第21話
「旦那ぁ、あれから何か分かったかぃ?」
「ああ、
中年の少し小太り気味の男は
「例の物
中年の少し小太り気味の男の言葉に
「上方を中心にそこそこの数が出回っていた。百程だな」
「
「ざっと二千両というところだな」
店主の答えに
「多いといえば多いけど、無茶をするには程遠いねぇ」
「まあ、そうだな。それにこのような物恒久的に売りさばける物でもないしな。中程度の
それとだな、やはり出元は西国だな。大坂、京、堺、名古屋、後金沢で確認できた。江戸にも少量入っている。出所の特定はさっき上げた順に量が減っているからだな。それと売り込んだ者の足跡を辿るとな」
店主の言葉に
「でだ、もう一つ、
店主の言葉にさすがの
「に、偽銭ってどれくらいだい?」
「ざっと七万両。
ただし、とんでもない程精巧なものでほぼ本物と区別がつかないらしい。これはまだ表に出ていない情報だ」
今までのことを整理しながら、そして結論に行き着く。
「もしかして、
「あ~、そういうことか。
そりゃあ大ごとだな。
どこの馬鹿がやったのかは知らんがこりゃあ
店主は腕組みをして唸る。
「なあ旦那。
出所の検討がついているんだが、そこに探りを入れてもらうことが出来るかぃ」
「おっ、おま、まさか……」
店主の動揺に鬼灯は慌てて手を振る。
「あっ、あたしが手え出すわけじゃないよ。勘違いしないでおくれよ。
姉川、肥前の姉川家だい」
店主は話を聞きながら真剣な表情を浮かべる。
「……なるほどなあ。
てか、そんな大ごとに首を突っ込んでいたのか、おめえさん」
店主は呆れたような表情と眼差しで
「そんな腐った魚を見るような眼をしないでおくれよ。
あたしだって好きで巻き込まれたんじゃあないやい」
鬼灯は頬を膨らませて抗議する。
「それで……か、お前さんが仲間を入れたのは?」
店主の言葉に鬼灯の眼が鋭く光る。
「旦那ぁ……どこでその情報を手に入れたんだぃ」
「はん……蛇の道は蛇ってやつさ。
情報源は俺の命さ」
二人の
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「
お城に詰めている大老と老中は御庭番からある知らせを聞き慌てて人を走らせた。
「この非常時に偽銭とは……、しかも西全土に広がっているとは、京都所司代と大阪城代、
西国で諜報活動をしていた
それはお城(江戸城)の上級役職に衝撃を走らせた。
わざわざ金座、銀座を作り、流通を管理しているはずの金、銀の偽銭が出回っているとの知らせだ。銭の発行権を管理している幕府には致命的なことである。
その推定量、小判換算で八万枚。
小判が主流のようだが、丁銀、文銭なども一部で回っているらしい。小判は本物と比べて若干の軽さ、輝きの明るさが判断の基準になるらしい。
丁銀はあまりにも軽く、輝きが失われないので割と簡単に見分けがつくそうだ。
文銭は、これは区別する手段が全くないという報告だ。
ただこれに関しては大老、老中はあまり気にしていない。
たしかに不正な銭ではあるのだが、正直それほど影響があるわけでは無く、区別して回収する必要性がないからだ。
問題は小判。
これは大口の取引には欠かせない存在だ。
偽銭を大量生産し、幕府の転覆などの軍資金に唯一なりえる存在。
「
「同じく
お城の大広間に二人の人物が入ってくる。
「大事になっていると……」
勘定奉行。
老中の方から幕府の金銭の総責任者である勘定奉行、吟味役へ仔細が報告される。それを聞いていた二人の顔色が徐々に青くなる。
「こ、この状況、上様には……」
「じきにこの場へお出ましになる」
大老の言葉に二人の顔は色が抜け落ちていた。
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