第2話
「・・・・・・すまないが両替を頼めねぇかぃ」
年の頃は四十程であろうか。
ひょろりと細長く、丈は六尺に届くかどうか。着流し、帯には刀を二振り差している。顔は深い笠を被り、目線を見せない。
全体的にぬるりと感じさせる雰囲気を醸し出している。そして発せられたその声もぬるりとした細長いものであった。
「・・・・・・兄さん。ここは両替商じゃあないよ。他を当たりな」
その無愛想な言葉を受けても男は黙って戸口に突っ立っていた。
深く溜息をついた
「いきなり何すんだぃ!!!」
かしゃんという音が響く。
「・・・・・・あ、
音の具合でどの壺が割れたかを悟る
この
二撃目。
次の瞬間更に数枚の器が割れる音が響く。
「あぁぁぁぁ・・・・・・、
伏せた状態から立ち上がりつつ、風を切る音と共に一気に間合いを詰める
しかし既に遅い。
「着想は良いんだけどねぇ、あんたの失敗はあたしを怒らせたことだぃ!」
細い男はぐにゃりと膝を折りながら真下へと崩れかける。
しかし、細い男は崩れなかった。
その隙に細い男は長い棒をそのまま手放すと四尺程真後ろへ飛びすさる。
「ちっ、腕は噂通りか・・・・・・」
細い男は頭を振りながら
「・・・・・・あんた、
しかしその鋭い突きは二刀によって上手く逸らされた。そのまま
一瞬で詰まる間合いにも
反射的に飛び
「・・・・・・、
うちの売り物壊したんだ、せめて名乗りなよ。すぐにあの世に送ってやるからさ。
「・・・・・・造形が深いのだな。唯の骨董屋にしては知りすぎ・・・・・・だっ!」
細い男は再度
細い男が放った数倍の速度の突きが繰り出された。
慌てて二刀を使い
「ちっ、化け物め・・・・・・」
ゆらりと細い男が動く。
「かぁぁっ!」
が次の瞬間細い男の叫びと共に刀が地に落ちた。
先程の頬の傷とは違い今度は細い男の左腕がざっくりと斬れ、肉が捲れ上がる。少し遅れ大量の
「油断したねぇ。あんた、自分の流派の特徴を忘れてどうするんだい?」
細い男の怪我、それは鎌にあった。
槍は突くものと思われがちだが四等分の一は合っている。あながち間違いでは無いのだ。
しかし槍の本当に恐ろしいところは斬る所にある。通常の穂先でも充分に斬れるが槍という物はそれだけでは無い。
ちなみに残りの二つは払うと叩くだ。
今回、細い男が持っていた槍は
先程
ここまでは相手を探る情報集め。
そして流派が分かればある程度の対処は可能だ。
江戸には数百の流派がひしめきあっている。ある程度の内容を知ることはそれほど難しいものではない。
特に
「さぁて、誰の差し金かは心当たりが多すぎて分からないがね・・・・・・、そろそろ死ね」
鋭い突きが細い男を襲う。一撃では無い。連撃が襲う。
細い男は一振りの刀で上手く
突然払われる足。
「悪手だねぇ」
細い男も自分の置かれた状況に顔を
【ぱちん】という音と共に蒼い火花が起こる。細い男はそのまま宙で一回転をして鬼灯から離れた場所に着地をした。
お互いに睨み合う。
「何事じゃぁ!」
大声と共に数名の岡っ引きと同心が走ってくる。
呼び笛も鳴らされている。
遥か奥にはに
二人が周囲を視線だけで見回すと巻き込まれない範囲に町人達が見守っていた。誰かが役人を呼んだのだろう。
「ちっ、邪魔が入った。勝負は預ける・・・・・・」
細い男は苦々しい表情を浮かべ、それだけ言うと【たん・たんっ】と後ろに飛び槍の間合いから外れる。
そのまま一気に町人達の囲みに突っ込んだ。
巻き込まれてたまるかと慌てて道を開ける町人達。
細い男はまんまと囲みを抜け逃げ出す。後には
「・・・・・・またお前か、
にっこりと笑う同心と岡っ引きに囲まれてがっくりとうなだれる
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