第168話 苦手になった隠し部屋

 外からは鍵がかけられないため、誰か入っていないか確認をして…やっと家に入る事ができたリリスたち。大人の足なら数時間で済む距離だが、そこは小さな女の子たち…何回も休憩を取って少しずつ歩いてきたため半日かかってしまっていた。


 「エレナをベッドに寝かせて…っと。夜ご飯にはまだ少し早いね」

 「そうだね~」

 「うん」

 「じゃあ自由にしてていいよ。ゆっくりしよ」

 「は〜い」

 「お姉ちゃん…」

 「なぁに?アリア」

 「羽はやす血?今やっちゃダメ?」

 「いいよ。リサとマリーとミーナも一緒にやっちゃおうか?」

 「うん」

 「わかった〜」

 「はい」

 「リン?コップ4つ出して、この魔物の血が入った小瓶を分けてくれる?」

 「うん」

 「小瓶3本でコップ4つだから、4つとも同じ量になるように入れてね?」

 「うん」

 「じゃあ、私たちは隠し部屋に行こうか?」

 「うん!」


 リリスと同じ羽をはやすため、朝からずっと待っていたアリア。夜ご飯にはまだ早かったため、リサたちも一緒に済ませる事にした。


 「リサ?ミーナ?びっくりしちゃうから、ここに何があるか先に教えとくね?」

 「はい」

 「…うん」

 「ミーナはもうわかってるかもだけど、一応聞いててね」

 「うん」

 「この本棚のこの本が仕掛けになっててね…」ガコッ

 「わぁ〜。本棚が動きました」

 「うん。いい?リサ、ミーナ。ここには天使の死体があるの…もう骨になってるけどね」

 「え?天使ですか?」

 「うん。今から舐める血は天使の血だよ?私もティムもリンも天使の血から羽をはやす能力を取り込んだの。ステータスにも書いてあったでしょ?」

 「…はい。わかりました」

 「ここで少し舐めたら、リンに渡した魔物の血を飲んでもらうね?あとは魔力ぐるぐるして、いっぱい寝れば羽がはえるかも…」

 「魔力ぐるぐる?」

 「魔力循環って言う魔法が使える人の最初の訓練だよ。リサはまず魔力の確認からだから…後でしようね?」

 「はい!」

 「じゃあ入るよ?」


 隠し部屋の仕掛けを動かして中に入っていくリリス、アリア、マリー、ミーナ、リサ。

 中にあるのがすでにわかっていたのか…ミーナはあまり元気が無い感じだった。


 「中は暗いから気を付けてね?」

 「は〜い」

 「うん」

 「わっ!…本当に骨になってる人がいる」

 「…うん」

 「まだ渇いてない血があると思うから、指に付けてペロッと舐めてね?」

 「…うん」

 「…はい」

 「これかな?みんなこの血はまだ渇いてないよ?舐めたらリサとミーナは、一応あそこに落ちてる天使の羽根と天使の体も触ってみようね?」

 「え?触るんですか?」

 「うん。指でチョンでいいよ?リンもアリアも触って魔法覚えたからね。ね?アリア」

 「うん!あの羽根触ってヒール覚えたよ〜」

 「へぇ~。わかりました」

 「ミーナもね?」

 「…うん」

 「触りました〜」

 「私も触ったよ」

 「わかった。みんな血は舐めたね?終わったから出るよ?」

 「は〜い」

 「うん」

 「はい」

 「よし。みんな出たね?…」ガコッ

 「へぇ~。本棚が戻っちゃった…」

 「ミーナ?大丈夫?」

 「…うん。この部屋見るとちょっと思い出しちゃって…。部屋出たからもう大丈夫だよ」

 「そう?魔物の血飲めば終わりだから、ゆっくり休んでね?」

 「うん」


 何事も無く無事にリサ、アリア、マリー、ミーナに隠し部屋にある天使の血を舐めさせる事ができた。みんなとミーナの出会いを知らないリサはミーナに元気が無い事に不思議に思う…。


