第167話 エレナの記憶

 ハンバーガーのいいにおいに釣られて、お腹を鳴らしながら狐族の子は目を覚ました。

 目を覚ますと母親はおらず知らない人ばかりで困っていたが、ミーナの顔を見つけると一気に落ち着いたようだった…。


 「覚えててくれたんだね?」

 「うん!猫のお姉ちゃん」

 「よかった。みんなの事紹介したいんだぁ?お名前教えてくれるかな?」

 「うん。エレナだよ」

 「ありがと。私はミーナだよ」

 「ミーナお姉ちゃん?」

 「うん。紹介するね?エレナちゃんの横にいるのがリリスお姉ちゃん。私たちのお姉ちゃんだよ」

 「お姉ちゃん?」

 「うん。リリスだよ〜6才だから、この中で一番お姉ちゃんなの。よろしくね?エレナちゃん」

 「うん」

 「私と同じ5才のリンちゃん、ティムちゃん、マリーちゃん、リサちゃんだよ」

 「え?えっと…」

 「一気に知らない人増えちゃったもんね。ゆっくり覚えてね?」

 「…うん」

 「エレナちゃんは4才だったよね?アリアちゃん。同じ4才だよ?」

 「…アリアだよ。よろしくね?」

 「…うん」

 「アリアえらいね?ちゃんと挨拶できたね〜」ナデナデ

 「うん!」

 「…」キュルル


 一通り、みんなを紹介した所でエレナのお腹が再び鳴り始めたので、まずはご飯を食べさせる事にした。


 「お腹空いた?これ食べていいよ?」

 「…いいの?」

 「うん。はいどうぞ?そのまま手で持ってガブッと食べてね?」

 「うん」パクッ

 「美味しい?」

 「わぁ〜」パアァ

 「美味しかったみたいだね?」

 「ね〜。みんなも食べていいよ?」

 「は〜い。いただきま〜す」

 「いただきま〜す」

 「ん?お姉ちゃんの分は?」

 「エレナちゃんにあげたから…私はいいよ。みんな食べて?」

 「お姉ちゃん、あ〜んして?」

 「え?アリア?」

 「はい。あ〜ん?」

 「あ、あ〜ん」パクッ

 「美味しい?」

 「美味しいよ〜。ありがとねアリア」ナデナデ

 「うん!」

 「…」ジー

 「ん〜?どうしたの?エレナちゃん」

 「あ〜ん?」クイッ

 「いいの?」

 「…うん」コクン

 「あ〜ん」パクッ

 「美味しい?」

 「うんうん。美味しいよ〜。優しいねエレナ」ナデナデ

 「わぁ〜」パアァ

 「なるほど〜」

 「ん?どうしたの?リン」

 「エレナちゃんがずっとお姉ちゃんの事見てるな〜って思って見てたんだけど、さっきのなでなでが嬉しそうだったから…甘えたいけどわからないからアリアちゃんの真似してるのかな?って」

 「そうかな?」

 「たぶんね〜。アリアちゃんとエレナちゃんでお姉ちゃんの取り合いが起きそう…」

 「いやいや、それは無いでしょ?」

 「お姉ちゃんの膝枕知っちゃったからね〜」

 「それで私の取り合い?」

 「あ〜そっか!今のエレナちゃんがお姉ちゃんの膝枕されたら…1発だね」

 「でしょ?マリーちゃん」

 「うんうん」

 「それって…平等にしないと喧嘩になっちゃうじゃん…」


 エレナが起きるまでリリスの膝枕で寝ていた事で、一気に気に入られた感じのリリス。今はどうすればいいかわかっていないため、アリアの真似をして甘えようとしているのでは?とリンが教えてくれた。


