第6話

「まあ、不思議と言えば、不思議だけどさ。そんなに大層な事でもないと思うけど」


「やけに自信あり気じゃないか。もう当たりが付いてるのか?」


「まあね」


「もったいぶらずに、言ってみろよ」


「返り血だな。それ以外、あり得ない」


二人の人間が死んだ。そして、殺害方法は刺殺である。現場は血の海。

となれば、犯人が、被害者の血液を大量に浴びていても全く不思議ではない。


「ナイフの指紋から考えてると、千堂と池田を殺害したのは、牧口で間違いない。となれば、牧口は、二人を殺害するときに、彼女たちの返り血を浴びたんだ」


「そう、それなんだよ!」宗太はテーブルを小気味良く叩いた。「俺も、絶対、返り血だと思ったんだよ!」


「じゃあ、違うのか?」


「ああ、違う」宗太はニヤッと笑った。


「牧口が病院に担ぎ込まれた時に、医師や看護師がその状態を確認している。その際に、事故による外傷はあったが、出血はそれほど多くはなかった。実際、牧口の死因は脳挫傷のうざしょう、つまり出血はむしろ頭の内部だ」


「たしかに、もし滴り落ちるほどの返り血なら、一瞥してそれだと分かるはずだ。現場の医師たちが見逃すはずがない」


「牧口は返り血は浴びていない。しかし、被害者の血痕があった。しかも、


「じゃあ、血はどこから来たんだ....?」

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