第59話 新たな目標

 「馬車がいるとしたらハルファ側の門の近くかな?」

 「そうだね」

 「どこかな~?」

 「あっあれかな?」

 「そうだね。ティムは探すの上手だね~」

 「えへへ」


 「すいません。どこまで行きますか?」

 「いらっしゃい。ハルファまで行くよ。お代は1人銀貨2枚だよ」

 「4人お願いします。はい、銀貨8枚」

 「まいどあり。じゃ乗って待っててくれるか?」

 「はぁい」


 無事にハルファ行きの馬車を見つけ、時間になるまで乗って待つことになったリリスたち。


 「見つかってよかったね」

 「ね~」

 「あっそうだ。リン?」

 「お皿とかフォークとかもポーチに入れてある?4人分あるかな?」

 「待ってね?見てみる」

 (お箸かフライ返しでもあればいいんだけど…)


 「お皿は大丈夫。フォークも4つあったよ。ボウルも2つあるね」

 「フォークあるならいっか…フォークでひっくりかえそう」

 「あっお姉ちゃん。コップがないよ…」

 「わかった。牛乳買えるならコップは絶対いるね」

 「うん。どこかで買わないとだね」

 「教会の食器って全部持ってきたんだっけ?」

 「うん。空っぽにしたはずだよ」

 「コップは買うとして、村への通り道だし1度教会に寄ってもいいかもね」

 「ねぇ?お姉ちゃん。もうあの教会から出ていかなくてよくない?」

 「え?なんで?」

 「王様の手紙だよ。それがあれば教会に住み続けていいんじゃない?」


 教会の話をしていると出発時間となったため、御者が話かけてきた。


 「時間になったから出発するよ。今回はお嬢ちゃんたちだけだ。ハルファまで2日かかるよ」

 「はい。お願いしま~す」


 馬車がゴトゴトと音をたてて動き始めた。


 「リン?ちょっと…」

 「なぁに?」

 「ナーレ領主がすんなり王様の言う事守ると思う?私たちが王様に報告したから何か対処されたナーレ領主が、私たちに怒ってくると思わない?」

 「あの領主ならやりそう…」

 「それにね…王様も王妃様も貴族からの反発を気にしてアリアを私たちに預けたのよ?最悪の場合、自分たちは貴族に殺されるかも?ってね」

 「そうだったね…ごめんね」

 「ううん。私も本当ならあの教会でずっと住みたいよ。せめてナーレ領主が違う町の領主になって、お引っ越ししてくれるまでは我慢だね」

 「うん。安全なところ探さないとね…」

 「うん。それかナーレ領主と話し合うかだね」

 「上手くいけば、すぐにでも教会で住めるけど無理だろうね…」

 「あの感じだもんね…」

 「うん」

 「ティムとアリアもいるし、ナーレに戻ってから考えようか?」

 「そうだね」


 馬車がさらにゴトゴトと砂利の多い道を通り始めると、リリスはポーチからウサギのクッションを取り出しアリアに渡す。


 「アリア?はい、クッション」

 「ありがと~」


 リンもポーチから、猫とクマのクッションを取り出しティムと使い始めた。


 「これいいよ~。ふかふか~」

 「そっか、買ってよかったね。私も使おう」


 リリスも自分のキツネのクッションをポーチから取り出し使い始める。


 「アリアお尻大丈夫?」

 「うん。ふかふか~」

 「よかったね。寝る時は枕にするといいよ」

 「うん」


 クッションを使いゴトゴトと揺られ続けていると…


 「アリア眠いの?」

 「…うん」

 「ぽかぽか暖かくて気持ちいいもんね」

 「うん」

 「少し寝ていいよ。頭こっち向けておいで」ポンポン

 「ありがと。お姉ちゃん」


 砂利が多いガタガタ道が終わり、またゴトゴトと一定のリズムで動き出す馬車。馬車の荷台には日光が当たり…一定の振動とぽかぽか陽気にアリアのまぶたは閉じようとしていた。眠そうにしているアリアに気づいたリリスは、膝をポンポンと叩きながらアリアを呼び寄せ、膝枕して寝かせてあげようとしていた。


 「あ~、アリアちゃんいいな~」

 「ティムも眠いの?」

 「少しだけ…」

 「そっか。じゃあこっちにおいで?」ポンポン

 「うん!」

 「アリアの頭を右足に置いてっと…これならティムも寝れるかな?」

 「うん。大丈夫~」

 「夜寝れなくなるから、夕方には起こしてあげるね」

 「うん。おやすみ」

 「はいはい。おやすみ~」


 どうやら…ティムも眠気を感じていたらしく、リリスの膝枕でお昼寝していたアリアを羨ましそうに見ていたので、アリアの頭の位置を動かしティムにリリスの左足に寝るように誘ってあげる。


 「お姉ちゃん人気だね~」

 「リンは眠くないの?」

 「私は大丈夫、起きてるよ。お姉ちゃん1人になっちゃうし…」

 「ありがと。でも眠くなったら寝ていいからね?起こしてあげるから」

 「うん。何かそうしてると…お姉ちゃんが先生みたいだね?」

 「そう?私が一番年上だからしっかりしなきゃとは思ってるけど…そっかぁ。先生かぁ」

 「うん。優しいとことかそっくりだよ」

 「ねぇ?リン?」

 「なぁに?」

 「私、ほんとに先生になっちゃおかな?」

 「え?どういうこと?」

 「これから先、ティムみたいに住んでたとこ追い出されて、行く所が無くなった子供がいたら引き取ってあげようかな?って。…先生と言うより、お姉ちゃんだけどね」

 「うん。良いと思うよ」

 「もちろん、私1人じゃ無理だから手伝ってくれると助かるんだけど?」

 「うんうん。手伝うよ。いっぱい家族増やそうね」

 「うん!ありがとリン」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る