 「お姉ちゃん、あ〜ん?」

 「お姉ちゃん、あ〜ん?」

 「待って?お姉ちゃんは残ったらでいいよ?先にアリアとエレナお腹いっぱい食べてね?」

 「う、うん…」

 「…うん」

 「2人とも優しいね。ありがとう」ナデナデ

 「うん!」

 「うん」

 「お姉ちゃんは大丈夫だよ」

 「…」モグモグ

 「…」モグモグ

 「あらら…2人とも口がベタベタだよ?」

 「お姉ちゃんこれ使って?」

 「ありがと。リン」

 「ほら?アリア」フキフキ

 「はい。次はエレナね〜」フキフキ

 「ありがとう。お姉ちゃん」

 「ありがと…お姉ちゃん」

 「偉いね。ちゃんとお礼言えたね〜」

 「アリアちゃんの動きを真似するエレナちゃん」

 「うん。息ぴったりに見えるね?」

 「ね〜。2人を同時に相手するお姉ちゃんも凄いね〜」

 「うん。お姉ちゃん嬉しそう…」


 お昼ご飯を食べ終わったリリスたち。リリスは結局2口しか食べれなかったが、アリアとエレナが嬉しそうにしている顔を見ていると空腹を感じ無くなっていた。


 「ごちそうさま〜」

 「ごちそうさま?」

 「うん。美味しかったよ〜って言う挨拶だよ」

 「へぇ~」

 「ねぇ?エレナはどこまで覚えてる?どうしてお母さんとあの村にいたの?」

 「狐の村にいた時に森の中からあの人たちがきて…」

 「うん」

 「猫のお姉ちゃんのとこ行くよ?ってお母さんが…」

 「うん」

 「猫さんの村見てから…覚えてないの」

 「うんうん。そっか…怖かったね」ギュー

 「…うん」

 「もう大丈夫だからね〜」ナデナデ

 「あの村の状態を見ると倒れてもおかしくないよね…」

 「だね…。私たちでも酷いと思ったもんね…」

 「あのね?エレナちゃん。お母さん…エレナちゃんをあの人たちから守るために死んじゃった。私とミーナお姉ちゃんはお母さんから、エレナちゃんの事をお願いされたんだよ…」

 「え?死んじゃった?」

 「…うん。もう会えないの」

 「うっ、うわぁ〜ん…」

 「よしよし。お姉ちゃんが守ってあげるからね〜」ギュー

 「うぇ〜ん…」

 「大丈夫、大丈夫よ」トントン

 「うっ…うっ…お母さ〜ん」グスン

 「今日からお姉ちゃんがエレナの家族になるからね〜」トントン

 「…ぐすっ」

 「大丈夫だからね〜。お姉ちゃんと一緒に暮らそうね」トントン


 エレナを泣かせてしまったが、どこかで絶対言わないといけなかったので全てを伝える事にした。


 「こっちにおいで?」トントン

 「…お母さん」グスン

 「あっ…また膝枕…」

 「アリアちゃん、今は我慢しようね?エレナちゃんを寝かそうとしてるんだよ…」

 「そうなんだ…」

 「大丈夫だよ〜。これからはお姉ちゃんがいるからね」トントン

 「…うん」グスン

 「寝ちゃっていいよ?私の家までおんぶしてあげるからね」

 「…す〜す〜」zzz

 「ふぅ。泣かせちゃったけど…いつかは話さないとだしね」

 「…うん」

 「…そうだね」

 「さぁそろそろ出発しようか?エレナが寝てる間に家まで帰ろう?」

 「うん」

 「は〜い」

 「はい」


 エレナが寝たのを確認すると、リリスたちは自分たちの家である教会へと再び向かい始めた。

 何回も休憩をとって少しずつ教会に帰って行った。


 「もうちょっとでお家だね〜」

 「うん。やっぱ歩きだと凄い距離だったね〜」

 「ね〜。今日はみんな疲れてるだろうから、帰ったらゆっくりしようね」

 「は〜い」

 「うん」

 「そうだね〜」

 「やる事もいっぱいあるしね〜」

 「うん。エレナの事もあるしね…お母さんのお墓も作ってあげないと…」

 「…うん。お姉ちゃん?エレナちゃんにお母さんの死体見せるの?」

 「また泣かせちゃうし…こっそり作っちゃおうか?」

 「そうだね…もう会えないってわかっただろうし…」

 「うん」


 何回も何回も休憩を取り、少しずつ教会へ帰って行くリリスたち。夕方になってきた頃…やっと自分たちの家である教会に帰って来ることができた。


 「リン?エレナ預かってくれる?」

 「うん。どうしたの?」

 「外から鍵かけられないから、誰かが入って来てないか注意しないとなのよ」

 「あっ!そっか…」

 「みんなもいいね?まず私が誰もいないか確認するから、入るのはそれからだよ?」

 「は〜い」

 「うん」

 「わかりました」

 「行ってくるね?みんなはここで待っててね?」

 「…うん」

 「…よし。誰もいないね?台所も…いないね」

 「お姉ちゃん…」

 「いいよ〜?誰もいなかった〜」

 「は〜い」

 「ただいま〜」

 「疲れたね〜」

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