第165話 狐の親子

 リンとティムが持ってきた綺麗な石が、リンのお母さんの指輪の石と同じ物だと気付いたマリー。それを聞いたリリスはリンの家の誰かが、ティムの家系の人だと思い…リンとティムは親戚では?と考えた。


 「ティムちゃん…」

 「リンちゃん…」

 「この本を読めば何か解るかも知れないけど、帰ってからでもいい?今日はミーナの村が目的だからね?」

 「うん!いいよ」

 「は〜い」

 「すごい元気ね?」

 「うん。だって…」

 「ね〜。ずっと一緒にいた友達が実は本当の身内だったとか…」

 「そうだね。この石が本物なら…私の予想通りだと思うよ」

 「うん」

 「帰ってからだね〜」

 「うん」

 「じゃあそろそろミーナの村に向かおうね?ミーナの気持ちが保たないよ…」

 「あっ…そうだね」

 「ミーナちゃんごめんね」

 「え?ううん。大丈夫だよ。よかったね?」

 「うん。ありがとう」


 リンとティムを落ち着かせて、リリスたちは今日の目的であるミーナの村へ向かう事にした。


 「じゃあここからは私が前に並ぶね?ティムは真ん中でアリアとリサを守ってあげてね?」

 「うん。わかった〜」

 「ミーナはそのまま前で案内してくれる?」

 「うん」

 「じゃあ出発するよ〜?」

 「は〜い」

 「うん」

 「ふんふ〜ん♪」

 「ティムお姉ちゃん嬉しそう〜」

 「うん♪」

 「リンちゃんも嬉しそう。ニコニコだね」

 「う、うん♪」

 「よかったね~」

 「嬉しいのわかるけど、気を付けてよ?」

 「は〜い」

 「うん」

 「ねぇミーナ?猫族の人って、他の獣人とも仲良くしてるの?」

 「う〜ん…あまり聞いた事にゃいけど、1度村に違う獣人の人が来てた事があったよ」

 「へぇ~」

 「狐の獣人だったかにゃ?私より小さな子と1度遊んだ事があるよ」

 「へぇ~。狐族もいるんだぁ…」

 「うん」


 隊列を少し変え…リリスを前にティムを真ん中に下げて、ミーナの案内で森の奥地へと進んで行くリリスたち。リンたちの村へ行く時と同様に何回も休憩をとって進んで行く…。


 「みんな休憩できた?」

 「うん」

 「大丈夫〜」

 「ミーナあとどれくらいかな?」

 「もうそろそろだよ。あの山がそうだよ」

 「は〜い。もう見えてるのね。みんなもうちょっとだよ〜」

 「は〜い」

 「うん」

 「ここからもっと気を付けないとだね…」

 「そうだね。盗賊が隠れてるかもだしね〜」

 「うん」

 「行くよ〜?」

 「は〜い」


 十分な休憩をとったリリスたちはミーナの案内を頼りに…ついにミーナの村に到着する。ミーナの村はリンたちの村と同様に目に付く場所は全て血塗れで…そこら辺に肉の破片が飛び散っていた。


 「やっと着いたね…」

 「…うん」

 「予想はしてたけど酷い…」

 「ミーナ?大丈夫?」

 「…うん」

 「みんな?隊列変更!ミーナを真ん中にするよ?」

 「うん」

 「わかった」

 「は〜い」

 「周りに注意してね?ゆっくり進んでくよ?」

 「うん」

 「生き残ってる人がいるか確認するよ。気を付けてね?」

 「は〜い」

 「…うん」

 「今にも崩れそうな家が1つか…後は瓦礫になっちゃってるね」

 「…うん」

 「誰かいるかも知れないし行ってみようか?」

 「うん」

 「だね」


 唯一残っていた家に向かおうとした時、家の中から女性の悲鳴が聞こえてきた!


 「きゃあああ!」

 「え?生き残り?」

 「だめ〜!」タタタッ

 「ミーナ!」

 「お姉ちゃん、早く行ってあげて?私たちは後から追いかけるから!」

 「で、でも…」

 「早く!」

 「うん。わかった」タタタッ

 「なんだぁ?猫族のガキか…まだ猫族が生きていたとはな」

 「わ、私が相手よ…その人たちを放せ!」

 「ほぉ。いいだろう…まずはお前から殺してやる」ドサッ

 「…大丈夫。いっぱい訓練したんだから…」ゴクリ

 「ミーナ!」バン

 「お姉ちゃん!」

 「代わるよ?あの人たちお願い」

 「うん!」


 女性の悲鳴を聞くと走り出したミーナ。リリスはミーナを追いかけ家の中に入るが…そこにいたのは猫族とは違う2人の獣人と、その獣人を狙ってきた盗賊だった!ミーナが盗賊と戦闘する直前だったため急いでリリスと交替する。


