第60話 のんびり馬車の旅

 「でも…一緒に住むならあの施設にいたイジメっ子みたいな子には気をつけないとね。この子たちや新しく来る子やリンに私と同じような目に合わせないように注意しなきゃ」

 「…うん」

 「皆同じような境遇だろうから、イジメ何かしてる暇ないと思うけど一応ね」

 「そうだね…」


 ゴトゴトと馬車は進み続け、陽も傾き始めた頃…


 「夜寝れなくなるから、そろそろ2人起こそうか?」

 「うん」

 「ティム、アリアもう夕方だよ~」トントン

 「ん、う~ん…」

 「ふわぁぁぁ」

 「起きたね。もう夕方だから起きようね」

 「ティムちゃん、アリアちゃん。まだ寝ると夜寝れなくなるよ?」

 「は~い」

 「おきる~」

 「うん。えらいえらい。お腹空かせとかないとハンバーグ入らないからね?」

 「うん」

 「まだ進みそうだから、夜ご飯は馬車が止まるまで待ってね」

 「は~い」


 夕方になったのでティムとアリアを起こし、馬車が止まるまでまたのんびり過ごしていく。


 「明後日にはハルファだね」

 「うん。マリーちゃんと会えるかな?」

 「そうだね~。ゲイルさんに聞けば牛乳買えそうなお店知ってるかもだね」

 「ねぇ?マリーちゃんって?」

 「んとね~王都に向かって馬車に乗ってた時、一緒に乗ってた女の子だよ」

 「へぇ~」

 「マリーちゃんのお父さんにお姉ちゃんお料理教えてもらったんだよ」

 「そうなんだぁ」

 「安全な場所で火が使えれば、お料理できるんだけどね…」

 「安全な場所かぁ…」

 「リン?どうしたの?」

 「ん?いや、ナーレから王都まで移動してきたけど、私たちがよく知ってる町ってナーレだけだなぁってね」

 「そうだね。あの教会さえ使えればなぁ…」

 「お姉ちゃん!ナーレの領主さんに1度話してみない?」

 「う~ん。王様の書状もあるし、少しはゆっくりできるとは思うけど…いきなり領主じゃなくてギルドマスターに会ってみようか?」

 「うん。ティムちゃんとアリアちゃんの登録もあるしいいかも」

 「お姉ちゃん、登録って何?」

 「ベリアの町入る時にティムとアリアの分だけ、町に入るのにお金払ったでしょ?」

 「うん」

 「冒険者ギルドって所で登録すれば、このカード作ってくれるから門兵さんに見せるだけでタダで入れるようになるんだよ」

 「へぇ~」

 「お姉ちゃんとリンお姉ちゃんはナーレの町で作ったから、ナーレに帰ったらティムお姉ちゃんの分も作るんだよ。アリアはどうする?一緒に作る?」

 「うん。お揃いがいい~」

 「うんうん。そう言うと思ってたよ。みんなナーレの町で作ろうね」

 「うん」

 「リン、ティム?アリアのカード登録はあくまで通行料の為だから、戦闘は3人のままね」

 「うん。わかってるよ」

 「うん。わかった。私も強くなるよ」


 4人でのんびりと会話していると御者が話かけてきた。


 「今日はそろそろ馬を休ませようと思う。あの木の下辺りで止めるよ?」

 「は~い」

 「ご飯だぁ~」

 「わ~い」

 「はいはい。馬車が止まってからね~」


 ゴトゴトと馬車は進み、大きな木の下で馬車は止められた。


 「じゃ今日はここまでな~」

 「は~い。じゃご飯にしようか?」

 「うん」

 「ハンバーグ~♪」

 「あっそうだ。リンお皿1枚だけ出してくれる?」

 「うん」


 リリスは何を思い付いたのか、リンにお皿を出してもらうと自分のポーチからパン4つと露店で買ったハンバーグ2つと料理用のナイフを取り出した。


 「まず、パンを横に半分に切ってと…ハンバーグも半分に切ってと」

 「何作ってるの?」

 「切るだけだからすぐできるよ。待ってね」

 「う、うん」

 「パンにハンバーグのせて、残りのパンで挟むっと」

 「あ~これって…」

 「うん。ハンバーガーだよ。お野菜も入れる?」

 「そうだね。ハンバーガーに合う葉物野菜あったかな?」

 「いつも食べてるレタスなら合うと思うよ?待ってね」

 「これなら手も汚れないね」

 「うん。はい、どうぞ」

 「ありがとう。わぁ~懐かしい」

 「アリアとティムも、はい。どうぞ」

 「ありがとう」

 「どうやって食べるの?」

 「そのまま手で持って食べるんだよ。中のお肉落とさないように食べてね」

 「うん」

 「おいし~」

 「うん。美味しいね」

 「アリア美味しい?」

 「うん。おいし~」

 「よかったね。ほら、口にお肉のタレ付いてるよ」フキフキ

 「ほら、ティムもリンも」フキフキ

 「えへへ…ありがと」


 リリスはハンバーガーを思い出し、3人に作ってあげた。リンは前世の記憶があるので懐かしそうにしていたが、ティムとアリアは初めての食べ物を目にして食べ方に悩んでいたが、お気に入りのハンバーグを挟んでるだけあってリリスのハンバーガーは大好評だった。


 お腹も満足した4人は寝る場所を決め始めるのでした。

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