第2話 異世界転生とキャラクターメイキング

「はぁ〜、今日もつまんないなぁ〜」


 カチカチカチ


 なんとなくパソコンを開いてネットサーフィンしながら呟く。サラリーマンになって数年、とくにやりがいもなく、なんとなく仕事を続けてきた。


「ん〜…アニメもだいたい見終わったしなぁ〜。YouTubeでも見るかぁ〜」


 非常に無気力である。


 会社行って、ネットサーフィンして寝る。その繰り返しの生活に飽きていた。


「はぁ〜、カワイイ彼女でも欲しいよ。人生たのしく変わらないかなぁ〜」


 そんな、誰もがふと思うようなことを呟いたとき、パソコンの画面が突然真っ暗になった。


 ブツっ


「おわっ!こわれた!?マジか!?」


 慌てて画面に近づく。何も映らない。


「マジかー……再起動したらどうにかなるかな?」


 机の下のパソコンを覗きこんで、状態を確認し、電源ボタンを長押しする。押し終わったあと、机の下から顔を出すと――


 モニターだけじゃなく、部屋の中も真っ暗になっていた。


「停電?」


 呟きながら、キョロキョロと周りを見渡す。


 雷も鳴っていないし、何の物音もたっていない。それなのに電気が消えている状況に不気味な雰囲気を感じた。


 というか、いつ停電した?停電したことに気付けなかった。


 疑問に思っていると、ボヤッとパソコンのモニターが光り出す。


 やけに眩しい。


 モニターを見ると、そこには真っ白な背景に黒字でこう書かれていた。


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生まれ変わりたいですか?

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「……はい」


 オレは、今の不可思議な状況をいぶかしんでいたはずなのに、気づけばそう答えていた。

 オレの回答に応えるように、パソコンの画面が明るくなっていく。


 眩しい。

 

 見ていられない。


 たまらず目を閉じる。



 少しして、恐る恐る目を開けると、オレは真っ白な空間にいた。

 なにもない。けど地面はある。

 どこまでも真っ白な空間に立ちすくんでいた。


 なんだか夢心地な気分だ。現実感がない。


 ボーっとしていると、頭に直接声が聞こえてきた。


『あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行なってください』


「キャラクター設定?」


 疑問を口にすると答えが返ってきた。


『キャラクター設定とは、転生先での外見、スキル等を自ら選び決定することを指します』


「なるほど」


 おかしい状況なはずなのに、夢でも見ているような気持ちで、しかし、夢なら楽しむかー、と考えを改めて流れに身を任せることにした。


『それでは、キャラクターの外見から設定してください』


 そのセリフと共に目の前に大きな鏡が現れた。


『今の外見を継承しますか?』


 さえないサラリーマンのオレが全裸で映し出されていた。


「んー……いいえ」


『新規キャラクターを作成します』


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① 今の外見をベースに修正する。

② 新規で作成する。

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『どちらにしますか?』


「んー、①かな。まったくの別人はなんか怖いし」


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年齢を設定してください。

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「まー若くしたいよね。転生先の成人年齢は?」


『文化圏により異なりますが、おおむね16歳が多いでしょう』


「平均寿命は?」


『人族の寿命は現在の世界と変わりません』


「なるほど。じゃあ、20歳で」


 鏡の中のオレの見た目がすぅっと若くなる。あんまり老けた実感はなかったけど、やっぱり若くなると結構変わるもんだ。


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身長を設定してください。

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「……転生先の男性の平均身長は?」


『人族の場合、170センチです』


「じゃあ173センチで」


 身長がグググっと伸びる。


「おぉー」

つい声が出てしまう。


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体型を設定してください。

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「あーそれは細マッチョでしょ。ムキムキすぎるのはあれだけど、いい感じに腹筋とか割れてると最高」


 みるみるオレの体型が変わっていく。


「うぉー」


 ライト級ボクサーのような体型だ。カッコいい。鏡から目を離し、ペタペタと腹筋を触りながら確認する。カチカチだった。


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肌の色を設定してください。

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「それはこのままで」


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髪型を設定してください。

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「あー、んー、髪型はよくわかんないな。なんか短髪でいい感じにオシャレにしてください」


 そういうと、少しウェーブがかかったような髪型になり、ワックスでセットされたかのように整った。触っても崩れない。不思議だ。


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髪の色を設定してください。

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「色かー。転生先の世界でオレンジ色の髪の人っている?目立つかな?」


『人族には少ないですが、世間的には珍しくありません。悪目立ちはしないでしょう』


「じゃあ、オレンジで。あーでも、死神代行ほど濃い色じゃなくて、FPSが上手いVTuberくらいがいいな。あーそれくらい」


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顔の造形を設定してください。

顔はそれぞれのパーツごとに設定できます。

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「んー。一個ずつ設定してもよくわかんないな。今の顔の特徴を残したまま、いい感じにイケメンにできる?」


『わかりました。転生先の基準で整った顔立ちに修正します』


「お?おぉぉ〜。たしかに整ってる。でもオレってのはわかる。うわぁ〜、こんな顔に生まれてたらなぁ〜……」


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体毛の濃さを設定してください。

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「え?あぁ」


 顔を見て感動してたら、次の指示がくる。しかし、顔をじっくり見ていたことで違和感に気づく。

 あれ?そういえばメガネなくてもよく見えるな視力の設定ってしたっけ?


『視力はデフォルトの数値に設定してあります。変更しますか?』


「いや、メガネなしでいけるなら、このままがいいや」


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体毛の濃さを設定してください。

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 再度同じ指示がとんでくる。


「あー。女性受けが良さそうなくらいで?」


 そういうと、チンコの周り以外の体毛はスッキリとなくなった。もちろんヒゲも一切ない。

 脱毛サロンのCMはウソじゃなかったらしい。モテる男はツルツルのようだ。


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陰茎のサイズを設定してください。

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「陰茎?チンコ?じょ、女性受けがいいくらいで??」


ムクムクムク


「……」


 なんか大きくなった気がするが見ないようにした。うん。べつにオレ、粗チンじゃないし。


 ……粗チンじゃないんだからね!


「外観の設定は以上です。次にスキルの選択に進みます」

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