6章 炎髪ボクっ娘ポニーテール

第101話 次の目的地

 ガルガントナで数日過ごした後、オレは次の目的地について考えていた。

 というのも、ある課題が見えてきたのだ。


「ステラ、今日もお願いしていいかな?」


「もちろんです!」


 オレたちはガルガントナの町から外に出て、適当な原っぱで、練習用の刃がついていない剣を構えて向き合う。


「よろしくお願いします」


「はーい!」


 頭を下げるオレと元気よく手を振るステラ。


 ガキンッ!ガキンッ!


 ほどなくして剣士同士の打ち合いが始まった。


「くっ!」


 ステラの剣は重く、さばくので精一杯だ。


「うおぉぉ!」


 なんとか隙をつこうと気合を入れて斬り込むが、剣で受けられて力を流される。


「えい!」

「うわ!」


 体制を崩したところで、ステラの剣の柄で背中を叩かれ、オレはベシャっと地面に倒れてしまう。


「くぅ〜、強い」


「それほどでも♪」


「治療しますね」

 リリィが近づいてきて、背中にヒールをかけてくれる。


「ありがとう、リリィ。

 ねぇ、ステラ、さっきの剣で受け流すやつ、あれどうやってるの?」


「えーっと、剣で受けたあと、すぅーと力を抜いて、えい!って受け流すんです!」


「うーむ、わからん」


「だから、ステラに剣の先生は無理よ。ステラは天才型だもの。人に教える才能はないわ」


「えー!そんなことないですよー!私がライさんに手取り足取り教えてあげます♪」


「それ、前から言ってるけど、ライの剣、ぜんぜん上達してるようには見えないわ」


「う~ん、まぁ…ねぇ…」


 そう、少し前からステラには剣の修行に付き合ってもらっているのだが、オレの剣の腕はほとんど変わっていないように感じていた。


 これが新しい課題だ。


 そもそも、オレには剣の心得なんてなくて、最初に取得した〈身体強化〉のスキルでなんとなく剣を振り回せているだけだ。


 それに、この世界にはレベルという概念がないらしい。モンスターを何匹倒しても、冒険者ランクが上がっても、剣術が上手くなる、なんてことはなかったからだ。

 だから、オレの能力は転生後からあまり大きく変化していない。


「やっぱり、剣の先生が必要だよなぁ…」


「しゅーん…」


 オレが呟くと、ステラが見るからに悲しそうにする。


「ステラ、こっちきて。ステラにはいつも美味しい料理を作ってくれて感謝してるし、オレたちパーティの主力として戦ってくれて頼りにしてる。剣を教えるのが少し苦手だからって、ステラのことを愛してるのに変わりはないよ。

 それに、そういう能力を見て、ステラを好きになったわけじゃないって分かってくれるよね?」


「そ、そうですか?…うふふ♪そんな嬉しいこと言ってもらえるなら、拗ねて得しちゃいましたね♪」


 笑顔に戻ってくれる。

 オレの気持ちは伝わったようだ。よかったよかった。


 納得してくれたようなので、かわいい嫁の頭を撫でておくことにした。

 ということで、次の攻略対象は剣術を教えてくれる人だな。


 え?その辺の剣術マスターのオッサンに頼めって?


 いやですけど?


 美少女と修行するのがいいんじゃないですか〜。

 そもそも、そうじゃないと頑張れませんよ〜。

 わかってませんね〜。


 え?言うと思った?


「ライ、ライってば!」


「ん?なぁに?」


 脳内で会話してるとソフィアに声をかけられた。


「それで?次はどこに行くのよ?」


「そうだなー。まずは剣を教えてくれる人を探そーかな」


「ガルガントナにはおらぬのか?」


「あー、それはどうだろう?」


 少なくともオレ好みの美少女はいなかった。もちろん、攻略さんでこの周辺のマップは検索済みだ。


「ライ様……もしかして…ソフィアのときと同じこと考えてますか?」


「わたしのときと?どういう意味?リリィ?」


「ライ様は、オラクルで魔法の先生を探していたのですが、可愛い女の子じゃないとイヤだって言ってました」


「えっと……」


 え?そんな言い方しましたっけ?

 リリィさん、なんだか棘がありませぬか?


「ふ、ふーん…それがわたしってわけ?なかなか、見る目あるじゃない」


 あれ、ソフィアにも怒られると思ったけど、そっちのパターンか。

 うちの魔女っ娘は腕を組んでそっぽを向いていた。

 もちろん頬は赤い。かわいいじゃねぇか。


「つまり、可愛いおなごにしか剣を教えてもらいたくないということか?」


 ティナが呆れ顔でこちらを見てくる。


「ま、まぁ……要約すると、そういうことです…」


「ライさんの欲望はとどまることを知りませんね!」


 ステラはなぞのテンションではやしたたてくる。


「お、おっけーおっけー。次の目的地は、近いうちに決めるからちょっと待ってて」


 話がおかしな方にいきそうだったので、一旦待ったをかけて、ステラとの修行を再開した。


 剣を教えてもらうことはできなくても、戦闘経験を積むことはできるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る