いつも厳しかった姉が義姉だと分かった途端、滅茶苦茶甘々になり、甘やかしたり、イチャつこうとしてくる件 ~そこにトップアイドルの幼馴染まで参戦してきて、もう大変~
第23話 恋人イチャイチャ ユウカ前編
第23話 恋人イチャイチャ ユウカ前編
「さて、昨日はミクちゃんだったけれど、今日は私ね」
「そうだね」
昨日、ミクとは和やかな一日を過ごした。
今日はミクの実質的なラストライブが行われ、俺たちも招待されている。
なので、それまで姉さんと家で一緒に過ごすという事になっている。
現在は朝の10時。
すでに姉さんはやる事の全てを終え、俺の隣に座っている。
目の前にある湯のみを持ち、一度お茶をすする。
「けれど、何をしましょうか。私とアヤトは今更何かをする、というような関係でもないですし」
「……確かに」
姉と弟。今になってそこに恋人関係という付随するものが生まれたが、結局は一緒に居るという事実は変わらない。
つまり、俺と姉さんを何をしたら良いのか、というのが俺自身も良く分かっていない。
姉さんはふむ、と呟き、顎に手を当てる。
「昨日、ミクちゃんとはどう過ごしたんですか?」
「どうって滅茶苦茶普通に健全に過ごしたよ?」
一部、過激な事はあったかもしれないが、それでも充分健全に過ごす事が出来た気がする。
姉さんはなるほど、と呟いてから口を開いた。
「そうですか。じゃあ、私たちも普通に過ごしましょうか」
そう言うと、姉さんは少しだけ下がり、ムチムチの太ももを軽く叩く。
「ほら、アヤト。膝枕してあげます」
「え? 良いの?」
「勿論です。さあ」
俺は姉さんの太ももに頭を預ける。
相変わらずやわらかくて心地よい。すると、優しく俺の頭を撫でる姉さんの手を感じる。
「ふふ……この撫で心地は変わらないわね」
「そう?」
「ええ、小さい頃からずっと変わらないわ」
小さい頃。
俺はその当時の事を思い出す。
昔はいつもミクと過ごす時間もあったが、それと同じくらい姉さんと過ごす時間があった。
姉さんは時々こういう事をしてくれた。
俺はそんな姉さんのぬくもりを感じながら良く眠っていた事を思い出す。
何も変わらないし、変わる事もないだろう。
姉さんは一つ息を吐く。
「貴方は小さい頃からずっと変わらないわ」
「ん?」
「私やミクちゃんの為にいろんな事を考えていて、今回だって私たちの最良の未来の為にたくさん悩んで、自分なりの答えを見つけた。私はそれが誇らしいわ」
「何言ってるんだよ。それは姉さんたちが居たからさ。姉さんたちが俺の背中を押してくれただけ。その勇気をくれたんだ」
俺は最初からこの選択が出来たか、と言われたら疑問が残る。
自分の中で何が正解なのか、不正解なのか、何も分からないまま未だに思考の渦に飲み込まれていただろう。
そう考えた時、俺は一つ大きな成長を出来たと思っている。
そして、その成長をこれから先もやめてはいけないとも思っている。
これから先は俺が姉さんとミクを守っていかないといけないんだから。
「だからって、一人で何でもかんでも背負う必要はないわよ」
「……分かってる。いざって時は姉さんとミクを頼るから」
「そうよ。それにお父さんとお母さんだって居るんだから」
今は二人とも、自宅を離れている。
けれど、時折姉さんとは連絡を取り合っているという事だ。
俺に来ないのは、姉さんさえ把握していればいいかな、と俺自身も思っているし、姉さんも有事は報告してくれるので、別にハブられてる、とかそういう話ではない。
そこで、俺は一つ気になり、姉さんに尋ねる。
「そういや、姉さん。お父さんとお母さんには話したのか?」
「……一応はね。姉と弟じゃないって事を知った時にね」
え? 俺は目を丸くする。
その時にはすでに話していたのか?
