第79話 クロノス教の孤児院
それから、オレたちは子守りを交代制で行いつつ、ギルドでの依頼をこなしていった。
2週間ほど経つと、みんな子どもたちと仲良くなってきて、子どもたちもオレたちと普通に話せるようになった。
ソフィアは最初の方は苦戦していたが、「魔法を見せてあげたら?」と提案すると、それがきっかけで子どもたちの人気者になれたようだ。
良かった良かった。
冒険者ランクの方も少しずつ上がっていて、ステラが上級Cになり、ティナが中級Cになった。ちなみにオレもランクアップした。
まとめるとこんな感じだ。
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ソフィア
上級A
オレ
上級B
リリィ
上級C
ステラ
上級C
ティナ
中級C
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冒険者ランクは順調に上がっているし、生活費も問題なく稼げている。
しかし、肝心の子どもたちの自立案は何も出ていなかった。困ったものだ。
そう思いながら今日もギルドに行ってモンスター討伐をして帰ってくると、また、あのゴリシスターたちに遭遇した。
「ギムリ!あんたはいつも足を引っ張るね!」
「そんなー!姉御!大目に見てくれよ!オレはアシスト専門なんだよ!」
「男なら自分で戦いな!」
「それは無理な注文だぜ!姉御!」
「なんで偉そうなんだい!はぁ、もういいよ!私は孤児院に寄るから今日は解散だ!」
「またかよ!姉御!物好きだねぇ!」
「うるさいよ!捻りつぶされたいのかい!」
ギムリと呼ばれた男は舌を出して、「うぇー」、という顔をしている。
それよりも、孤児院と言ったか?そんなものがこの町にあるのだろうか。
オレはそこが気になって、ゴリシスターの後をつけることにした。
「あ、みんなは先に帰ってて」
と伝えて、一人でゴリシスターの後を追う。
彼女は北門の方に向かっていくと、門の近くの建物に入っていった。
そこは、かなり古い石造りの教会であった。教会といっても、そんなに立派なものじゃない、扉の横に、
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クロノス教会ガルガントナ支部
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と書いていなければ廃墟かと見間違うような風貌だ。
この教会が孤児院なんだろうか?オレはそれを確かめるために、扉を開けた。
扉を開けると、ゴリシスターともう1人、年配のシスターが話しており、その周りを2、3人の子どもたちが走り回っていた。
一応祭壇があって、教会のような内装にはなっているが、運営が厳しそうな雰囲気が見て取れた。
「ん?なんだい?今日は客が来る日だったかい?」
「いえ、そのような予定はないはずですが」
「あ、すみません。教会と書いてあったので、少し立ち寄らせていただきました。寄付をさせていただけるでしょうか?」
「へぇ、寄付なんて、この町じゃあ珍しいね。あんたクロノス教の信者なのかい?」
「いえ、オレは違うんですが、仲間に元シスターの子がいまして、クロノス教とは縁があるんです」
「そうかい。じゃあ、こっちの祭壇に来ておくれ」
「はい」
オレは言われるまま、祭壇の前に立った。
「寄付ってのは、なにを持ってきたんだい?」
「えーっと、以前は食べ物などを寄付したのですが、金銭でもいいのでしょうか?」
「そりゃ、あんた、助かるけど。いいのかい?」
「はい、それではこれを」
オレはひとまず10万ルピーが入った袋をゴリシスターに渡す。
「……あんた、これは、寄付にしては多すぎさ」
「そうなんですか?寄付は気持ちだと聞いていましたが」
「そりゃ……わかった、助かるよ」
そういってゴリシスターは祭壇にその袋を置く。
年配のシスターと3人で祭壇に祈りを捧げた。
そうしているうちも子どもたちが教会の中を走り回っている。
「あの、あの子たちは?」
祈りが終わったので、聞きたかった話を切り出した。
「あぁ、あの子たちは、この教会で保護してるのさ。ここは教会兼孤児院もやっていてね」
「そうなんですね。実はオレも今、孤児の子どもたちを面倒みていまして、大変ではないですか?」
「そうだね。グランアレスにはクロノス教が普及してないから教会には資金が足りてなくてね……なかなか厳しいところさ。
あんたのとこの子どもたちは、なんで孤児に?」
「村ごと滅ぼされたようです……そこに住んでいた友人と仲良くしていた子どもたちが、ここガルガントナで奴隷にされていまして…
2週間ほど前になんとかみんな取り戻すことができました」
「あんた……奴隷を買い戻したのかい?」
ゴリシスターが顔を歪める。
「え?えぇそうです」
「そうかい……まぁ……誰とも知らないやつの奴隷にされるよりは……
あんたみたいなヤツの奴隷の方がいいのかもしれないね…」
と言いつつ、イヤそうな顔だ。
「あの、なにか誤解されているようですが、子どもたちの奴隷契約は解除しましたよ?」
「……は?じゃあ、なにかい?
高い金払って買い戻して、それから奴隷契約を解除したっていうのかい?」
「そうですけど?え?当たり前じゃないですか?」
「……はは!あんた!面白いやつだね!気に入ったよ!あんた名前は!」
ゴリシスターは豪快に笑いながら聞いてくる。
「ライ・ミカヅチです」
「そうかい!あたしは、冒険者クラン〈救いの十字架〉のリーダーをやっているアリア・バンガードさ!」
ゴリシスターが握手を求めてくる。
「よろしくお願いします、アリアさん」
「よろしく!ライ!」
オレたちは握手をしてから手を離す。
「実はね!ここにいる子たちは、あたしが奴隷商から買い取ってきたのさ!そして!あんたと同じように自由にしてやった!そんなことしてる物好きが他にもいたなんてね!」
「アリアさんは素晴らしいシスターのようですね」
「よしとくれよ!」
「ここには何人の子どもたちが?」
「今は6人さ!」
「保護した子たちは今後どうなるんでしょう?」
「もちろん、大人になるまで面倒をみて!立派に自立させてるさ!それが孤児院ってもんだろう!」
「素晴らしい取り組みです。ぜひ応援させてください」
「あんたホントにいいヤツだね!いつでも来ておくれよ!」
オレはゴリシスターと年配のシスターに手を振って教会を後にした。
なるほど、ちゃんとした孤児院がこの町にはあるんだな。
オレは子どもたちの今後について考えながら帰路についた。
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