 「お姉様?」

 「なぁに?リサ」

 「ミーナちゃんどうされたんですか?あの部屋を見てから元気が無くなったような…?」

 「ああ、ミーナにとってあの隠し部屋は悪い子が入るお仕置き部屋なのよ…」

 「え?何かあったんですか?」

 「ミーナはあの村から飲まず食わずで2〜3日ずっと助けを求めて歩いてここに着いたのね」

 「へぇ~」

 「私たちが倒れてたミーナを助けたんだけど…」

 「ん?お姉様?」

 「…私がマリーちゃんとアリアちゃんを殺しかけて、あの部屋に入れられたの」

 「え!殺しかけた?」

 「…うん。マリーちゃんとアリアちゃんは許してくれたけど、2人はその時にお姉ちゃんの眷属になったの」

 「そうなんですね…」

 「あれから…ここの隠し部屋が苦手になっちゃって…」

 「…ごめんね?ミーナ」

 「ううん。私が悪かったの…ごめんね。マリーちゃん、アリアちゃん」

 「もういいよ。ミーナちゃん」

 「うん!アリアはお姉ちゃんとお揃いになれたからいいよ」

 「ありがとう」

 「…ごめんなさい。私…悪い事聞いてしまいました」

 「リサは知らなかったんだから、仕方ないよ。でも、もう終わった話だからこれ以上はダメよ?いいね?」

 「はい」


 もう終わった話だからとリサを止め、リンたちがいる大きなベッドの部屋へと戻るリリスたち。


 「おかえり。魔物の血4つに分けといたよ?」

 「ありがとう。リン」

 「じゃあこの血を飲んでね?今はこれで終わりだよ」

 「は〜い」ゴクゴク

 「うん」ゴクゴク

 「はい」ゴクゴク

 「ん?何かあった?お姉ちゃん」

 「え?何で?」

 「なんだか…ミーナちゃん元気無いような?」

 「リンはほんとによく見てるね?ミーナはあの隠し部屋が苦手になっちゃてて…」

 「なるほど。それで元気無かったんだ…」

 「…うん」ゴクゴク

 「血も舐めたんだから、もう入る事無いと思うよ?ミーナちゃん」

 「…うん」

 「そうだよ。ゆっくり休んでね?ミーナ」

 「うん」

 「ぐるぐるは寝る前の方がいいか…。リサ以外は自由にしていいよ」

 「は〜い」

 「うん」

 「リサは魔力の確認するよ?」

 「はい!」


 4人が魔物の血を飲んだのを確認すると、まずリサの魔力を確認しようとベッドの上に座り出すリリス。


 「リサ?おいで?」ポンポン

 「はい!」

 「前と同じね?私の指わかる?」

 「はい。わかります」

 「このままおヘソの下まで行くよ?…ここね」

 「はい。…前回には感じなかったモヤモヤしたのがあります」

 「それが魔力だよ」

 「へぇ~。これが…」

 「うん。じゃあそのモヤモヤに集中して、動かしてみようね?動け〜動け〜ってお話してごらん?」

 「はい!動け〜動け〜」

 「足の先から手の先まで自分の体の中でぐるぐる動かしてみようね?」

 「はい。…んっ、お姉様?体がポカポカ暑いです」

 「うんうん。それでいいんだよ?おめでとう。それが魔力循環…私たちがぐるぐるって言ってるやつだよ」

 「ありがとうございます!お姉様」ギュー

 「うんうん。よかったね~。あとはリサがどの属性を持ってるかなんだけど…」

 「はい!それはどうすれば?」

 「その前にリサは魔法についてのお勉強しようね?」

 「え?…はい」

 「何も知らずに魔法使うつもり?それってすごい危ないんだよ?」

 「…そうですね」

 「うんうん。もうちょっとだから頑張って?みんなもちゃんとお勉強してから、魔法覚えたんだよ?」

 「はい。わかりました」


 リサの魔力を確認して、魔力循環までした所で訓練を止めるとそこからは、数分間の魔法についての勉強が始まった。


 「魔法を使うには大きく3つの条件があってね?」

 「はい」

 「1つ、魔力がある事!これが無いと魔法は使えません」

 「はい」

 「2つ、魔法の属性には7種類あってね?みんなそれぞれ産まれた時に使える属性が決まってるの。魔力は有っても、どの属性も持ってないと魔法使えないよ」

 「…はい」

 「3つ、隠しステータスってのがあってね?」

 「あの長い文字のやつですか?」

 「そうだね。私も詳しくは知らないけど、例えばね?私とティムは同じ風の属性を持ってるんだけど、私が使えてティムが使えない…逆にティムが使えて私が使えないって事が起こるのがこの隠しステータスなのね」

 「へぇ~」

 「魔法は完全に自分の力って事だね?同じ属性を持ってても使える使えないがあるって覚えててね?」

 「はい」

 「魔法は危ないから、わからない事は絶対誰かに聞く事!」

 「はい。お姉様」

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