし、押し付ける気はない」


 だから、ちょっとくさいセリフだなと思いながらも、真剣にオレの考えを伝えることにした。


「……」


「そこはわかってほしいな?」


「……」


 コハルが答えないでいると、

「ピー!」と鳴きながら、ピーちゃんがオレの頭に着地した。


 コイツが正しいぞ、とでも言いたげなタイミングだ。


「……わかった。ボクもみんなのことを頼る」


 そんなピーちゃんを見てか、コハルが少し心を開いてくれた。


「よかった!わかってくれて!」


 この日、またコハルとの心の壁がピーちゃんによって越えられたような気がする。


 明日は特級Cの討伐依頼だ。

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