第25話

 前回のあらすじ。

 このはがアホだった!


「……どうしよう」


「分かったらから、たくし上げてるスカートを降ろせ」


 オロオロとしながらも、スカートをたくし上げているこのは。

 周りから見れば、色々と誤解されそうなシチェーションである。

 なので、さっさと手に持ったスカートを降ろさせる駿介。

 

「このは、今日の水泳は見学にして、そのままで過ごすというのはどうだ?」


「せっかく水着着て来たのに、勿体ないじゃん!」


「アホかッ!」


 そんな事を言っている場合ではない。


「それに」


「それに?」


「水着着て来たのに水泳の授業見学とか、ボクがバカみたいに思われるじゃん!」


「そっかー……」


 既にバカなんて言葉じゃ言い足りないレベルのアホだ。

 勝手にしろと言いたい気持ちをグッと抑え、駿介は必死に考えを巡らせる。

 ほっといたら、泣きつかれる未来が見えるだけなので。

 流石に濡れたスク水の上から制服を着るわけにもいかないし、かといって下着を着ないで制服を着るわけにもいかない。

 そこ考えて、駿介がある事に気づく。


「下着を忘れたって事は、タオルも持って来てないだろ?」


「それくらいちゃんと持って来てるよ!」


「だったら下着もちゃんと持ってこい!」


 もしタオルを忘れていたなら諦めさせることが出来たのに、何でタオルはちゃんと持って来てるんだよと悪態をつく駿介。

 頭を抱える駿介に、このはがドヤ顔でタオルを見せびらかす。


「今日はお気に入りのタオルを持ってきたんだ。可愛いでしょ!」


「アーハイ。ソウデスネ」


 適当にあしらうように返事をする駿介に、なおもドヤ顔を見せ続けるこのは。

 今はアホこのはの相手をしている場合ではない。下着問題をどうするかが先だ。


「仕方がない」


 軽くため息を吐く駿介。

 このはのアホ可愛い笑顔をこのは曇らせないために、覚悟を決めたようだ。


「おっす、真紀。下着の替えってないか?」


 隣の教室に移動し、幼馴染を見つけ声をかける駿介。

 直後、バチーンという音が教室に響き渡る。当然である。

 このはのアホ可愛い笑顔のために、駿介は幼馴染の笑顔を曇らせた。


「ったく、幼馴染だから言ってあげるけど、もう少し考えて発言してくれる?」


「ふむ。幼馴染だから今の状況を察してくれると思ったのだが」


 叩かれた頬をさすりながら、やれやれといわん表情を見せる駿介。

 そんな駿介の反応に、怒る事なくため息を吐く真紀。


「大方、このはちゃんが制服の下にスクール水着を着て来たけど、替えの下着を忘れたってところでしょ」


「よく分かったな。流石真紀だ」


「フンッ。当然よ」


 ドヤ顔を見せる真紀に、駿介もドヤ顔で返す。

 二人の間に言葉はいらないのだろう。

 駿介が話しかけるまで、真紀と仲良くしていたともがそんな二人を虚無の目で見つめる。


(このはちゃんが制服の下にスクール水着を着て来たんだなって、私も咄嗟に分かっちゃった……)


 彼女が虚無の瞳になったのは、駿介と真紀の関係性のせいか、このはのアホ行動のせいか。

 それとも、アホ色に染まる自分に対してなのか。それはとも自身もよく分かっていない。分かりたくないので。  

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