第52話 ファビノ食堂を守るために
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エルネスタ王国騎士団西方支部を壊滅させ、ステラを攫ってください。
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それが攻略スキルによって新しく表示されたアドバイスだ。
オレはステラに打ちのめされた後、リリィとソフィアの肩を借りて宿屋ふくろうに戻ってきた。
リリィの回復魔法のおかげで大したことはないが、ダメージが深かったらしく、身体が重かった。
「なによ!ステラのやつ!なんであんな騎士団のために!」
「…ステラさんにも立ち場があるのはわかりますが…今回のことは…納得できません…」
「そうだね…オレが勝ってれば…ごめん…」
「ライ様は悪くありません!」
「ライは悪くないわよ!」
情けなく下を向くオレを2人が擁護してくれる。
「それに…わたしたちが急かしたのもあるし…」
オズワルドを一旦放置しようとしたオレをけしかけてしまった、とソフィアは責任を感じてるんだろう。
「いや、2人に促されなくてもオレはあいつのところに行ってたよ」
だから、同じ気持ちだったとフォローを入れた。
「あの、これからどうしましょうか?」
「どうするって言っても、わたしたちじゃどうにもできないわよ、、」
「いや、ちょっと気になることがある。一度考えをまとめるから、また明日話してもいいかな?」
2人は頷いてくれたので、今日はこれまでにして、ふくろうの食堂に向かうことした。
階段を降りると、もう閉店間際だったようで、片づけをしているおかみさんに遭遇したが、気前よく食堂の中に通してくれた。
「おぉ!にいちゃん!大丈夫だったかい!なんだい!喧嘩でもしてきたのかい!」
席に着くと、大将が話しかけてきた。さっき宿屋に戻ってきたとき、2人の肩を借りて歩いていたオレを目撃し、そう思ったのだろう。大将は少し面白そうだ。
「ははは、そうですね、実は騎士団長と派手に喧嘩しちゃいまして…」
「……ステラ嬢ちゃんと?嬢ちゃんが他人にそんなことするイメージつかねぇな?」
大将が怪訝そうな顔をする。
「ステラのことご存知なんですか?」
「そりゃおめぇ!師匠の娘をしらねぇわけねぇさ!」
そっか、大将はファビノ食堂の弟子だった。
「んーでも、おめぇ、なんで嬢ちゃんと喧嘩を?」
「その話、あたしにも聞かせておくれ」
奥からおかみさんも出てきて椅子に座った。
オレたちは騎士団でのことを詳しく話すことにした。大将とおかみさんはこの町の住人だ。なにか、ステラのことを教えてくれるかもしれない。
「なんだそりゃぁ!そんな騎士団やめちまえってんだ!」
オレが怪我して帰ってきた経緯を話すと、大将は騎士団に対して怒りを露わにした。
「まさか、あの子……まだ店を守ってるんじゃないだろうね?」
「いや、かぁちゃん、もう師匠はいねぇんだから、そんなことあるかよ?」
「あの子は優しいからね。わからないよ?」
「店を守ってるってなんですか?詳しく教えてもらえないでしょうか?」
「いや…でもねぇ…」
「お願いします。ステラは大切な友達で…仲間なんです」
「…わかった!話してやるよ!嬢ちゃんを助けてやってくれ!」
そして、大将が口を開く。今回はおかみさんも止めないようだ。
話を聞くと、大将とおかみさんは、ステラのことを小さいころから知っていて、娘のように可愛がっていた、とのことだ。
おかみさんの話によると、ステラの力が騎士団の目につき、当時の騎士団長が熱心にステラを騎士団に勧誘。ステラが断り続けていたら、ファビノ食堂を潰す、と脅しをかけてきた、とのことだ。
「この話はリングベルの住民の間では有名だよ、誰も口にしないけどね」
「なんだよそれ…」
「あの子は、それで騎士団に入って、偉くなったら店を守れると思ったのかね。気付いたら数年で団長にまで上り詰めてたのさ。
…でも…そのころには、親父さんは亡くなっていたけどね…」
「……」
オレたちはなにも言うことが出来なかった。
「でも、にーさんたちには、ステラ嬢ちゃんも心を許してるんじゃないかね?私が知る限り、人を傷つけれる子じゃないのさ、あの子は。そんな子がにーさんを殴り倒したって言うなら、よっぽど何かを覚悟したんじゃないかね」
そこまで話を聞いて、オレたちは部屋に戻る。
攻略スキルを開くと、
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ステラ・ファビアーノ・エルネスタ
好感度
88/100
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あれだけオレをボコボコにしたにも関わらず、好感度がかなり上がっていた。
それを見てオレは、ステラがオレの言葉を聞いて揺らいでいると確信する。
「オレたちと来い」
そう言って、手をのばしたが、届かなかった。
だけど、次は掴ませてみせる。
絶対にあいつを連れていくと決心した。
♢
それぞれシャワーを浴びて寝るためにベッドに入る。今日もオレは一人でベッドを使い、もう一つのベッドでリリィとソフィアが仲良く眠っている。
2人が寝静まったあと、オレはアイテムボックスからメモ帳を取り出した。
そう、転生したときにスキルや魔法名、武器の名前、それらの特性をメモしたものであった。
パラパラとめくっていくと、
「あった……」
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雷帝剣キルク
・シエロス山脈を根城とする雷龍キルクギオスが守護する剣
・彼に認められたものだけが所持することを許される
・所持者は剣を抜いている間、身体能力が2倍に向上する
・所持したものは神級魔法を習得する
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オレはこのメモ帳があったから、旅の途中でおじいさんから雷龍キルクギオスの名前を聞いてからずっと気になっていた。
だから、リングベルについたら、すぐに周辺の地名を確認していた。
城塞都市リングベルの西側、国境沿いにそびえ立つ山脈の名前は――
シエロス山脈であった。
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