 「なんだお前は?その羽…お前も魔族か!」

 「だったら…何?」

 「お前みたいな魔族は珍しいからな〜。大人しく俺の奴隷になってもらおうか?」

 「嫌に決まってるでしょ?おバカなの?」

 「なっ!そんな口きいていいのか?こいつらがどうなってもいいのか?」

 「こんな小さな子供相手に人質取らないと勝てないんだね?おじさん盗賊向いてないよ?」イラッ

 「はぁ?言わせておけば…このガキ!いいだろう…やってやるよ!後悔するなよ!」

 「しないよ。もういいから早くやろうよ」

 「そうだな!お前を殺した後はさっきの猫族の番だ」

 「…私の」

 「あ?」

 「私の妹に手を出すな!《ウィンドカッター》」ヒュン

 「ぎゃあああ!腕が…俺の腕が」スパッ

 「ほらね?おじさん盗賊向いてないよ?」

 「こいつ…」

 「まだやるんだ?じゃあ遠慮なく…《ウィンドカッター》」ヒュン

 「ぎゃああ!」スパッ

 「これで剣持てなくなったね?」

 「お前は何なんだ?何の魔族だ!」

 「もう死ぬんだから、別にいいでしょ?」

 「最後に教えてくれてもいいじゃないか!」

 「はいはい。わかったよ…吸血姫だよ」

 「え?吸血姫?…鬼じゃないのか?」

 「違うよ。じゃあね?《ウィンドカッター》」ヒュン

 「…」ボトッ


 何とか相手の不意を狙えた事で終始有利に盗賊に勝つ事ができたリリスは、すぐにミーナの側に駆けつける。

 獣人の女性は背中をバッサリ斬られながらも、小さな自分の子を守るように倒れていた。


 「さすがお姉ちゃん」

 「大丈夫?」

 「私は大丈夫。だけど…」

 「あ…大丈夫ですか?」

 「助けて…いただき…ありがと…ございます」

 「あっ!話さないで。すぐ回復しますから!ミーナ?私、リン呼んでくる」

 「待って…私は…もう…この子…お願い…します」グイッ

 「え?この子はあの時、一緒に遊んだ…」

 「ミーナが話してくれた狐族の?」

 「…うん」

 「吸血鬼の…姫さま…この子を…おねが…」バタッ

 「…わかりました。私が…私の妹として大事に育てます」

 (ありがとう。吸血鬼の姫さま)

 「…」グスン


 狐族の母親は自分の子供をリリスに託すと、力尽きて息絶えてしまった。狐族の子供を抱きながら、泣き出しそうなミーナを慰めようとした時!外からリンやアリアの声が聞こえてきた!


 「お姉ちゃ〜ん!」

 「助けて〜!」

 「えっ!ミーナ、この子お願い!」

 「…うん」

 「みんな…」タタタッ

 「へへへ…奴隷がいっぱいいるなぁ〜」

 「ああ。こりゃいい金になるな…」

 「まて!」バン

 「お姉ちゃん!」

 「お姉ちゃん…」

 「みんな下がって?家に入ってて!」

 「でも…」

 「早く!」

 「うん」

 「ティムありがと。交替しようか?」

 「お姉ちゃん…うん」

 「なんだ?お前が1人でやるってのか?」

 「お?こいつ珍しい魔族だぞ?奴隷にすれば大金になるな!」

 「またか…《シャドウ•クローン》」

 「は?増えた?」

 「うるさいなぁ…《シャドウ•クローン》」

 「おいおい!また増えたぞ」

 「うるさいって言ってるでしょ!《シャドウ•クローン》」

 「ななな…なんだこいつ」

 「確実に…《シャドウ•クローン》」

 「…」ポカーン

 「さよなら。いけ!私の分身たち《ウィンドカッター》」x16

 「ぎゃあああ!」

 「うぎゃああ!」

 「私の妹を狙うからだよ!」

 「お姉ちゃん…」

 「ふぅ終わった終わった。よく頑張ったね?ティム」

 「うん。お姉ちゃんの分身との訓練のお陰だよ」

 「そっか。訓練しといてよかったね」

 「うん!」

 「中に入って、リン呼んでくれる?」

 「わかった〜」

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