俺が驚いていると、姉さんは頭を撫でたまま言葉を続ける。
「お父さんとお母さんは最後まで話すつもりは無かったそうよ。でも、知ってしまった以上は話さなくちゃいけないとも言ってたわ。だから、きっと近い内に帰ってくるとは思うけれど……向こうも忙しそうだったから、どうかしらね」
「まぁ、そうだよな……」
二人はとにかく日々、忙殺されている。
海外を飛び回り、家に戻る事無く、毎日必死に働いている。
多分、俺たちに話しがしたくても、帰ってくる事が出来ないんだろう。
まぁ、これもいつもの事だ。
「別に俺が気にしてるなんて話はしてないんでしょ?」
「勿論よ。お父さんとお母さんにはアヤトは全然気にした様子はないから、安心して、って伝えておいたから。それには多少なりとも安心してたわ」
「なら、良いよ。後、恋人に関しては?」
「それは……そうね、話しておくべきね」
姉さんは俺の頭を撫でながら、言葉を続ける。
「どうも、お母さんは感づいていたみたいでね。その連絡をした時に言われたのよ。頑張れって」
「……え? そうなの?」
「ふふ、女の勘ってやつなのかは分からないけれど、多分、お母さんは全部気付いていたんじゃないかと思うわ。だから、これといって言ってきた事は何も無い」
「そっか……流石母さんだな」
「そうね」
俺たちの母さんは異常に勘が鋭かったりする。
女の勘と言えば、聞こえが良いかもしれないが、その実は超能力者か、と見間違える程。
母さんの前で隠し事なんて出来ないし、嘘もすぐにバレる。
だからこそ、仕事で大活躍しているんだが。
俺は一つ息を吐く。
「なら、そっちも心配いらないね。母さんは父さんの説得は得意だし」
「尻に敷かれてるだけよ」
「それは確かに。じゃあ、そっちもあんまり心配しなくてもいいんだな」
ちょっと心残りではあった。
両親が俺たちの関係を認めてくれるのか、という所が。
暮らしてきたのは姉と弟として暮らしてきて、血が繋がってないと分かった途端に恋人関係。両親からしても戸惑うものだろう。
でも、何というか。俺たちの両親って感じがする。こう、おおらかな所が。
「だから、貴方は自分が幸せなる事だけを考えなさい。それが私たちの幸せなんだから」
「……うん。分かってるよ」
「それなら良いわ。でも……私も諦めなくて良かったわ」
「姉さん?」
姉さんは俺の顔を真っ直ぐ見据え、口を開く。
「昔、貴方に恋心を抱いた時からずっと押し込めていた気持ち。絶対に叶わないって思っていた気持ち。それをようやくこう表に出す事が出来て、私はそれが凄く嬉しい」
「……俺もそこまで姉さんに大事にされてたなんて思わなかったよ。昔から、良く面倒は見てくれてたけどさ。だから、俺もその……ありがとう」
こういう時しかきっとお礼を言う事なんて恥ずかしくて出来ない。
少しばかりの気恥ずかしさを感じながらも、姉さんにお礼を言う。
すると、姉さんはクスっと笑い、俺の頬に手を添える。
「ええ、私も貴方が気持ちにこたえてくれた事、凄く嬉しいわ。これからも、ずっとずっと一緒に居ましょうね。絶対に離れたりしないから」
「うん」
そう言ってから、姉さんは俺にゆっくりと顔を近づけ、軽い口付けをする。
それから姉さんは俺の頭を優しく撫でたまま、言う。
「さ、貴方は少し休みなさい。今日の夜はきっと長くなるだろうからね」
「? それって?」
いったいどういう事だ?
俺が首を傾げると、姉さんが俺の唇に人差し指を当てる。
「ふふ、内緒よ」
「…………分かった。じゃあ、少しだけ寝ようかな」
「ええ、おやすみなさい」
それから俺は姉さんの心地よい膝枕のぬくもりを感じながら目を閉じた。
姉さんの優しくて暖かな気持ちを感じながら――。
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