第16話
「しかし、一体、どうして、池田は千堂を殺したんだろう?」
「それは正直、分からないな。池田本人に訊くしかないが、今となってはどうしようもない」
「だよなぁ」
宗太が気落ちした様子で答える。
もし背景が分かれば、記事はより一層興味深い内容になるはずだ。
「ただ、アキの犯行は計画的だと思う。その線で調査を続ければ、あるいは...」
「どうして、計画犯だと思えるんだ?」
「カバンだよ。あの不自然に大きいボストンバックは、衣類を隠すためだ。返り血を浴びて、真っ赤に染まったコートをバックに仕舞い込んで、アキは逃走をする計画だったんだ」
「牧口の登場で随分と予定が狂ったが、当初の計画では、返り血は、そうやって誤魔化すつもりだったんだ。きっと、スタンガンも防犯用ではなく、致命傷を与える前にじたばたされると困るから、用意していたんだろう」
「たしか、池田は定期的に、そのカバンで出勤していたんだろう?であれば、その日に、都内で同様の事件が起こった可能性がある。それを追っていけば、動機も掴めるかもしれない」
結果として、池田アキは過去に2度にわたり、殺人を犯していた。
いずれもターゲットは若い女性で、金目的の犯行であった。
アキはホストクラブに通っており、そこでの遊興資金を欲していたらしい。
また、自分以外の女性がこの世から消えれば、自分が応援するホストが自分だけを見てくれる、との淡い期待を、友人に打ち明けていたことも判明した。
事件は完全に終幕を迎えた。
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます