第166話 起きた狐族の子

 妹たちから救援要請を受けたリリスは、急いで外に出るとティムが2人の盗賊を相手に攻撃を避け続けて時間稼ぎをしていた。ティムと交替したリリスは影分身の魔法を使って一気に終わらせ、盗賊の仲間が来る前に移動しようと考えた。


 「お姉ちゃん呼んだ?」

 「あの子見た?」

 「うん。狐の獣人の親子だね」

 「お母さんから死ぬ直前に子供の事頼まれちゃってね…」

 「へぇ~。でも困ってるのそこじゃないよね?」

 「うん。あの子も妹として育てるよ。お母さんと約束したからね」

 「へぇ~。えっと…じゃあ何かな?」

 「お母さんの体だよ。ここで埋めるか、あの子に見せて埋めるか、私たちの家に埋めるか…」

 「そうだね…」

 「私としてはすぐにでもここを離れたいのよ」

 「じゃあ答え出てるね?ポーチに入れて家で燃やして埋めてあげよ?」

 「そうだね…。私は外で盗賊が来るか見てるから、ポーチに入れてくれる?」

 「うん。わかった」

 「みんなにすぐ移動するって伝えてね?」

 「うん」


 リンと相談して、狐族の母親の体をポーチに入れて連れ帰る事に決めた。すぐ移動すると聞いた妹たちはすぐに家から出てきた。


 「お姉ちゃん」

 「みんな大丈夫だった?」

 「…うん」

 「でも、あの子…」

 「うん。今は早く村から離れるよ?後でちゃんと説明するからね?」

 「は〜い」

 「ミーナ?大丈夫?歩ける?」

 「…うん」

 「その子は私がおんぶするよ。今は早く離れようね?」

 「…うん」

 「よいしょ…。リン?行ける〜?」

 「は〜い。お待たせ」

 「リン?一応、気配サーチしようか?」

 「うん」

 「いくよ?せ〜の…《気配サーチ》」x2

 「よし。今のうちだね。さっき休憩した辺りまで一気に行くよ?」

 「は〜い」タタタッ

 「うん」タタタッ


 リリスたちは元気が無いミーナを気遣いながら、早歩きで一気に最後に休憩した場所まで駆け抜ける。ゆっさゆっさと揺れるリリスの背中では、狐族の獣人の子供がスヤスヤと気持ち良さそうに寝ていた。


 「ふぅ。一応、《気配サーチ》…大丈夫そうだね」

 「うん」

 「少し休憩しようか?」

 「うん。お姉ちゃんもちゃんと休んで?その子預かるね」

 「ありがと。リン」

 「お姉ちゃん聞いてもいい?」

 「ああ。あの悲鳴はこの子のお母さんみたいだね…ミーナが2人を助けようと盗賊と戦闘しようとしてた時、私が間に合ってね。盗賊は倒したけど、その時にはもうこの子のお母さん亡くなる直前で…最後の言葉がこの子をお願いだったのよ」

