第109話 壊滅クランの生き残り

 コハルとのはじめての討伐依頼を終えた夜、改めて攻略スキルを開いてみる。


 すると、2つのアドバイスが表示されていた。


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ピーちゃんの餌を毎朝買いに行くようにしてください。


キースとは決着が付くまで敵対しないようにしてください。

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 なるほど、1つ目のアドバイスは簡単だし継続できるだろう。しかし、2つ目はどうだろうか。


 キースというのは、冒険者ギルドでコハルのことを死神だと吹聴していた男だ。また絡んできたらキレる自信があるのだが、どうしたものか。


『キレたらコハルの身が危険になり、攻略不可になります』


『……わかりました…我慢します…』


 攻略さんに釘を刺されてしまった。ここはグッと堪えなければならないということだ。

 というか、キースと敵対するとコハルの身が危険になる?

 つまり、あいつが何かしてくるということなのか?


 やっぱり、胡散臭いやつだな。


 コハルとキースが所属してたクランの壊滅事件について、もっと詳しく知る必要がありそうだ。そう考えたオレは、明日から情報収集もしないといけないな、と考えをまとめる。


 今日のところは、アドバイスのことを頭に入れつつ、眠りにつくことにした。


♢♦♢


-翌朝-


 みんなで朝食を食べてから、ギルドに向かう途中でピーちゃんの餌を入手する。


 ギルドに着くと、すでにコハルが待っていた。


「やぁ!今日もよろしくな!」


「……よろしく」

「ピー!」


 コハルは相変わらず難しそうな顔をしているが、ピーちゃんは元気に挨拶を返してくれた。なかなかカワイイ毛玉である。


「今日はどの依頼にしようね?」


「しばらくは、上級Aの討伐依頼をモンスターをかえて受ければいいと思う。特級から難易度がかなり上がるから、クルーセオ鉱山での戦いに慣れておいた方がいい」


「おっけー、それでいこう!」


 オレたちは、コハルのアドバイスに従い、昨日とは違うモンスターの上級Aの依頼書を持って、受付に向かう。


「今日もコハルをお願いします!」


 受付にはルカロさんがスタンバっていて、元気よく手続きをしてくれた。


「ちょっと、保護者きどりやめてよ。ボクは1人でだってやれるんだ」


「またそんなこと言って!ホントはパーティ組めて嬉しいくせに!」


「……」


 否定しない、ということは図星なのだろうか?

 あんまり嬉しそうには見えないけど。


「おぉ〜い、にいちゃんよー。死神には近づくなってアドバイスしたよなー?」


 コハルの表情を観察していたら、キースのやつが近づいてきた。


 コハルがビクッとしてオレたちの影に隠れる。昨日会ったばかりのオレたちなんかに頼りたくないはずなのに、それほどあいつのことが苦手なのだろうか。


 そう思うと、だんだんイライラしてきた。


「キースさん!絡んでこないでください!」


「おいおい!ルカロちゃん!オレはせっかく親切にアドバイスしてやってるのによー!

 なぁ、にいちゃん!そいつは自分勝手な行動ばかりだろう?迷惑しているよなぁ!?」


 そいつはずいずいとオレの目の前まで近づいてきて、至近距離でそんなことを言ってきた。


 あぁ、キレそうだ…殴りたい…


『我慢してください』


『はい…』


 攻略さんからまた注意されてしまう。


 攻略アドバイスでは、決着がつくまではこいつと敵対してはいけない、ということだった。

 う~む、どうしたものか。


「あー……オレはそんな風には感じてませんが、キースさんのようなベテラン冒険者とは馬が合わなかったみたいですね。では、急ぐので失礼します」


 とりあえず適当に持ち上げつつ、この場を去ることを選択してみた。


「…ちっ、どうなってもしらねーからなー!」


 意外にもキースはすぐに引き下がっていった。これは敵対したことにはならないよね?そう信じたい。


 事なきを得て、ギルドから出ると、


「ねぇ!なんでもっと言い返さないのよ!」

 とソフィアから怒られる。


「いや…正直オレも言い返そうと思ったけどさ…詳しい事情を知らないからなー。逆恨みだとしても、クランが壊滅したのは事実みたいだし、仲間がやられておかしくなってるのかも、と思ったら強くでるのもどうかな、と思って」


 それらしい理由を述べてみる。

 本心は、あいつグーパンしたい、だ。


「それは…そうかもだけど…」


 ご、ごめんね、ソフィアたん、オレも本心じゃないんだ…


「あっ!コハル!荷物預かるわよ!」


 暗い空気を変えるべく、ソフィアがコハルの荷物を受け取ってアイテムボックスしまう。


「うん、ありがとう、ソフィア」


 そんなソフィアに対して、コハルも控えめな笑顔を見せてくれた。


「ねぇ、コハルはあいつに言い返さなくていいの?」


「ボクのせいかもしれないから…」


「かもってことは、違うかもしれないのよね?」


「それは…わからない…」


 コハルが首を左右に振る。それ以上は話したくないのだろう。


「そう……もし!もしコハルが話してもいいって思ったら!いつでも話聞くわよ!」


「うん、ありがとう」


 ソフィアも今日のところはこれ以上深入りするのはやめたようだ。


 これから仲良くなれば、コハルから話してくれるかもしれない。それを待つことにしよう。

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