第3話 異世界転生とチートスキル

「外観の設定は以上です。次にスキルを選択してください」


「ぉおおお」


 目の前に把握しきれないくらいの文字が浮かびあがる。


「スキルは20ポイントを割り振ることで習得することが出来ます。1つも選択しないことは出来ますが、合計20ポイントを超えるスキルを習得することは出来ません」


「なるほど」


 空中に浮かんだ文字を見ていく。


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火属性魔法(上級)

 3ポイント

剣技レベル(中級)

 2ポイント

浮遊

 2ポイント

交渉

 2ポイント

神器:炎帝剣レーヴァテイン

 8ポイント

農業(基礎)

 1ポイント

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 などなど、様々なジャンルのスキルが散らばっていた。各スキルの隣にポイントが書いてある。

 試しに1つ選んでみる。


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神器:炎帝剣レーヴァテイン

 ・炎帝龍が守護するヴォルガ火山地帯にて入手することができる剣

 ・所有者は火属性魔法神級までを習得し、火属性耐性が最大になる

 ・剣を振るうことで周囲を焼き尽くす

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『このスキルにしますか?』


「んー、いいえ」


 なるほど、スキルを選択するとそのスキルの説明が出てくるようだ。おもしろい。


「スキルをジャンルごとにまとめれる?」


『可能です』


 回答と共にスキルがまとまる。


 魔法系、戦闘系、道具系、日常系、などといった具合に分類された。


 さっきよりは見やすくはなったが…


「いやー、これだけの数があると考えるのが大変そうだ。メモとか欲しいな」


 そう呟くと、メモ帳とボールペンが手元に現れた。


「おぉ、気が利いてるね」


 ボールペンを手にとりメモ帳を開いてスキルを見ていく。


「んー、やっぱ魔法とか剣とか使って俺TUEEEやりたいよな。そんで、俺TUEEEやってれば美少女が沢山よってきたりして」


 ぐへへ、という効果音が似合いそうな笑みを浮かべる。


 いやいや、そんな都合よくいくわけないか。頭を左右に振る。


「えと、転生先でオレは主人公的な立ち位置なの?つまり、都合よく出世したり、美少女が向こうからやってきたりとかするん?」


『いいえ、一般的な人族として転生します。そこに特に補正はありません』


「な、なるほど」

 

 そう上手くはいかないか。いや、でも外見をこんだけ変えてもらえただけでも上々だよな。

 じゃあ、やっぱり選択するスキルが重要になってくる気がする。


「んー、女の子を惚れさせるようなスキルってある?」


『……』


 さっきまでスラスラと答えてくれた神様?が黙ってしまう。


「な、なにか?」


『いえ、そういったスキルの一覧を表示します』


 なんだか、天の声から圧を感じつつも、その一覧を覗きこむ。そんなこと聞いてくるんじゃねーよ、と言われているような気がした。


「うわっ、たっか……」


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催眠

 15ポイント

奴隷契約(神級)

 20ポイント

魅了

 12ポイント

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 20ポイントしか割り振れないのにずいぶんと高いポイントに驚いて、詳細を確認していく。


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奴隷契約(神級)

 ・魔法耐性のない対象であれば、強制的に奴隷契約を結ぶことができる。

 ・対象は所有者の命令に逆らうことはできない。


魅了

 ・異性から魅力的な印象を持たれる。

 ・長い時間一緒にいると効果は蓄積する。

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「な、なるほど…」


 たしかに強力なスキルだ。ポイントが高いのも頷ける。


 このスキルを使ったことを想像し「ゴクリっ」と生唾を飲み込んでしまった。


「いやいや!こういう無理矢理系はあんまり好きくないし!ちょっと違うかな!」


 極小の良心を絞り出しつつ、大きな声を出す。


「あー、女性にモテる、とか。本気で好きになってもらえる。みたいなスキルはないでしょうか?」


『……一覧を表示します』


 やれやれ、といった声色だ。気のせいだと思いたい……


「ん?これは?」



 オレはスキルを片っ端から見漁って、やっとのことで決めることができた。ここまで3時間である。いや、まぁ時計とかないから感覚だけど。


 それで、オレが選んだスキルは以下の通りだ。


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攻略

 10ポイント

主従契約(初級)

 2ポイント

身体強化

 4ポイント

雷属性魔法(上級)

 3ポイント

初級魔法適正

 1ポイント

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 ピッタリ20ポイント。自分が理想とする生き方を想像して悩みに悩んで選びぬいた。