 「じゃあ、外にいた盗賊も?」

 「…うん。きっと狐族の村も襲われて逃げて来たんだろうね?この子は1度ミーナと遊んでるみたいだし…」

 「あっ…来る時に言ってた狐族の?」

 「うん。らしいよ…。1度行った事のある猫族の村に助けてもらおうと逃げて来たけど、猫族の村も襲われた後で…あいつらはたぶん狐族の村からきた追手だろうね」

 「そっか…」


 リリスは妹たちに何があったか説明すると、もう少し離れようと移動をさせようとしたが…。


 「みんな大丈夫?もうちょっと離れようか?」

 「うん」

 「ミーナ大丈夫?」

 「…もうちょっと早く移動できたら間に合ったのかな?」

 「…うん。そうかも知れないね…」

 「…そっかぁ」

 「ミーナ?…帰ったら隠し部屋の血舐めてみる?羽はえるかも知れないよ?」

 「う〜ん…」

 「みんなも帰ったら舐めてみるんだって?みんな羽はえたら、次からは飛んで移動できるよ?」

 「そっか…前の時に舐めていれば飛んで来れてたんだね?」

 「うん。1人ぐらい飛べなくても、私とリンで連れて行けるだろうしね…」

 「…そっか」

 「盗賊のあの様子だと、他の獣人の村にも行きそうだから…今のうちに羽はやしてみない?次は間に合うかも知れないよ?」

 「うん…そうだね。舐めてみるよ」

 「うん。今は歩いてくれる?この子もいるし早く帰ろう?」

 「うん」

 「さすが…お姉ちゃん」

 「うん。すごいね」

 「ね〜」


 再び、歩き出したリリスたち。太陽も高くなり…次の休憩した時にでもお昼にしようと考えるリリス。


 「ねぇミーナ?お腹空いてない?」

 「う〜ん…少し?」

 「みんなも空いてる?」

 「うん」

 「空いてる〜」

 「うんうん」

 「どこか良さそうな場所あるかな?」

 「じゃあ、この先に確か…お花いっぱい咲いてる所があったと思うよ?」

 「いいね。そこでお昼にしようか?」

 「は〜い」

 「うん」

 「案内してくれる?ミーナ」

 「うん。わかった〜」


 お花がいっぱい咲いてる場所へ向かうリリスたち。リリスの背中にいる狐族の子供はまだスヤスヤと眠り続けていた…。


 「小さくて可愛い子だね?」

 「ね〜」

 「お姉ちゃん好きそう…」

 「何才なのかな?」

 「ミーナより年下って言ってなかった?」

 「え?うん。…確か4才だったかな?」

 「へぇ~。アリアちゃんと同じだね〜」

 「うん!」

 「ミーナちゃん、この子のお名前わかる?」

 「それが…ずっと思い出そうとしてるんだけど…」

 「会ったの1度きりだったんだよね?」

 「うん」

 「それじゃ忘れても仕方ないよ〜。起きたら本人から聞いてみよ?」

 「だね〜」

 「お姉ちゃんのおんぶ…あの子起きるかな?」

 「あっ…」

 「お姉ちゃんのおんぶもお母さんなのかな?」

 「う〜ん。さすがに私たちは頼めないかな〜」

 「アリアちゃんなら軽いからおんぶしてくれると思うよ?」

 「いいな〜」


 どんどん歩き続けるリリスたちの前に、お花いっぱいの場所がついに現れた。


 「そろそろ着くよ?お姉ちゃん」

 「は〜い。ちょうどお昼だね〜」

 「ね〜」

 「ちょっと道からズレるけど、そこの奥だったかな?」

 「すぐに戻ってこれるならズレてもいいよ」

 「うん。すぐそこだったはず…」ガサガサ

 「わぁ〜!すご〜い」

 「凄いね〜お花畑だよ〜」

 「よく知ってたね?ミーナちゃん」

 「うん。リンちゃんの村には何回か行った事があってね…その時見つけたの」

 「へぇ~。そうなんだ…知らなかった。ティムちゃん知ってた?」

 「新しい町?村?とやりとり始めたって聞いたような…」

 「へぇ~。じゃあそれがミーナちゃんの村だったんだね〜」

 「うん。たぶんそうだよ。村が襲われる少し前だったから…」

 「そうなんだ…。盗賊がいなくてもミーナちゃん会えてたのね〜」

 「そうだね。近いうちに会えてたと思うよ」

 「そっか〜」


 リリスたちはお花が一番綺麗に見える場所を見つけると、座り始めお昼ご飯を食べ始めるが…。


 「お昼にしようね〜?良い場所見つけてきてくれる?」

 「は〜い」

 「うん」

 「リンちゃん、ここどうかな?」

 「お花は綺麗だけど、ここで8人は少し狭いかな?」

 「そっか〜。じゃあここは〜?」

 「お花も綺麗に見えるし、ここなら8人座っても大丈夫だね?ここにする?」

 「うん!」

 「お姉ちゃん呼んでこようね〜」

 「は〜い」

 「おかえり。良い場所あった?」

 「うん!こっち〜」

 「はいはい。すぐ行くよ〜」

 「ここ〜」

 「お〜!いいね〜。ティムが見つけたの?」

 「うん!」

 「ティムは見つけるの上手だもんね〜」

 「えへへ」


 「さぁみんな座って〜お昼ご飯出すね」

 「お姉ちゃん、その子預かるよ?」

 「大丈夫だよ。こうすれば…」

 「あ〜お姉ちゃんの膝枕…」

 「あっ…お姉様」

 「いいな〜」

 「やっぱり…お姉ちゃんの好みだったのかな」

 「みんな帰ったらしてあげるから…ね?」

 「…うん」

 「はい。お姉様」

 「うん!」

 「はい。どうぞ〜?ポーチに入れとくと冷めないみたいだから、まだ温かいよ?」

 「ほんとだ〜!」

 「いいにおい〜」

 「これは朝のお肉ですか?」

 「そうだよ。パンでお肉とお野菜挟んで、外でも食べれるお料理だよ」

 「へぇ~」


 「…う、う〜ん。…お母さん」キュルル

 「そろそろ起きるかな?」

 「お腹鳴ってたね?」

 「ね〜」

 「…ん?お母さん?」キュルル

 「起きたね。おはよ?」

 「おはよ。お母さんは?」キョロキョロ

 「どうしよ…」

 「おはよ。お姉ちゃんの事、覚えてる?」

 「あっ!猫のお姉ちゃん!」キュルル

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