第20話
「
姉河家上屋敷。
姉河家側室のお
年のころは十五、六であろうか。蒲団の中から覗いた顔は色白で美しいが、まだ幼さを残した顔だ。
「母様、今日は体調は良いです」
姉河
姉河家当主
「そうかえ? ならば良いのじゃが」
お
「母様、先日より何やら屋敷の中が騒がしいのでございますが、何かございましたか?」
蒲団の中からじっとみつめる
「そちは気にせずともよい。ゆっくりと養生すれば良いのじゃ」
それだけ言うとお
お
「
暫し忙しく、日が開くとは思いますがまた参ります」
それだけ言うとお
続いて腰元も出て行ったので部屋には
「はぁ、愚かな母上。すべて私が後ろで動いていると気づくことは無いのでしょうね」
「……お呼びでございますか?」
天井の一角が音もなく開き、男の顔が覗く。
「彦四郎、いや
「五万両程」
「そう、そろそろ引き時ね。色々と知っている
「手練れを雇いました。まず大丈夫かと……」
「分かりました。それと、留守居役の
「あとは痕跡を消すだけね。
黒田、鍋島も大きい家だけど私はもっと華やかなところで派手に生きたいの。
そう、大奥とか御三家とかでね」
くすくすと
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「近松、暫し良いか?」
榊原は骨董屋
「どうかなさいましたか、榊原様?」
特に変わった様子が無いかを榊原は注意深く観察する。
「いやなに、先日の骨董屋の
その時に置いていった
その言葉に一瞬、近松の視線が反応した。
しかし次の瞬間にはその戸惑いは消える。
「また、突然どうなさいました?
あ、こちらでございます」
近松は疑問を投げかけながらも立ち上がると、番屋の奥へと歩き出した。榊原は近松の声色に若干の変化があることを確認すると近松の後についてゆく。
「いや何、先日の斬り合いの時に拾った槍があったであろう?
それがどうも引っかかっていたのじゃ。それでな
ただの確かめじゃ」
榊原は近松の疑問に答える振りをして情報を混ぜ、揺さ振りを掛けてみる。
「なるほど、そういうことでございますか。確かに
鑓術にはとんと才能がありませんので……」
そう言う近松の背中には何の変化もない。歩く歩調もそのままだ。
「まあ、老体の戯言に付き合わされると思ってくれ」
からからと笑う榊原に近松は若干の戸惑いを見せ、笑う。
「どうぞこちらでございます」
案内された部屋には様々な物が置いてあった。主に没収したものや事件に関わった物ばかりだ。
そしてその中にそれはあった。立てかけられた二本の槍。それはやはり別物であった。
榊原はおもむろに、
近松はその様子を傍でじっと見ていた。
暫くしてもう片方の
「いやあ、近松、済まなかった。
よくよく見てみると両方とも数打ち物だよな。
最初の鬼灯を狙ったやつが持っていた方は業物だったような気がしていたのじゃ」
そう言って笑うと榊原は近松の肩を軽く叩くとそのまま番屋の表へと向かってゆく。その背中を見送る近松の額にはびっしりと玉のような汗が噴き出していた。
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