第18話
「ちっ、よりにもよってあんたかい」
笠を被った細身の男。
その両手には大刀が二本握られていた。
骨董屋
「よく躱したな。
受けていればあの世行きだったものを・・・・・・」
細い男の口元が笑う。
「・・・・・・あんた
その問いに細い男の笑っていた口元が引き締まる。
「答える義理はない」
上下に切っ先を向けた構えで距離を詰めてくる
五尺を切った瞬間、ぬらりと動いた
みしりという音が二人の耳をうつ。
慌てて間合いを取る
離されまいと間を詰める鬼灯。
「てめ、指を折りに来やがったか・・・・・・」
「あんた・・・・・・、相当だね。
ちいと分が悪いかねぇ」
大刀の間合いを取られると不覚を取る可能性が圧倒的に高くなるからだ。得物が短刀しか無い
そしてそれをさせない
「やっぱり化け物かよ」
思わず後ろに飛ぶ
間合いが開いたことに
「さて、追い詰めた。
久しぶりに本気になったわ。
では、死ね」
その速さは
鉄のぶつかる音、鉄の焼ける匂い。
そして鉄臭。
「ごふ」
地面を濡らす赤い液体。
二人は再度間合いを開けた。
「手癖の悪い
「あんたこそ、か弱い女を襲って楽しいのかねぇ。
しかもこんな年増をねぇ」
にやりと笑う
「さて、次は油断はせぬ。
・・・・・・いざ」
その様子に
どちらともなく突然動く。
「ちっ」
再度五尺ほどの間合いに入ったとき、それは
視界が赤黒く染まる。
一瞬だけ止まった
そのまま
「またね。
次はこっちから狙わせてもらうよ」
そう言って人通りの多い方角へ走り去る
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「ったく。
乙女の肌に傷なんか付けてくれちゃってさ」
骨董屋
針を焼き、糸で縫ってゆく。その表情は何故か一切歪むことは無い。
ただただ淡々と縫ってゆくだけだ。
それからすぐに愛刀を引っ張り出し、何時でも対応出来るようにしてから腕の傷口を縫い合わせ始めたのが先程だ。
(しかしまぁ、油断したとはいえ、久しぶりに手傷を負ったねぇ。
ありゃあ、榊原の旦那の手にはきついかな)
傷口を縫い終わった
「あぁ、酒が飲みたいねぇ。
まだ来ないのか・・・・・・」
実際、酒屋の届けてくれる時間までは半刻ほどある。
その配達を待つ間に
(ふむ、何処も傷んではいないようだね)
利き手を斬り裂かれた
【ぴっ】という音が静かな
「痛いわ!」
傷自体はそれほど深くないのだが
痛みに堪え性が無いのだ。
それは刀だけでは無く武芸全般においてだ。何故そこまで強くなったのか。
理由は至極簡単なものであった。
【痛いのは嫌。
傷付けられる前に殺せば痛くない】
これが
これを知る者はいない。
(まいったねぇ。
今回は刀だけだったから何とかなったけれど、
早ければ今日、もう一回来るかねぇ)
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