第12話

「一旦、復路のことは脇に置いて、検討できる所から検討しよう」


「へえ、復路以外にも気になることがあるのか?」


「カバンの中身だよ。一体、どんな貴重な物が入っていたんだ?死の危険が迫る中でも、取り戻そうとするなんて、常軌を逸している」


「別段、目を引くものはないけどなぁ」


メモ帳を開きながら、宗太が言う。


「小物ばかりだ。財布とか、携帯とか」


「ひょっとすると、他人から見たら、ただのガラクタなんじゃないのか?それなら、警察が見落としていても、不思議はないだろう?」


「本人にとっての思い出の品、ということか?なるほど。可能性はあるな」


「例えば、財布は元彼から記念日にもらった品で、彼とは結婚を誓い合った仲だったけども、彼は式直前に不慮の事故で無くなった。で、以来彼との思い出を生きる支えにしてきたが、そんな財布が目の前で盗まれた」


「さあ、兄貴ならどうする?」宗佑は一気にまくし立てた。


「....諦めるかなぁ」


「いや、諦めるなよ....」

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