 一つずつ見ていこう


 まず、選んだスキルで1番欲しいと思ったのは、

〈攻略〉

 これが必須だったから10ポイントをまず使って残りは逆算して選んだ。


 オレの異世界での目的としては、

  ①モテたい

  ②俺TUEEEがやりたい

 この2つだ。


 だから、5つのスキルのうち3つは、俺TUEEEのために選んだ。


 まず、

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身体強化

 ・肉体を強化することで特級C冒険者レベルの身のこなしをすることができる。

 ・ステータスに特級C冒険者の平均値をプラスする。

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 転生先には冒険者という制度があり、初級、中級、上級、特級、神級、という段階でレベルが上がっていくらしい。

 それぞれの階級の中にもA、B、C、と3段階あり、Aの方が強いようだ。


 つまり、特級Cというのは上から6つ目、まぁまぁ強いんだと思う。その身体能力を手に入れれば、きっと序盤の方では苦労しないんじゃないだろうか。


 次に、

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雷属性魔法(上級)

 上級から初級までの雷魔法を使うことができる

 使える魔法一覧

  ライト

  フラッシュ

  サンダー

  サンダーボルト

  ・

  ・

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 こんな具合に大量の魔法名が記載されている。やっぱり、剣と魔法の世界にいくなら魔法を使えないとね!

 じゃあ、どの魔法にするか。もうココは趣味である。


 自分が好きな漫画のキャラが雷属性だったから、これを選んでみた。子どものころから殺し屋の家庭で訓練してて毒じゃ死なないあのキャラだ。


 魔法についても、初級、中級、上級、特級、神級というランクがあったが、神級の魔法にはスキルポイントが10も必要だった。


 ホントは全属性神級!最強の魔法使い!とかもやりたかったが、スキルポイントが全然足りないし、諦めた。


 あと、取得したスキルは、

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初級魔法適正

 どの属性の初級魔法も努力次第では習得可能となる。

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 というものだ。火を起こしたり、水を出すことができれば日常的に便利そうだし、雷以外の魔法も使ってみたかったからコレを選んだ。


 ただ、努力次第、という文言が気になっている。猛勉強しないといけない、とかだったら憂鬱だ。


 最後に、

〈攻略〉と〈主従契約(初級)〉

 これはセットみたいな感じで選んだ。


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攻略

 ・攻略可能な対象を検索することが出来る。

 ・攻略対象として設定すると、その人物の好感度が上がるようなアドバイスが

  表示され、好感度を大きく左右するイベントを予見できる。

 ・攻略可能な対象の好感度を確認することが出来る。

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 これが1番欲しかった。10ポイントもかかったけど、めちゃくちゃワクワクするスキルだ。

 これを使えば美少女とお近づきになれそうな確信があって選んだ。


 ずるいような気もするが、合法的に正規ルートで好きになってもらえそうな気がする。知らんけど。

 それに無理矢理じゃないってのがいいよね。


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主従契約(初級)

 ・相手が同意したときに限り、主従契約を結ぶことができる。

 ・契約を結ぶと離れていても意思疎通がとれるようになる。

 ・従者の魔法耐性が低い場合に限り、主人は従者の本音を喋らせることができる。

 ・相手が同意したときに限り、子どもを作るかの可否を設定できる。

  (随時、変更可能)

 ・契約には媒体が必要。

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 これは実際に攻略スキルを使ってパーティーが増えたあと、便利かなと思って選んだ。

 特に必要だと思ったのは下から2番目の効果だ。冒険中に子どもができても困るなと思って、このスキルを採用した。


……ホントにそんな相手ができるか知らんけど…


 ちなみに、避妊効果のある魔法もあったがスキルポイントと効果を天秤にかけてこっちにした。


「よし!これでオッケーだな!」


『スキルの設定が完了しました。最後にプレイヤーネームを決めてください』


「んー名前かー。今の名前使うのはなんかなー。生まれ変わったって感じしないし」


 雷魔法の使い手…雷の剣…拳、雷雲、雷帝、雷空…


「ライ…うん。名前はシンプルにライにしよう」


 あとは、苗字。雷の神様って誰がいたっけ?


 トール、ゼウス、スサノオ、タケミカヅチ…


 どれもそのままだと仰々しいな。タケミカヅチさんから一部もらって――


「ライ・ミカヅチ、でどうだろう?この名前って珍しいかな?」


『いえ、転生先では多様な種族がいますので氏名を珍しがる文化はありません』


「なるほど!じゃあ決定で!」


『全てのキャラクター設定が完了しました。別世界への転生を開始します』


 頭の中の声がそういうと、オレの体が光だした。


「あの、なんでオレを選んだんですか?」


「特に理由はありません。世界のバランスを保つ一環です」


「な、なるほど。あ、ありがとうございました!」


「……」


 とっさに感謝の言葉を述べたが、頭の中の声からは何も返答がなかった。


 そこでオレの意識は刈り取られる。

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