第8話
「まあ、いいや。それと、兄貴は見逃してたけど、この事件、他にも不審な点があるぜ」
「例えば?」
「牧口の行動だよ。奴はどうして、千堂のポーチを無視したんだろうか?金目当ての犯行なら、彼女のポーチも一緒に奪って逃げればいいじゃないか」
「既に両手が塞がっていた、とか?」
「かもしれない。でも、その可能性は低い」
「どうしてそう言い切れる?」
「牧口の指紋がついていたナイフが、事故現場に落ちていた。つまり、牧口は二人を刺した後に、そのナイフを現場に捨てたんだ」
「当然そうなるな」
「犯行の時に、牧口が片手だけでナイフを被害者に突き刺したとは考えにくい。それじゃ、人を殺すほどの威力にはならないはずだ」
宗太は、刑事ドラマで犯人が殺人を犯すシーンを思い出す。
たしかに、犯人はナイフを体の正面で、両手で構えている印象がある。
「牧口は、両手で、二人を刺したあと、ナイフをその場に捨て置いた。そして、池田の鞄だけ持って逃走した。ほら、もう片方の手が空いてるだろ?」
「そらお前、牧口も殺人のあとでいっぱいいっぱいだったのさ」
「まあ、そう考えることも出来るけど...」
宗佑は自分を納得させるように言った。
「それよりも、血痕だよ!血痕だよ」
宗太は急かすように言う。
「ああ、それなら、なんとなく掴んでる」
「ホントか!」
信じられない、という表情で宗太は言う。
「ああ、少なくとも、【往路】に関しては、俺の推理でほぼ合っていると思う。これは、ごくごく単純な推測だ」
「ほお、言うねえ。じゃあ、教えて貰おうじゃないか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます